やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ソロモン諸島暴動(11) 日本軍の罪・ホニアラ空港建設

戦争中、もしくは植民地時代に作ったインフラがその地域の民族問題を一切無視し、現在に続く民族闘争や安全保障問題となっている例は世界中にあるのだろう。太平洋島嶼国で言えば、パラオのコロール州がそうだし、インドネシアが西パプアを手放したくない一…

ソロモン諸島暴動(10) アウキ宣言・マライタ州の自決権が中国無神論主義を排除

今回のガダルカナル島の暴動だけを追っていると見えない問題がある。きっかけは色々あるが、2019年9月のソガヴァレ首相、中央政府による突然のそして強引な台湾から中国への外交関係の変換にある。そしてニュースに出てきたのが、英領時代の首都で、マライタ…

ソロモン諸島暴動(9)マライタ州からの声明

マライタ州 スイダニ知事 今回の暴動の中心的存在、マライタ州からの声明です。機械訳でざっと目を通してあります。 Full text of statement issued by Malaita Provincial Government The Malaita Provincial Government held an urgent extra ordinary Exe…

ソロモン諸島暴動(8)豪州ダウナー外相の弁解

豪州アレキサンダー・ダウナー元外相の非常に弁解じみたソロモン諸島暴動に対する論考。私は90年代後半から太平洋島嶼国が混乱する様子とそれに油を注ぐようなダウナー外相の愚かしい外交手法を目の前で見てきたので、批判的に読みました。今回の豪州派遣に…

ソロモン諸島暴動(7)米国の失態

環球時報と対照的な米国の視点。しかも米軍情報将校であったグラントニューシャム氏の論考だ。米国は黄金のチャンスを失ったと手厳しい。中共政府の揺さぶりにいち早く対応し、マライタ州に25億円ほどの資金援助を決定したのは米国である。ある意味で米国が…

ソロモン諸島暴動(6)環境時報の見解

中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』傘下でプロパガンダ誌と言われている「環球時報」Global Timesの今回のソロモン諸島、ガダルカナル島、ホニアラでの暴動に関する記事が出た。これを紹介したSNSについたコメントが興味深い。Global Timesは米豪批判…

ソロモン諸島暴動(5)豪州の支援が中国を守る?

11月24日水曜日に発生したガダルカナルで暴動。退陣を要求されているソガヴァレ首相がパプアニューギニアとオーストラリアに支援要請。しかしこの支援が悪手になる可能性は前に書いた。野党党首も同じコメントだ。ソガヴァレ首相とウェイル野党党首のコメン…

ソロモン諸島暴動(4)豪州派遣は悪手?

10月24日に発生したソロモン諸島、ガダルカナル島での市民暴動。翌日ソガヴァレ首相から豪州に支援要請が出て、同日夜までに豪州連邦警察と軍隊が現地に入った。これが中共の支援を受けるソガヴァレ首相支持のメッセージになってしまわないか、すなわち悪手…

ソロモン諸島暴動(3)<ソロモン諸島、自滅への道>

ソロモン諸島の水産問題専門家だが広く社会問題も議論しているTransform Aqorau博士の英文論考があったので、機械訳してざっと目を通してある。私が、インド太平洋ポッドカフェで話した内容とほぼ同じ。 Solomon Islands’ slippery slide to self-implosion …

スポンサー、寄付者のページ

お金儲けを目的に情報発信をしているわけではないのですが、またかかる費用も通信費と本代くらいなのですが、貯金を崩しながらというのは若干の不安もあり、試しに寄付、支援を募ったところ早速寄付をいただきました。 今後このページに感謝を込めて掲載させ…

French Commander Wants to Strengthen Security Ties with Japan and U.S.

It is important for Indo-PAcific perspective. France has huge EEZ in the Indo-Pacific, but their MDA is limitted due to geographical position. I kept suggesting that Japan should work with France. Problem is not only China, youth unemploym…

ご寄付、ご支援歓迎

お金儲けを目的に情報発信をしてきたわけではないのですが、現在貯金を切り崩して通信費、本題などに充てています。出て行くお金は大した額ではないのですが、今回のソロモン諸島の暴動などをフォローして情報をまとめる作業は結構大変ではあります。 別に誰…

ソロモン諸島市民暴動(2)背景

マライタのスイダニ知事とソガバレ首相 昨晩、ソロモン諸島の暴動を受け、急遽インド太平洋ポッドカフェを開催しました。 そこで30分ほど今回の暴動の背景を話しました。ここに簡単にまとめておきます。 2019年、ソロモン諸島が突然、独立以来外交関係を維持…

ソロモン諸島市民暴動(1)11月24日

11月25日の昨日、ソロモン諸島、首都ホニアラでソガバレ首相退陣を迫る市民のデモが行われたが、国会議事堂に放火、チャイナタウンの店舗、高校を放火、さらに略奪が起こり、ソガバレ首相は急遽金曜日早朝までの戒厳令を発動。 公開のFBではニュースをフォロ…

一体米国はミクロネシアを守る気があるのか? その2

US Lawmakers Warn The Clock Is Ticking On COFA Negotiations - Honolulu Civil Beat 米国議員が、政府に対しミクロネシア3カ国との交渉を急ぐようにと意見。以下、重要と思われる箇所を書き出します。 エド・ケース、カイ・カヘレ両下院議員を含む10人の…

一体米国はミクロネシアを守る気があるのか?

米軍が続々と入り込むパラオだが、国務省、内務省の動き、特に数年後には期限が来る自由連合協定の交渉が一向に進んでいないことがここ最近「改めて」浮き彫りになっている。 きっかけの一つはこの米国議会公聴会である。パスカル女史が証人として呼ばれた。…

キリバス海洋保護区開放は中国ではなく金融問題

ニュージーランドメディアがすっぱ抜きでキリバスのメガ海洋保護区が商業漁業に開放されることを伝えてから各方面からの情報が出てきた。 特に重要なのはキリバス政府からのコメントであろう。下記にコピーしてある。 このメガ海洋保護区は英国のグレッグ・…

魚を取らない海洋保護区から魚を取る海洋管理へ

キリバスのフェニックス海洋保護区の商業漁業への開放の話題もだんだん見えてきましたが、先日パラオのウィップス大統領も魚をとって金を稼ごう、というスピーチをしました。頼もしいです。 Whipps says fisheries can be one key to economic growth - Isla…

中共マフィア、パラオに戻る?

Cambodian aircraft departs leaving 21 illegal workers behind - Island Times 唖然として一言も出てきません。 パラオの国境が開いた途端、カンボジア航空の飛行機でマカオから中国人(多分)が27人就労のためにやってきて、21人が書類不備で強制送還…

Enhancing marine surveillance is the key to fish and Chinese expansion

I've been reading a lot of material on the news that the Phoenix Islands Protected Area (PIPA), a mega marine reserve in Kiribati, is going to be opened to commercial fishing. One of the articles mentioned about the Palau project of the Mi…

海洋監視体制強化こそ、水産資源と中国の海洋進出への対抗策

キリバスのメガ海洋保護区PIPA(The Phoenix Islands Protected Area)が商業漁業への開放に踏み切るニュースを巡って関連資料を読んでいる。その中に私が2008年に立ち上げたミクロネシア海洋安全保障事業のパラオ事業を取り上げ、日本財団から出た50億円前…

パラオEEZにおける日本海軍軍事活動と「妥当な考慮」

外国のEEZにおける軍事活動で重要なのが「妥当な考慮」Due Regard だ。関連論文をいくつか読んだのでまとめようと思いつつ棚上げ状態。 この9月、かつては日本統治領であったパラオのEEZに日本海軍の護衛艦かがを含む艦船3隻が軍事活動を、戦後初めて展開し…

米領サモアに連邦政府から400,000USDの法部門への支援

Amata Welcomes $400,000 DOJ Grant | US Representative Aumua Amata Coleman Radewagen ここで扱うニュースは世界の中でも小さなニュースばかりだ。しかしその小さなニュースが実は世界を動かしている。 米領サモアの法部門に、連邦政府から約5千万円程度…

<速報>キリバス、メガ海洋保護区商業漁業解禁へ

昨晩流れた、太平洋専門家ジャーナリスト、 Barbara Dreaver のニュース。 世界最大規模のメガ海洋保護区を設置したキリバスが、中国の思惑を背景に商業漁業に解放することが閣議決定されたとのこと。しかし環境大臣にはなんの相談もなく。 この海洋保護区は…

日米軍トップの与那国訪問に寄せてー天皇陛下の価値観を共有されたし

与那国島をインド太平洋司令軍アキリーノ司令官が11月8-9日、沖縄県の与那国駐屯地や鹿児島県の奄美駐屯地を視察。 米軍司令官 自衛隊の統合幕僚長と沖縄や鹿児島の駐屯地視察 | 自衛隊 | NHKニュース 与那国に自衛隊が入る道筋も私が結果的に作ってしまった…

レイチェル・ベルジュロンさんの殺害事件 ヤップー島嶼社会の闇

2年前に英文で書いた記事を和訳しました。今やっと米国がヤップに入っています。守るべきものは子供達。これが安全保障の基本です。 noqreport.com <島嶼社会の闇>10月15日にSNSでニュースが流れてから、レイチェル・ベルジュロンさんの殺害事件が頭をよぎ…

JSDF Deploy 70 Electronic Warfare Troops to Yonaguni Island

陸自の「電子戦部隊」約70人、沖縄・与那国島に配備へ 台湾・尖閣にらむ 島の「要塞化」に懸念も(沖縄タイムス) - Yahoo!ニュース Japan's Self-Defense Force to Deploy 70 Electronic Warfare Troops to Okinawa's Yonaguni Island, Raising Concerns ab…

米豪仏NZの伝統的クアドと漁業監視活動「クルクル作戦」

Pacific Fisheries Protected Through Co-operative Surveillance Operation | Scoop News 太平洋のクアド4カ国協力枠組みと言えば、豪州NZ米仏の4カ国です。ソロモン諸島に本部のあるフォーラム漁協局が主催する違法操業取り締まり。今回の監視活動にはソ…

伝統酋長会議がオンラインカジノ法案にNO

現在、下院を通過し、上院で議論されているオンラインカジノ法案。 伝統的酋長会議がNOのレターを議会に出しました。 Council of Chiefsがオンラインギャンブルを再び禁止! by Leilani Reklai 2021年10月19日 Rubekul Belau(酋長会議)は、パラオにオンライ…

パラオの非居住者労働者

この記事は気になっていたのだ。パラオの労働問題は深刻で複雑だ。 何も知らないメディア評論家が、パラオの雇用を増やせばよい、と気軽に言うが、その雇用の多くを外国人、非居住者が占めている。 コロナでその非居住者への経済支援がされることになり統計…