やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

パラオの子供たちを 麻薬から守れ!

名古屋大須ロータリークラブのご招待で講演した内容を掲載します。やっと笹川陽平や笹川平和財団にされたことが話せるようになりました。 スライドも掲載しました。 主催:名古屋大須ロータリークラブ 日時:令和元年12月12日 場所:名古屋東急ホテル 同志社…

ウイグル弾圧とユニクロ・無印良品

京都河原町三条に西日本最大のユニクロ開店という事で友人に誘われて見に行った。 ユニクロがいかに地球環境や貧困に貢献しているかが店内の壁に書かれている。仕事柄そのいう文章を批判的にじっくり読んでしまう。そして世界の貧困や環境問題をあまりにも綺…

ソロモン諸島台湾断交 ー マライタ島の動き (2019.11.25-12.4)

ソロモン諸島台湾断交から3ヶ月。 英国女王が国家君主である。100前後の言語、民族のソロモン諸島がその歴史の中で統一した事はない。英国植民地支配で始めて植民地としての地域のまとまりができた。独立後も英国の女王を君主に迎え、英連邦国家の一員とし…

中国のカール・シュミット旋風

カール・シュミットの帝国主義論のメモを書いている最中に偶然みつけた論文。 鈴木敬夫。「国家主義と寛容 : 中国にみる『敵・味方論』の不寛容を問う」 専修総合科学研究、24巻 2016年。 専修大学学術機関リポジトリ(SI-Box) なんと、中国では熱く、カー…

カール・シュミット『現代帝国主義論』(5) 現代帝国主義の国際法的諸形態(1932)

翻訳者の長尾氏が本の題名に選んだ、すなわち一番重要な位置づけの論文である。 米国が経済的帝国主義国家である事を書いている。それはアメリカの建国精神にも観られる政治と経済を対比して帝国主義に見せていないだけで、シュミットは「ともあれ米国の帝国…

国際機関をめぐる現代的位相

IWCの交渉官として長年関与されてきた森下丈二氏の一番新たらしいペーパーが国際問題2019年11月号に掲載されていた。巻頭が中谷和弘教授の「国際機関をめぐる現代的位相」で、両方読ませていただいた。 IWC脱退を巡っては国際法違反とメディアやSNS に書かれ…

カール・シュミット『現代帝国主義論』(4) ライン地域の国際法的諸問題(1928)

1928年、ドイツ歴史学会における講演。ナチ党が選挙で12席を得た年だ。シュミット、39歳。第一期はワイマール憲法起草者フーゴー・プロイスの後任としてベルリン商科大学の教授に就任する年の思想、歴史観。 ベルサイユ条約はドイツに課した賠償金の大きさ…

カール・シュミット『現代帝国主義論』(3) 国際連盟とヨーロッパ(1928)

線引いた箇所の抜き書きだけ。 5 国際連盟は総会、理事会の機能、権限、権能が不明確。全世界の平和に関する問題に対処する現実的可能性も、義務の公認されていない。連盟は一切をなしうるが何もしなくても良い。 6 主たる功績は国際理解の雰囲気作り、い…

カール・シュミット『現代帝国主義論』(2)

カール・シュミット『現代帝国主義論』は7編の小論をまとめている。翻訳者の長尾氏は3つ目の論文のタイトルからこの本の題名をつけたのだそうだ。 国際連盟とヨーロッパ(1928) ライン地域の国際法的諸問題(1928) 現代帝国主義の国際法的諸形態…

カール・シュミット『現代帝国主義論』(1)

カール・シュミットの「大地のノモス」の海洋の章だけ読んだが、やはり全文読みたいと思うようになった。しかしなかなか手が出せないで本だけが目の前にある。 図書館の「大地のノモス」の隣に小論集の『現代帝国主義論』と言う本があって何気に借りて読み出…

逃した魚は誰が取る?

【DHC】2019/11/26(火) 百田尚樹×山田吉彦×居島一平【虎ノ門ニュース】 海洋法を学ぶものとして、日本のEEZの広さを強調する山田吉彦さんの立場は素直に支持できないのだが、今回の百田さんとの番組はよく言ってくれた、よく教えてくれた、と感謝、感動して…

島が沈んでもEEZは残る?

この話は結構以前から国際法、まさに海洋法の分野で議論されていて気になっていた。マーシャル諸島政府は既に公式に宣言しているのを、政府レポートで読んだ記憶もある。しっかり調べていない。調べなければならない分野だが。 海面上昇で沈みそうな島、もし…

チャールズ皇太子とソロモン諸島国家海洋政策

Prince Charles launches Ocean Policy - Solomon Star News チャールズ皇太子のソロモン諸島訪問。その目的にはソロモン諸島国家海洋政策設置式典の参加とマラリア対策があった。チャールズ皇太子は式典に参加したというだけで詳細は見つからない。私はチャ…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(8)

第3章 基本への回帰 ハンナ・アレントを読んだ後だと、まるで絵本のように優しく感じる。。 自決権を促すアイデンティとは何か、どのように生まれるかが議論されている。個人と社会の関係性についても。 ローネン自身がこの本の最初で断っているのだが、い…

ハンナ・アレント『革命について』 — 読書メモ

今まで書いてきたメモを整理しました。 1 ハンナ・アレント『革命について』を読む動機 2 「あとがき」「解説」 3 「序章」 4 一章 革命の意味 5 三章 幸福の追求 6 感想 1 ハンナ・アレント 『革命について』を読む動機 当方の博士論文の理論枠組と…

ソロモン諸島台湾断交 ー マライタ州姿勢鮮明に、チャールズ皇太子の影響は? (2019.10.29-11.24)

9月16日に衝撃的に台湾断交に踏み切ったソロモン諸島。あれから2月。動きは以前より緩慢になったが、マライア州の動きが鮮明になってきた。英国チャールズ皇太子訪問が何を意味するのか。(何も意味しないような気もするが) 今までFBに上げてきたニュース…

ハンナ・アレント『革命について』(5)三章 幸福の追求

かなりボリュームのある二章の社会問題をスキップして、三章の幸福の追求を読んだ。面白いと思えるのだがまとめることはできない。やはり難しい。一章と同様印象に残った箇所だけ、メモしておきたい。(ちくま学芸文庫 2019年) 177頁 貧困から解放、平等…

「国際法における不干渉原則論の構図」ー藤澤厳著

香港のニュースを見ながら国際社会は、日本は何もできないのか? 国際法はそれこそ、中国が主張する内政不干渉の原則という国際法の「最も根本的な規範」しか示せないのか。と思っていたところ、千葉大の藤澤厳教授の論文「国際法における不干渉原則論の構図…

中国のウィグル弾圧を支持するソロモン諸島

cnsnews.com ウィグルの件はニュースに出てくる情報の表面をなぞる程度しか関心も知識もないのだが、国連総会の人権問題を取り扱う第三委員会で英国はじめ23カ国が中国を批判。これに対し54カ国が中国を支持したとのニュースを見た。 一瞬思ったのが太平…

Losing one’s freedom of expression and media are as fearful as militarization of the Pacific Islands

米国のキリスト教系、保守系、フェデラリスト志向のウェブメディアにバヌアツの件を寄稿。 中国の犯罪人へのパスポート販売と日本人(被害は韓国、中国他世界中だと思います。またマネロンが目的と理解しています)の仮想通貨プラストークンの被害者の件は誰…

Yusuf判事の自決権に関する議論

Antonio Cassese博士が編集した "Realizing Utopia: The Future of International Law" という本の中に、あのチャゴス諸島判決で国連決議1514を根拠に英国の不当性を指摘し、モーリシャス政府にチャゴスを返還する判決を下したソマリア出身のAbdulqawi A. Yu…

米国の自由連合を忘れていない安倍総理 ー 日・ミクロネシア首脳会談

令和元年11月14日 日・ミクロネシア首脳会談等 | 令和元年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ 「2023年にコンパクト協定に基づく米国の財政支援が期限を迎える問題も念頭に,米豪等の同志国とも連携し,ミクロネシア連邦の持続可能な経済社会…

インド太平洋軍が関知しない河野防衛大臣の決意

河野防衛大臣、外相の頃からツイッターをフォローしている。 先日のミクロネシア連邦大統領との写真入りツイッター。誰もこの驚愕なツイッターの意味を理解できないであろう。 なんと、米国の戦略的地域である、即ち米国の安全保障管理下にあるミクロネシア…

安倍総理が取り上げたパラオ赤十字社の日本への支援 

畏友、パラオ赤十字社委員長のサンティ・アサヌマ氏 柄澤大使、赤十字社の募金活動もしっかり視察。外務省ではなく農林水産省出身です。 「この機会に、台風19号被害に対し、パラオ政府・パラオ赤十字社が義援金を募集してくださったことに対しまして、御…

赤く染まるバヌアツとプラストークン詐欺(プレスリリース)

バヌアツが中国の影響を受け、過去数年で4千冊のパスポートを主に中国人に販売し、その中には仮想通貨犯罪、プラストークンなども行う犯罪者がいることを現地新聞で取り上げてきた。そのジャーナリスト、 Dan McGarry氏が労働ビザを政府から取り上げられた…

ハンナ・アレント『革命について』(4)一章 革命の意味

一日一章読み進めようと計画したが、なんてトンデモない。アレント難しい。面白けど難しい。もっと簡単なやさしい言葉で書けなかったのだろうか? やっと 「一章 革命の意味」読了。 5節にわかれている。他の事もしながら(特にインド太平洋軍との会議が結…

小室直樹著『昭和天皇の悲劇』

天皇論が賑やかな中で、以前「天皇ってなに?」と思って買い集めた小室直樹さんの天皇論を本棚からまた取り出した。 なんとなく「民の竈」のような善行話は嘘っぽいというか(嘘ではないのだろうけど)、民が勝手に天皇を評価したり語ってはいけないんではな…

ハンナ・アレント『革命について』(3)序章 戦争と革命

やっと本文。 序章は2回目。2回読むとチンプンカンプンだったのがチンプン程度になる。 本書テーマの革命について戦争と対比しながら議論される章(でいいでしょうか?) まずは歴史を紐解いて、「暴政に対する自由という大義名分」が語られる。しかし革命…

エルドリッヂ著『沖縄問題の起源』

エルドリッヂ博士の『沖縄問題の起源』は十年以上前に一度拝読し、米国の戦略的地域のミクロネシアの事がたくさん書いてあるので、ずーっと気になっていた。 いよいよ2つ目の博論で「自決権」を扱うことにしたが、自由連合ー信託統治ー委任統治の流れもきち…

ハンナ・アレント『革命について』(2)

1959年プリンストン大学の「合衆国と革命精神」と言うセミナーでアレントに与えられたテーマで、1962年にこの本が出版されている。ケネディ大統領誕生翌年であり、キューバ危機の年。1963年、ケネディを暗殺した米国をアレントはどう思ったであろう? まずは…