やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

お魚は枯渇しない?

太平洋の海洋問題を扱う中で、水産資源が枯渇する、そんな情報に接する事も多く、漁業問題もなんとなくカバーしてきた。 水産資源保護派、東京海洋大学の勝川氏と、水産資源と漁師さん両方の保護を目指す水産庁、さらにはプロパガンダNGO の欧米の環境団体な…

パラオ大統領選まで後3日!

ここ数日はパラオ大統領選を追って、眠れない夜が続き、身も心も疲れ果てている。 島嶼国の選挙なんか近づくものではない、という事を感覚的に察知していた。だから今までは百歩くらい距離を置いていたが、今回は業務命令で仕方なく、目の前で情報収集する事…

パラオのインターネットギャンブルー日本と英国が引き金?

パラオのインターネットギャンブルをウェッブサーチしても余り情報は出てこない。 パラオ金融監査局からの非公式協力要請も来ているし、オールジャパンでパラオのインフラから安全保障を支援しているので、この闇の奥は気になる。 しかもADBの30億円で施設…

雑誌「正論」12月号にミクロネシア海上保安事業を寄稿しました

雑誌「正論」12月号(11月1日発売)に、いつもこのブログに書いているミクロネシアの海上保安事業について寄稿させていただきました。 現在ブログへのアクセスは毎日千頁前後。毎日100人〜200人の方が訪れて下さっています。 その一人が、正論編集部の小島…

パラオ大統領選で飛び交うリーク情報

11月1日のパラオ大統領選。相変わらずリーク情報が飛び交わっている。 その中でも気になるのが、台湾漁船の違法操業を大統領の指示で見逃している、というリーク情報だ。 早速地元メディアに聞いてみた。 メディア「そんな話聞いてないわ。誰から聞いたの?…

パラオのパワーポリティクス

パラオの大統領選を追っていて見えてきた、同国の伝統的なパワーポリティクスがある。 現在大統領を競っているのは、現職のレメンゲサウ大統領と、レメンゲサウ大統領の妹と結婚し、普段であれば同じ派閥で共闘するスランゲルジュニア氏である。 ドイツ、日…

マレーシア会社が投資するペリリューリゾートホテル

島嶼国で行われる怪しいお金の動き。日本の外務省は意外と知らないのだ。 知っていている元大使は加担している。 ゆすりたかりの島嶼国 - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa バヌアツのタックスヘブン関係の情報を提供し、大洋州課課長から感謝された事があ…

インターネットギャンブルはパラオで合法

パラオ大統領選、もう目の前である。 リーク情報が飛び交う中、昨日インターネットギャンブルの文書が公開された。 カジノ法案は廃止になったのでは?と思ったがインターネットギャンブルは合法なのであった。 17 PNCA § 1601 CRIMES Chapter 16 Gambling ht…

ドゥテルテ大統領来日と日本ーパラオーフィリピン関係

パラオの約2万の人口の内、パラオ人は1万3千人。 残り7千人は外国人だが、4千人がフィリピン人、と言われている。 ジャーナリストもフィリピン人。 パラオ大使館もフィリピンにある。 大きな手術が必要なときは、パラオからフィリピンに病人が運ばれる…

再び 日本ーパラオ自由連合の可能性

パラオ大統領選を数日後に控え、選挙運動は白熱している。 あからさまな非難の応酬の中で「日本からの支援金数億円で改修する下水道はおらが村には来ないではでないか。レメンゲサウ大統領の怠慢だ。」との発言が。 なるべく、選挙戦に巻き込まれないように…

産經新聞の象牙の記事

アフリカの象牙はこのブログの関心範囲外、であるが ワシントン条約等の国際舞台で環境保護問題が、環境NGOやメディアにどのように情報操作され、それを充分な知識のない小国が支援して行く構造は、海洋資源管理とも関係あるので、先に書いた。 ワシントン条…

パラオ大統領選投票箱管理事件?

パラオ大統領選の予備選で、選挙管理委員会の委員が全員いなくなったり、選挙日を遅らせる要請が大統領府から司法に出されたり、混沌としているパラオがさらにChaoticになっていた。 その理由がウェッブに掲載されている。 本来しかるべき場所、時間、で開票…

パラオ法執行が見逃す台湾違法操業船?(追記あり)

色々なところから情報が送られて来る。 パラオの法執行機関が大統領から台湾漁船の違法を見つけても見逃すようにという非公式な指示を受けているという。 大統領選の真っ最中だし、この情報にバイアスがかかっている可能性は大きいが一応メモしておきます。 …

内閣府は知っていたパラオ海洋保護区の違法性

平成28年5月19日、総合海洋政策本部参与会議の宮原耕治座長から、安倍晋三内閣総理大臣に対し、「総合海洋政策本部参与会議意見書」が手交 お名前を出してよいとのことなので、当方がこの9月に門を叩かせていただいた国際海洋法の権威は同志社大学の坂元茂…

パラオ海洋保護区の闇の奥

パラオのレメンゲサウ大統領が主導する、海洋保護区。 パラオの全EEZを海洋保護区とし80%を商業漁業禁止とする法律はUNCLOSの62条に違反している可能性がある事を昨日書いた。 パラオ政府も気付いている。(追記:気がついていない可能性もあります)さすが…

パラオの海洋保護区はUNCLOSに違反?(追記と修正あり)

以前、パラオの80%の海洋保護区案は国連海洋法条約に反している事を書いた。 オバマ大統領に説教するレメンゲザウ大統領(3) - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa パラオ政府がこの件をわかっている事が、今日、さっき判明しました。 (修正 解っていな…

BBNJとは何か?気になる”アドホック・オープンエンド非公式作業”

2015年6月19日に国連総会決議第69会期決議292が採択。 タイトルが長い。 「国家管轄権を超える区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国連海洋法条約の下の国際的な法的拘束力のある文書の作成」 ここに議論の参加者、参加方法が記されてい…

BBNJとは何か? 環境影響評価

BBNJのいろは編。 下記の本田悠介氏(2016年3月31日)のペーパーで勉強しています。 国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)と国連海洋法条約 国際法学会エキスパートコメント No. 2016-1 http://www.jsil.jp/expert/20160331.pdf 今日は最後、4点目のB…

BBNJとは何か? 環境影響評価

BBNJのイロハ編。引き続きJAMSTECの本田悠介氏(2016年3月31日)のペーパーから。 BBNJ条約交渉の法的論点その三。環境影響評価 これは他の論点(海洋遺伝資源、区域型管理ツール)と違ってUNCLOSの204から206条に書かれているのだそうである。 買いました…

BBNJとは何か? 区域型管理ツール

BBNJのイロハ編。JAMSTECの本田悠介氏(2016年3月31日)のペーパーから。 BBNJ条約交渉の法的論点その二。区域型管理ツール。 海洋保護区はこの代表的手段なのだそうだ。「海洋保護区」についてはいくつか論文を読んだがこれも百花繚乱コンセプトのようであ…

BBNJとは何か?海洋遺伝資源

前回に引き続きJAMSTECの本田悠介氏(2016年3月31日)のペーパーをまとめたい。 既にまとめてあるので、BBNJ って何?という私と同じレベルの方だけに、もしご関心があれば読んでいただいけると幸いです。 BBNJ条約交渉の法的論点その一。海洋遺伝資源 これ…

サモアツナ缶工場閉鎖に追い込む海洋保護区とPNAのVDS

ツナ缶工場で経済が成り立っているアメリカ領サモア。 この工場が操業を停止する方向であるという。 原因は十分なマグロが補給されないこと。 なぜか? 記事にはないが、一つはキリバスなどメガ海洋保護区の制定で漁業ができないこと。 もう一つはPNAのVDS。…

パラオ海洋保護区への水産庁の答え

今度日本のODAで建設されるシャコガイ養殖場 パラオに約7億円をかけた、シャコガイ養殖場が日本のODAであたらに建設される。 これは、レメンゲサウ大統領が主導する海洋保護区に対する一つの水産庁からの回答ではなかろうか? パラオが商業漁業を禁止する保…

混乱の極み?パラオ大統領選(修正あり)

11月1日に選挙日を迎えるパラオの大統領選。 大統領府から選挙日を1週間延期する事が、司法長官事務所に提案された。 結論が出るまで投票の発送が止められる。 もう2週間しかないのに大丈夫であろうか? 理由は、どうやら、選挙管理委員会の病人(脳梗塞…

博士論文が承認されました!

卒業式で着るローブはこんなのらしい。 2008年から始めた博士論文。 仕事をしながらのパートタイムで継続し、昨年末にようやく完成し提出した。 あれから9ヶ月。一昨日審査員3名から承認のレポートを受け取った。 もうこれで博士確実なのだそうだ。 昨年末…

BBNJとは何か?

2008年から担当しているミクロネシアの海上保安事業を通して海洋問題を扱うようになり、9年が経つ。 海洋問題を体系的に学びたいと思って国際海洋法の権威の門を思い切って叩いたところ、現在活発に議論されているBBNJを追ってみたらどうか?とのアドバイス…

裏切りのサーカスーケンブリッジ5

環境保護NGOのプロパガンダ、パラオ大統領選を巡る米国との関係を追っていた。急に映画"Tinker Tailor Soldier Spy"(邦題「裏切りのサーカス」)が観たくなって昨晩観た。 これは1930年から50年にかけて英国で活躍したロシアのダブルスパイ、通称「ケンブリ…

国際協力による太平洋島嶼地域の情報通信支援政策 - PEACESATのケーススタディを通してー完成版

今から17年前、1999年に書いた2つ目の修士論文である。 1991年、USPNet(南太平洋大学の遠隔教育ネットワーク)を担当。情報通信(ICT)の右も左もわからないところから始め、太平洋島嶼国の事も主に現場を中心に学んで来た。7年かけてUSPNetを日本のODA案件…

ワシントン条約会議:付属書IIにオナガザメ類、クロトガリザメ、イトマキエイ類登録

世界の水産資源管理を小島嶼国が主導していくのは限界がある。 小島嶼国は水産資源の科学的知識も経験的知識もないからだ。 背景にはピューなどの環境NGOの(忘れてました。世銀も)偏った知識とイデオロギーの影響がある。 この典型的な例を、今回のワシン…

ワシントン条約を巡る環境NGOの象牙保護プロパガンダ(修正あり)

8月末から9月にかけて開催された海洋を巡る国際的な動き、IUCN総会、米国のOur Ocean, そして国連のBBNJを追ってみる事とした。BBNJに入る前にヨハネスブルクで開催された第17回ワシントン条約会議で、フィジー、サモア、パラオが鮫とエイの保護を提案し日…