やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

逃した魚は誰が取る?

【DHC】2019/11/26(火) 百田尚樹×山田吉彦×居島一平【虎ノ門ニュース】 海洋法を学ぶものとして、日本のEEZの広さを強調する山田吉彦さんの立場は素直に支持できないのだが、今回の百田さんとの番組はよく言ってくれた、よく教えてくれた、と感謝、感動して…

島が沈んでもEEZは残る?

この話は結構以前から国際法、まさに海洋法の分野で議論されていて気になっていた。マーシャル諸島政府は既に公式に宣言しているのを、政府レポートで読んだ記憶もある。しっかり調べていない。調べなければならない分野だが。 海面上昇で沈みそうな島、もし…

チャールズ皇太子とソロモン諸島国家海洋政策

Prince Charles launches Ocean Policy - Solomon Star News チャールズ皇太子のソロモン諸島訪問。その目的にはソロモン諸島国家海洋政策設置式典の参加とマラリア対策があった。チャールズ皇太子は式典に参加したというだけで詳細は見つからない。私はチャ…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(8)

第3章 基本への回帰 ハンナ・アレントを読んだ後だと、まるで絵本のように優しく感じる。。 自決権を促すアイデンティとは何か、どのように生まれるかが議論されている。個人と社会の関係性についても。 ローネン自身がこの本の最初で断っているのだが、い…

ハンナ・アレント『革命について』 — 読書メモ

今まで書いてきたメモを整理しました。 1 ハンナ・アレント『革命について』を読む動機 2 「あとがき」「解説」 3 「序章」 4 一章 革命の意味 5 三章 幸福の追求 6 感想 1 ハンナ・アレント 『革命について』を読む動機 当方の博士論文の理論枠組と…

ソロモン諸島台湾断交 ー マライタ州姿勢鮮明に、チャールズ皇太子の影響は? (2019.10.29-11.24)

9月16日に衝撃的に台湾断交に踏み切ったソロモン諸島。あれから2月。動きは以前より緩慢になったが、マライア州の動きが鮮明になってきた。英国チャールズ皇太子訪問が何を意味するのか。(何も意味しないような気もするが) 今までFBに上げてきたニュース…

ハンナ・アレント『革命について』(5)三章 幸福の追求

かなりボリュームのある二章の社会問題をスキップして、三章の幸福の追求を読んだ。面白いと思えるのだがまとめることはできない。やはり難しい。一章と同様印象に残った箇所だけ、メモしておきたい。(ちくま学芸文庫 2019年) 177頁 貧困から解放、平等…

「国際法における不干渉原則論の構図」ー藤澤厳著

香港のニュースを見ながら国際社会は、日本は何もできないのか? 国際法はそれこそ、中国が主張する内政不干渉の原則という国際法の「最も根本的な規範」しか示せないのか。と思っていたところ、千葉大の藤澤厳教授の論文「国際法における不干渉原則論の構図…

中国のウィグル弾圧を支持するソロモン諸島

cnsnews.com ウィグルの件はニュースに出てくる情報の表面をなぞる程度しか関心も知識もないのだが、国連総会の人権問題を取り扱う第三委員会で英国はじめ23カ国が中国を批判。これに対し54カ国が中国を支持したとのニュースを見た。 一瞬思ったのが太平…

Losing one’s freedom of expression and media are as fearful as militarization of the Pacific Islands

米国のキリスト教系、保守系、フェデラリスト志向のウェブメディアにバヌアツの件を寄稿。 中国の犯罪人へのパスポート販売と日本人(被害は韓国、中国他世界中だと思います。またマネロンが目的と理解しています)の仮想通貨プラストークンの被害者の件は誰…

Yusuf判事の自決権に関する議論

Antonio Cassese博士が編集した "Realizing Utopia: The Future of International Law" という本の中に、あのチャゴス諸島判決で国連決議1514を根拠に英国の不当性を指摘し、モーリシャス政府にチャゴスを返還する判決を下したソマリア出身のAbdulqawi A. Yu…

米国の自由連合を忘れていない安倍総理 ー 日・ミクロネシア首脳会談

令和元年11月14日 日・ミクロネシア首脳会談等 | 令和元年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ 「2023年にコンパクト協定に基づく米国の財政支援が期限を迎える問題も念頭に,米豪等の同志国とも連携し,ミクロネシア連邦の持続可能な経済社会…

インド太平洋軍が関知しない河野防衛大臣の決意

河野防衛大臣、外相の頃からツイッターをフォローしている。 先日のミクロネシア連邦大統領との写真入りツイッター。誰もこの驚愕なツイッターの意味を理解できないであろう。 なんと、米国の戦略的地域である、即ち米国の安全保障管理下にあるミクロネシア…

安倍総理が取り上げたパラオ赤十字社の日本への支援 

畏友、パラオ赤十字社委員長のサンティ・アサヌマ氏 柄澤大使、赤十字社の募金活動もしっかり視察。外務省ではなく農林水産省出身です。 「この機会に、台風19号被害に対し、パラオ政府・パラオ赤十字社が義援金を募集してくださったことに対しまして、御…

赤く染まるバヌアツとプラストークン詐欺(プレスリリース)

バヌアツが中国の影響を受け、過去数年で4千冊のパスポートを主に中国人に販売し、その中には仮想通貨犯罪、プラストークンなども行う犯罪者がいることを現地新聞で取り上げてきた。そのジャーナリスト、 Dan McGarry氏が労働ビザを政府から取り上げられた…

ハンナ・アレント『革命について』(4)一章 革命の意味

一日一章読み進めようと計画したが、なんてトンデモない。アレント難しい。面白けど難しい。もっと簡単なやさしい言葉で書けなかったのだろうか? やっと 「一章 革命の意味」読了。 5節にわかれている。他の事もしながら(特にインド太平洋軍との会議が結…

小室直樹著『昭和天皇の悲劇』

天皇論が賑やかな中で、以前「天皇ってなに?」と思って買い集めた小室直樹さんの天皇論を本棚からまた取り出した。 なんとなく「民の竈」のような善行話は嘘っぽいというか(嘘ではないのだろうけど)、民が勝手に天皇を評価したり語ってはいけないんではな…

ハンナ・アレント『革命について』(3)序章 戦争と革命

やっと本文。 序章は2回目。2回読むとチンプンカンプンだったのがチンプン程度になる。 本書テーマの革命について戦争と対比しながら議論される章(でいいでしょうか?) まずは歴史を紐解いて、「暴政に対する自由という大義名分」が語られる。しかし革命…

エルドリッヂ著『沖縄問題の起源』

エルドリッヂ博士の『沖縄問題の起源』は十年以上前に一度拝読し、米国の戦略的地域のミクロネシアの事がたくさん書いてあるので、ずーっと気になっていた。 いよいよ2つ目の博論で「自決権」を扱うことにしたが、自由連合ー信託統治ー委任統治の流れもきち…

ハンナ・アレント『革命について』(2)

1959年プリンストン大学の「合衆国と革命精神」と言うセミナーでアレントに与えられたテーマで、1962年にこの本が出版されている。ケネディ大統領誕生翌年であり、キューバ危機の年。1963年、ケネディを暗殺した米国をアレントはどう思ったであろう? まずは…

ハンナ・アレント『革命について』(1)

自決権の歴史的背景をフランス革命あたりから書くべきか、となんとく思っていて、そうであればアメリカ革命も若干触れた方が、少なくとも知っておかないと、と悩み。そもそもアメリカ史を知らない、と改めて反省。 何気に聴講した阿川尚之教授のゼミはアメリ…

第一次世界大戦に日本は割って入ったのか?

京大の奈良岡教授が「第一次世界大戦に日本は割って入った」と主張され未だにショックを受けている。私の第一次世界大戦の理解は平間洋一先生の論文の依拠している。 なかなか難しく、複雑な議論だが「割って入った」と一言では片付けられないような気がして…

矢内原忠雄「南洋群島の研究」と歴史教科書執筆

高校生の歴史教科書書き直し。ボディの部分が学術書みたいで高校生には難しい,ということで話題を変えることに。あまり世の中に明かしていけないらしいので詳細は書きません。 関連資料をここ数日読み返した。 矢内原忠雄の「南洋群島の研究」は植民が悪い…

太平洋島嶼国バヌアツの中国化 ー 剥奪される正義と報道の自由

太平洋島嶼国の中国化、言論統制は港湾支援を装って軍事基地化する動きよりも、ある意味恐ろしい。 中国人に4千冊の旅券を販売するバヌアツ。その収入は国家予算の3分の1を占めている。この仕組みは同国の法秩序も崩壊させ、報道の自由を圧迫する結果に。…

『法学の世界』読書メモ その2

法学とは何か?法律とは何か?国際法で博士論文を書くとはどういうことか? 学部生のために書かれた導入書『法学の世界』を紹介してくれた法哲学者に感謝したい。シンプルな故に奥深いく、色々考えさせられるのだ。 第一章は憲法につづいて民法、刑法が続き…

ロシア中国が反対する「南極の海洋生物資源の保存」

外国メディアは環境派受けする本件をかなり記事にしています。 「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)第38回 年次会合」の結果について:水産庁 先日南極管理に関する重要な会議が終了した。 水産庁の上記発表では詳細がわからないので問い合…

ソロモン諸島の動きーブログリスト 12.05 updated

2019年9月16日のソロモン諸島台湾断交から動きを追っている。さっきブログをみたら結構書いていたので自分でもびっくり。 リストを作っておきたい。 まずはソロモン諸島の基本をどうぞ! <断交後> yashinominews.hatenablog.com <断交前の動きも多…

ソロモン諸島台湾断交 チャールズ皇太子動く (2019.10.29-11.2)

9月16日、突然のソロモン諸島台湾断交から早くも2月近くが経った。同じく台湾断交に踏み切ったキリバスの方も豪州メディアを追い出す等動きがあるが、ソロモン諸島はインド太平洋研究会での内藤先生の講演会もあったので引き続きフォローしている。 一番…

海洋国家日本、水産大国日本

魚がいなくなるというアジテーションに乗せられて、最初に読み始めたのが勝川さんという若い研究者のレポート。わかりやすくすんなり納得できる内容だった。しかも彼は政治家に働きかけ、象牙の塔ではなく現場で活躍し眩しく見えたものだ。 その内、水産の専…

「植民」を悪者にしたフルシチョフとレーニン(未完)

1960年国連総会でのフルシチョフ。靴が有名だが実際に靴は持っていなかった。 1960年国連総会のフルシチョフ演説とそれを支えるレーニンのイデオロギー、レトリック、アジテーション。これこそ1514決議、植民地独立付与宣言(Declaration on the Granting of…