やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

蔡総統の太平洋諸島訪問(3)台湾の防衛予算3%まで増額(追記修正あり)

蔡総統がホノルルの東西センターで何を言ったか、ニュースに少しずつ出ている。 スピーチ入手できないだろうか? 台湾の防衛予算を、少なくとも防衛予算の2%まで、必要であれば3%まで確保、と蔡総統ホノルルの東西センターで明言。 現在年間防衛費の調達…

蔡総統の太平洋諸島訪問(2)パールハーバー訪問の意味

10月28日から開始した蔡総統の太平洋諸島訪問。日本のメディアは殆ど取り上げていないのだそうである。このブログが唯一の情報源、と煽てられてフォローする事とした。 蔡総統、太平洋諸島訪問の直前に米国のダニエル・ラッセル前国務次官補の訪問を受けてい…

『海の民のハワイ』小川真和子 著(1)

『海の民のハワイ』小川真和子 著、人文書院、2017 http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b287823.html この本に出会えたのは、そしてこの著者にお会いできたのはこのブログのおかげである。 改めて2010年にブログ開設を強く勧めて(ほぼ強制的に)くださった…

「島の国際法上の地位」山本草二(自分用メモ)

『国際行政法の存立基盤』(山本草二著、有斐閣社、2016年)に収められている「島の国際法上の地位」を再読。 2013年に亡くなられた山本草二先生にお会いすることも教えをいただくこともなかったが、宇宙法や国際通信法もカバーされているようだ。私の一つ目…

「海洋法における「島の制度」再考」栗林・加賀美(自分用メモ)

『日本における海洋法の主要課題(現代海洋法の潮流第3巻)』(有信堂高文社、2010年)に収められている第7章「海洋法における「島の制度」再考」(栗林忠男、加賀美康彦著)を再読した。 松井芳朗先生の自決権と天然資源の永久的主権の論文を読んだ後なの…

蔡総統の太平洋諸島訪問とラッセル前米国務次官補

昨日10月28日から台湾の蔡総統の太平洋諸島訪問が開始した。 蔡総統のツイッターに興味深い情報が。 10月24日に米国のダニエル・ラッセル前国務次官補の訪問を受けている。ラッセル氏は東アジアと太平洋地区を担当し、奥様は日本人だ。 下記のBloombergの記…

ダイヤモンドセキュリティ構想と自由で開かれたインド太平洋

この4、5月に発表する機会をいただいた海洋議連・島嶼議連で使用した当方のパワーポイント資料から 2012年に発表された安倍総理のダイヤモンドセキュリティ構想は「自由で開かれたインド太平洋戦略」と名称が変わったのかもしれない。 その原点は下記の200…

「日本人が知らない最先端の「世界史」」 福井義高著

近現代史を学ぶ上で必読書、ではないだろうか。 人気のようで延長できず返却期限が来たので、超特急で読んだ。本当はこれも線を引きながら付箋をつけながらじっくり読みたい本である。 そして何よりも歴史を専門としない私などにもわかりやすいように書いて…

ミクロネシア連邦大統領訪日ー海洋安全保障とダイヤモンドセキュリティ

10月23日から10月26日まで,ピーター・マーティン・クリスチャン・ミクロネシア連邦大統領(H.E. Peter Martin Christian, President of the Federated States of Micronesia)が実務訪問賓客として日本に滞在した。 天皇陛下との会見。安倍総理、河野外相、…

京大vs東大

西の京大、東の東大。 あまり大学の事は知らないし関心がないのだが。 秋に世界中から学者が日本に来るようで、京都にいることをもう言わない方がいいかもしれないと思うほど、ここ数日は忙しい。 でも興味深い話が山ほど聞ける。 京大に招聘された学者との…

尾高朝雄のノモス主権論

このブログにカール・シュミットの「大地とノモス」をメモしていなければ出会えなかった本である。 SNSで見ず知らずの人からこのブログのしかも「大地とノモス」をRTされたので少し驚いた。 カール・シュミットは多くの人が名前は知っているが議論の中身は知…

鷹姫ーアイルランドと日本を結ぶ能

アイリッシュの詩人イエーツと能研究者小林静雄 娘のご先祖様の一人にアイルランドの歴史的人物がいる事を知ってから、興味も関心もなかったアイルランドが急に気になって来た。 昨年初めて訪ねたアイルランドは「イースター蜂起」100周年でイエーツの詩…

ニュージーランドに37歳の女性の首相が誕生

昨日はこのニュースで新井京先生の国際法授業が上の空になってしまった! ニュージーランド、9年ぶり政権交代 TPPに慎重姿勢 2017/10/19 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22462560Z11C17A0FF2000/ ニュージーランドの総選挙、第1党の国民党、第2…

ミクロネシアの便宜置籍船ビジネス

一昨日の報道ステーションのパラオ特集は反響が大きく、色々な方から「あれはどういう意味か?」等々ご質問をいただく。こうやって頼ってもらえるのは嬉しい限りである。 同時に情報をもらったり、忘れていた事を思い出させてもらったり。。 今回のニュース…

蔡総統の太平洋島嶼国訪問開始!

当初7月に予定されていた、蔡総統の太平洋島嶼国訪問がこの10月28日から開始する。 訪問先はマーシャル諸島、ツバル、ソロモン諸島だ。 Taiwanese president to visit Pacific 1 June 2017 http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/332074…

山本草二『海洋法』三省堂、2001年(2)

引き続き、山本草二著『海洋法』から気になった箇所をメモしていく。(自分用のメモです) II 海洋法秩序の発展過程 三 海洋法秩序の条約化とその発展 p30 p. 33 G77などは17、8世紀以来の「狭い領海」と「広い公海」の二部構成に立つ伝統的海洋法を改め、海…

山本草二『海洋法』三省堂、2001年

山本草二先生の『海洋法』は坂元教授から読むように4月にご指導いただき、一読したが、松井芳朗先生の自決権、天然資源の永久的主権に関する論文を読んでから、再読しようと思っていた。 海洋法が、戦後の、特に60年代以降の独立国の動きと一致しているから…

海洋法を巡るNGOと海洋保護区の論文

『21世紀の国際法と海洋法の課題』著者 松井芳郎・富岡仁・坂元茂樹・薬師寺公夫・桐山孝信・西村智朗編。2016年。東信堂。 http://www.toshindo-pub.com/book/21世紀の国際法と海洋法の課題/ ニウエの海洋保護区、そしてトランプ政権のメガ海洋保護区見直し…

ニウエの海洋保護区とパナマ文書(追記あり)

禁漁区を制定した新たなメガ海洋保護区が太平洋に誕生するようだ。 場所はニエウ。人口1,600人でニュージーランドと自由連合協定を締結する。 ニウエ政府は40%のEEZを禁漁( No Take Zone)と海底資源開発も禁止とする海洋保護区制定に動く、という。 同じ…

鴨川に響くモーツアルトのレクイエム

鴨川沿いの道を選んで同志社大学まで徒歩で通っている。 6月の日差しが厳しくなってきた頃、信号待ちで日陰に入った。 老舗のお米屋さんの前。 モーツアルトのレクイエムを一緒に歌いませんか?というポスターが貼ってあった。 モーツアルトのレクイエム。音…

開発イデオロギーと自決権・脱植民

指導教官の坂元教授からは博士の3年で扱える問題ではないので止めておけとアドバイスいただいている件なのだが、人口数万、数十万で独立、主権国家となった太平洋島嶼国を支える根拠である国際法の「自決権」。どうも気になってダメ元で勉強してみようと夏休…

米国の遺跡保護法ー111年目の改正か?

上記の連邦政府専門委員会のビデオは実質40分程度で見ていて面白かった!この後full houseに,そして senateに送られるらしいが、環境保護派とメディアを背後に抱える民主党の議事妨害は容易に想像がつく。 4月26日に大統領令としてサインされたAntiquties A…

フィジーと中国の闇の奥

2ヶ月前、中国の警察がフィジーに来て、77人のインターネット犯罪者を連れて帰った件。 ABCニュースが新たな事実を取材。 連れ去られた中国人の多くが10代の女性だったとの証言。組織的セックスワーカー犯罪の可能性が。 現地のジャーナリストや知人たちの…

『オレンジ計画』エドワード ミラー 著

『オレンジ計画―アメリカの対日侵攻50年戦略』 1994 エドワード ミラー (著), 沢田 博 (翻訳)、新潮社 オレンジ計画ーレインボー計画の中の対日戦略である。 太平洋を、日米関係を、第二次世界大戦を知る重要な資料だろうち思いつつ、戦記物は関心が湧かない…

安保理北朝鮮制裁リスト9隻の内パラオ船籍は3隻

「北朝鮮籍の船舶など4隻を制裁対象に追加 国連安保理」 10/10 2017 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00372957.html 上記の記事によると「国連安保理は、北朝鮮に対する制裁決議で禁止されている物品を運んでいたとして、5日付で、北朝…

使われない船?

自分が立ち上げた事業が継続し、発展する姿を見るのは嬉しい。 しかし、良いニュースばかりではない。 パラオに既に供与した小型船が港に停留したままで使われていないのが心配だ、とパラオの閣僚始め数人から囁かれ、息が止まった。 下記のパラオ大統領府の…

Our Oceanと海底資源開発をめぐる議論

The Prince of Wales addresses Our Ocean Conference about climate change and marine pollution 5th October 2017 https://www.princeofwales.gov.uk/news-and-diary/the-prince-of-wales-addresses-our-ocean-conference-about-climate-change-and-marin…

仏領ポリネシアのハオ環礁を巡る「虹の戦士号事件」「国家責任」「1500億円の養殖場」

まさか、まさか、仏領ポリネシアのハオ環礁の事が2日続けて当方の指導教官の坂元教授、そして水産庁のドン宮原さんから伺うとは思わなかった。誰も知らないし、話しても誰も関心を持たないであろう、と思っていた環礁である。 坂元教授のunder graduateの授…

Dr Berginの提案パラオで叶う(2)

RMCCを提案した豪州のDr Anthony Bergin. 完成間近のパラオのセンターは彼の提案である。 <無知な有識者たち> ミクロネシア地域で何か事業を始めるのであれば「パラオ」と言うのは現地を知る人の常識なのだ。しかし、外交上そんな事は口に出して言えないし…

Dr Berginの提案パラオで叶う(1)

RMCCを提案した豪州のDr Anthony Bergin. 完成間近のパラオのセンターは元々は彼の提案である。 自分で立ち上げた事業が継続し、発展していく姿を見るのは感慨深い。自分の子供の成長を見るようだ。 ミクロネシア海上保安事業の他にも、博論にも取り上げた南…