やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

使われない船?使えない船?

私が一人で立ち上げたミクロネシア海上保安事業。現在この事業に関与している国交省も海保も太平洋島嶼国に関する知識も人脈もゼロで彼らにできるわけがない。 私が笹川洋平と羽生次郎を焚きつけて立ち上げたのである。 具体的支援事業内容の中に監視艇の供…

外務省のブラックホール並みの救い難さ

国会議員が外務省のブラックホール並みの救い難さに怒りを示している。今回の青山議員の動画を見てホットした。 ここ最近は自分がどのような外交活動をしているか、意識して表で書くようにしている。どこかのバカ親父が誤解して私の自己顕示欲だという。 私…

私が動かした大統領令

12月9日に米国政府財務省から発表された人権グローバルマグニツキー法がパラオに入っている三合会にも発動されるニュース。詳細を追いたかったがこれからだ。 なぜ詳細を追いたかったのか?私がここ数年関わってきたことだからだ。 財務省の報道にExecutive …

生田滋著『大航海時代とモルッカ諸島』

ジョアン一世とエンリケ王子 拙著『インド太平洋開拓史』第2章では、西洋の植民を取り上げた。 パプアニューギニアの国境線が南北に直線に引かれている背景を書こう、と思った。 それはトリデシャス条約なのだが、そしてスパイス諸島をめぐるスペインとポル…

Protect with Law and Order against Darkness of Paradise

Original version of 16/10/2020. English translation is only draft. <Chinese Manipulation of the Palau Presidential Election> On September 22 primary elections were held with a presidential candidate who was claiming to switch diplomatic r…

曽村保信著『海は誰のものか』読書メモ

これも返却が来た本で絶版 SNSフレンドが教えてくれたのだが この本を読まずに「海」を語ってはいけないんじゃないか、と第1章をまず読んで唸った。 オーストロネシア語族の海洋拡散の話しら始まる。 そして倭寇の南進。南洋は先に日本が開発し和蘭に譲り渡…

一又正雄著『日本の国際法学を築いた人々』読書メモ

これも絶版で手に入らず、図書館に返す日が来た。手元に置いて再読したい本。 目次だけ写メをコピー。 坂本茂樹教授と真山全教授のご推薦をいただいて日本国際法学会に昨年から入会している。で、この学会がそんなにすごい歴史を持っているとこの本で始めた…

矢野暢著『日本の南洋史観』読書メモ ー未完

矢野暢先生の南進論を読んでがっかりしていたら、その続きの『日本の南洋史観』は学術論文一歩手前のようなレベルの高い内容で、読書メモをとっておきたかった。しかし私のつまらない人生にも色々あって本を読む力はあってもそれをまとめる力まではない。 こ…

矢野暢著『日本の南洋史観』読書メモ(1)

200ページの中公新書。6章の第1章は「七人の「南進論」者」で50ページを割いている。 ここにぎょっとして目が飛び出たまま、未だに引っ込まないすごい箇所がある。 中国の第一列島線と第二列島線。起源はもしかしたら矢野先生かもしれない。 前半では「南進…

矢野暢著『日本の南洋史観』

1936年満州で生まれ、1999年ウィーンでその生涯を閉じた 拙著『インド太平洋開拓史』では紙幅を理由に「南進」を定義することもなく「サムライの南進」という項目で田口卯吉の天佑丸の南洋航海の話を書いた。 矢野暢著『「南進」の系譜』は読んでおきたかっ…

矢野暢著『「南進」の系譜』 読書メモ

拙著『インド太平洋開拓史』では「南進」を「サムライの南進」と「漁師の南進」という視点で書いてみた。本来ならば「南進」の言葉自体の定義などもすべきかと思ったが紙幅を理由に割愛。それでも矢野暢著『「南進」の系譜』に目を通しておきたかったがキン…

信夫清三郎著「ラッフルズ伝」(2)

著者信夫清三郎の父、信夫淳平。外交官、国際法学者 かつての英国植民地ウィキより French Indochina Dutch East Indies Portuguese Timor Spanish East Indies British Burma, Malaya and Borneo パラオの大統領選が気になってなかなか読む進まない信夫清三…

コロナ中のオンライン資料

Report of the Committee on the Peaceful Uses of the Sea-Bed and the Ocean Floor beyond the Limits of National Jurisdiction https://digitallibrary.un.org/record/731095 https://digitallibrary.un.org/record/731095 国際海洋法秩序の50年 https:/…

「日本帝国と委任統治」等松春夫著

ドイツ領ニューギニア 拙著『インド太平洋開拓史』は100ページの限られた紙幅に詰め込みすぎた反省がある。 太平洋といえば第一次世界大戦と第二次世界大戦の舞台であった。第一次世界大戦は平間洋一先生のご研究をご紹介することで、日本を「火事場泥棒」と…

クニオ・ナカムラ大統領の遺産(3)レメンゲサウ政権の環境保護懸念

ナカムラ大統領の任期は1993−2001年で4年の任期を2期務めた。その座を副大統領としてナカムラ氏を支えた現大統領のレメンゲサウに譲ったのである。 しかし、レメンゲサウ政権は環境保護を、時の流れに沿って強く押し出した。これにナカムラ大統領は強く反対…

信夫清三郎著「ラッフルズ伝」

父親の信夫淳平。外交官、国際法学者。清三郎氏の写真は見つからず。4人の息子のうち2人が自殺。ウィキ情報だがかなり激しい性格だったようだ。 何度か読んでいる白石隆著「海の帝国」今回読んだら信夫清三郎著「ラッフルズ伝」というのが、なんとアダム・…

ホワイトハウス米領サモアの海洋安全保障強化

これも感慨深いというか・・ 米国国家安全保障局が(国防省でも、国務省でもなく!)米領サモア周辺を監視するため高性能の監視艇を供与、とのこと。中国の違法操業監視が主な目的。 2008年、私がミクロネシア海上保安事業を立ち上げるとき、米国国務次官補…

クニオ・ナカムラ大統領の遺産(2)Education, Education, Education!

1999年の三塚、田淵パラオ訪問は、私とナカムラ大統領の距離を一気に縮めた。 翌年が偶然にも第2回しまサミットでナカムラ大統領・森総理が共同議長をすることになったのだが、このサミットも小渕総理の依頼を受けて、私が全面的に協力したのである。 沖縄…

高坂正堯著「海洋国家日本の構想」ー3つのショック

『インド太平洋開拓史』を書きながら再読したい本が山ほどあった。本棚から取り出した本は何十冊とまだ棚に戻らずに部屋に散らばっている。 博論を書いた後に数百冊の本を処分して手元にあるのは死ぬまでとっておきたいと思った本だけだ。 読まずに、読めず…

パラオ共和国紀行(4) 豊饒の海・伝統の島々 「財界」2000年12月1日号より

パラオ共和国紀行(4)豊饒の海・伝統の島々 「財界」2000年12月1日号より 歌川令三 「青地に丸く、月を染めて」 パラオ・パシフィック・リゾートから眺める夕やけ パラオ共和国の国旗は、海に満月をあしらったものだ。日本の南洋統治時代、「白地に赤く日の…

パラオ共和国紀行(3) ペリリューの死闘を考える 「財界」2000年新春特別号より

パラオ共和国紀行(3)ペリリューの死闘を考える 「財界」2000年新春特別号より 歌川令三 七色の珊瑚礁のなかで ペリリュー島は、大小300余もあるパラオ共和国の島々を囲む巨大な珊瑚礁群の南のへりに位置している。南北約9キロ、東西3キロ、地図で見ると、…

パラオ共和国紀行(2) 南海の虹を追って・ 「財界」2000年新年特大号より

パラオ共和国紀行(2)南海の虹を追って・・・・・ 「財界」2000年新年特大号より 歌川令三 「ヴェジタリアン」の猛魚 マサオ大使 パラオ島に着いた翌朝、ホテルのPALAU PACIFIC RESORTのモーニングコールを合図にTVを付ける。東京からグアム経由四千キロの…

パラオ共和国紀行(1)"不思議の国"のマイ・ウェイ (My Way・in Wonder Island) 「財界」1999年12月7日号より

パラオ共和国紀行(1)"不思議の国"のマイ・ウェイ (My Way・in Wonder Island) 「財界」1999年12月7日号より 歌川令三 もはや「南洋」ではない 写真 左:田淵節也氏 右:ナカムラ大統領 「パラオに行かないか」と誘ってくれたのは、学徒出陣の元海軍中尉の…

The origin of Micronesia sub-regionalism movement

I tried to write Micronesia sub-regional movement in this blog and found interesting ADB report. Montague Lord, A Strategy for Micronesian Regional Cooperation, 1996 Quote from EXECUTIVE SUMMARY ... Cooperative arrangements for Micronesia …

サムライの南進、漁師の南進 ー『インド太平洋開拓史』

『インド太平洋開拓史』では「南進」を「サムライの南進」「漁師の南進」という切り口でまとめてみた。どうも戦争の南進ばかりが取り上げあげられ、それ以前の「南進」がほとんど無視されているような気がしたからだ。 維新で職を失ったサムライたちが何百万…

ヤップ州に中共の船を押し付けるApis運輸大臣

上記の記事によるとなんと、ヤップ州の知事が日本の船を希望しているのに、一切耳を貸さず、ミクロネシア連邦政府Carlson D. Apis運輸大臣は再び中国の船の贈与を決めてしまいました。 今年7月多くの(確か何百人)の学生を含む乗客を乗せた貨客船(中共政府…

ソロモン諸島、マライタ州独立に米国干渉?

Chad Morris of the Public Affairs and Economic Officer at the U.S Embassy 親台のマライタ州が米国から25億円もらうことに対し、米の内政干渉だとの批判が豪州のメディアから出ている。マライタの我らが水谷知事は独立の住民投票を提案しているからだ。 …

白石隆著「海の帝国」アダム・スミス、ラッフルズ

ラッフルズホテルとラッフルズは関係ないのだが、死ぬまでに一度は泊まってみたい。 白石隆著「海の帝国」は、ミクロネシア海上保安事業を2008年に立ち上げる時に、どのようなコンセプトで事業を進めればよいか、模索していた時に出会った本である。 「イン…

衛星通信と私 (16)

Space Japan Review 4-5 No.16 April/May. 2001 に掲載された記事である。まだそのサイトがあるがいつか消されるかもしれないのでコピペしておきたい。衛星研究第一人者の飯田尚志博士から依頼を受けて書いたものだ。2001年、私はまさに先日亡くなられたパラ…

クニオ・ナカムラ大統領の遺産(1)ミクロネシアサブリジョナリズムの動き

www.jiji.com ナカムラ大統領と日本の関係を、表の、顕教的関係を作ってきたのは私である。 1999年のPIF総会に田淵節也氏と、三塚博議員をご案内し、ここで一気に日本パラオの表の関係のステージがあがった。 翌年2000年は第二回島サミットで、森総理とナカ…