やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(7)

第二章 5つの政治的表現 ー 民族・階級・少数民族・人種・エスニック ー の最後の3つの節。これが一番ローネンが議論したい箇所なのであろう。ローネンはホロコーストを生き残り、キブツで暮らし、その後アフリカに入っている。どこかに彼のより詳細な経歴…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(6)

引き続き第二章の1節「民族の自決」 ナショナリズムとエスニックの違いが議論されている。 自決がナショナリズムの追求という形で議論されているがそれは下記のような例を示す。 脱植民地化(民族によってではなく植民地遺産によって) 自治の運動(必ずし…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(5)

第二章 5つの政治的表現 ー 民族・階級・少数民族・人種・エスニック ー ローネンの自決権のカテゴリーはわかりやすい。この5つの分類を見ていると何が抜けていて、私が太平洋島嶼国について議論したいどの部分が抜けているのが浮かび上がってくるのだ。 …

パラオ現副大統領兼法務大臣、次期大統領選候補は中国支持!

パラオ現副大統領兼法務大臣、次期大統領選候補は中国支持! レメンゲサウ大統領が台湾支持といいながら、実は中国にべったりであることは各方面から聞いていた。中立を装ってきた現副大統領兼法務大臣、次期大統領選候補のOilouch氏がここに来て中国支持で…

カッセーゼによるレーリンクの思い出と評価

Cassese, Antonio 2010. “B. V. A. Röling - A Personal Recollection and Appraisal,” Journal of International Criminal Justice 8 アントニオ・カッセーゼが亡くなる前年に出されたペーパーを読んだ。カッセーゼは、東京裁判の判事であったオランダレー…

Antonio Cassese とB. V. A. Röling

国際法の巨人、大家 Antonio Casseseの自決権の議論を読んでいるのだが、江崎先生から東京裁判と彼の関係を指摘され、チラッと読んだこのペーパー。著者金碩淵は韓国の研究者だ。 「「東京裁判史観」の廃棄を訴える「右翼」の場合、「勝者の裁き」論を繰り返…

『法学の世界』読書メモ

法学とは何か?法律とは何か?国際法で博士論文を書くとはどういうことか? そんな基本的な疑問はずっとあったのだが、ある法哲学者から学部生が読む本を紹介いただいた。はっとするようなことが書かれている。 例えば第1章の憲法。私も長年憲法とは憲法典…

十七条憲法の十二条が支える皇室

天皇陛下の即位式に関連し誰も取り上げていない十七条憲法の十二条。 「国に二君なく、民に両主はない、国の内の人々は、唯一人の天皇を唯一の主人とみとめると。」 私は新渡戸稲造の『日本-その問題と発展の諸局面』を読んでメモをこのブログに書いた。き…

ソロモン諸島台湾断交 法律が守ったツラギ島

中国企業がソロモン諸島の中央部州政府と島ごと長期リース契約を結んだ件で、かなりニュースになっていたが、同国の法務長官が違法な契約ですぐに終了しなければならない、と首相官邸を通じて、同州に通告。法律万歳! TULAGI LEASE ILLEGAL - Solomon Star …

パラダイス行きのパスポート

How selling citizenship is now big business - BBC News BBCがバヌアツパスポート販売の記事を書いた。私が書いてきて、BBCが書いていないことがある。バヌアツのような法手続きが緩い国は犯罪者にも容易にパスポートが手に入る。そのパスポートで世界中で…

ヤップからの恐喝、受けました。

yashinominews.hatenablog.com 昨日あげたヤップの米国人司法長官代理殺害事件に関する記事をヤップのFBが取り上げて、恐喝のようなメッセージが来ている。 ああ、これが彼女が受けた脅しなのだと実感した。ちなみに私は、罪や汚職を指摘したがヤップやヤッ…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(4)

4ヶ月前に手にしたダブ・ローネン『自決権とは何か』の読書メモ再開。 自決権について非常にわかりやすく、また刺激的にまとめられている。アマゾンで見たら50円売っていたので購入。 鉛筆握りながら再読。 著者ローネンの経歴があったのでコピーしておく。…

アメリカの本気(2)

アメリカの本気が加速している。トップギアで、だ。 まずは2019年10月にハワイの東西センターで開催されたミクロネシアリーダー会議でインド太平洋軍のPhil Davidson司令官がスピーチ。 支援策は色々あるがインド太平洋トランスペアレンシーに15億円を追加支…

アメリカの本気(1)

2010年1月、ヒラリー・クリントン国務長官の時代にもアメリカの太平洋回帰が叫ばれたのだ。しかし国務長官がケチャップ屋の父ちゃんになった途端、アップルの元副社長を国務事務次官補に任命し、わけのわからないOur Oceanという海洋保護事業になってしまっ…

Heart of Darkness of Island Society

www.rnz.co.nz Heart of Darkness of Island Society The murder of Ms Rachelle Bergeron has occupied my mind since the 15th October when the news showed up on SNS. In my 30 years experience of working in the Pacific Islands, I have always fel…

クアルテイ前パラオ国務大臣、旭日大綬章受章

令和元年春の外国人叙勲で旭日大綬章を受章されたクアルテイ前国務大臣への勲章伝達式(在パラオ日本大使館から) この度の日本海上自衛隊パラオ訪問にもつながる日本とパラオの関係を強化したクアルテイ前パラオ国務大臣。令和元年春の外国人叙勲で旭日大綬…

海上自衛隊・航空自衛隊パラオにて慰霊

私はパラオに30年以上関与し、この自衛隊がやってくる道筋を2008年に作ったのです。 一つのきっかけが太平洋軍キーティング司令官の言葉でした。 「この広い太平洋を守れるのは米国と日本しかいない。しかし日本の手足を縛ったのは我々米国だ。」 ならばそ…

名古屋大須ロータリークラブでの講演が決定

名古屋大須ロータリークラブでの講演が決定しました。 テーマはいつもSNSで取り上げている「パラオの子ども達を麻薬から守れ!」にさせていただきました。 お金のために子ども達を麻薬中毒にして売春させ、海外に売り飛ばす島のリーダー達。さらにそれを取締…

ヤップ島、米国人司法長官代理殺人事件(3)

1. Peter Christian 前ミクロネシア大統領の汚職事件 Bergeron女史殺害事件関連ニュースで、いかにミクロネシアの政治が腐敗しているか?Peter Christian 前ミクロネシア大統領の件が取り上げられている。 https://www.kanditnews.com/post/martyrdom-agains…

ヤップ島、米国人司法長官代理殺人事件(2)

33歳の米国人女性弁護士殺害の件は人ごとではないのだ。太平洋島嶼国に30年関わってきて常に感じてきた危険である。こういう情報は表に出ないが現場ではひしひしと肌に伝わってきた。 ヤップ島、米国人司法長官代理殺人事件の記事を必死にFBにアップしていた…

ヤップ島、米国人司法長官代理殺人事件

ミクロネシア連邦のヤップ州で、33歳の米国人女性が銃殺された。Rachel Bergeron女史は人権専門の弁護士で2015年ヤップにやってきた。子ども達の人身売買、中国企業が背景にある島の汚職と果敢に戦ってきた。 未だ犯人は捕まっていない。米国からはFBIが捜…

オーストラリア・モリソン首相の安倍総理讃歌

世界広しといえどもトランプ大統領のパリ協定離脱スピーチを聞いてピーナッツ(端金)の部分が引っかかりそのルーツを調べ上げたのは私だけであろう。 日本広しといえども豪州モリソン首相のスピーチとインタビュー1時間を聞いてモリソン首相の感極まった安…

セクシー大臣を誕生させたフィゲレスおばちゃんと世界中央銀行の仲間たち

"He (Koizumi) was speaking alongside Christiana Figueres, an architect of the 2015 Paris Agreement to curb global warming, who had invited him to meet various companies and banks aiming to accelerate investment in clean energy projects in …

安倍総理所信表明演説に見る「人種平等」と日本の役割

「提案の進展を、全米千二百万の有色の人々が注目している。」 百年前、米国のアフロ・アメリカン紙は、パリ講和会議における日本の提案について、こう記しました。 一千万人もの戦死者を出した悲惨な戦争を経て、どういう世界を創っていくのか。新しい時代…

ソロモン諸島台湾断交、いよいよ一帯一路に署名 (2019.10.2-10.12)

台湾断交を決断したソロモン諸島。そのプロセスは決して公正であったとは言い切れず、ソロモン諸島の各地域で、様々な動きが毎日のようにニュースで流れてくる。 FBの方でピックアップしていたニュースをブログにも記録しておきたい。 最近のニュースからで…

Marine Mammal Conservation and the Law of the Sea by Cameron S. G. Jefferies

日本のIWC脱退で国連海洋法条約違反だー、とメディアや国際政治、経済学者が騒いでいて、私の守備範囲ではないが、その対象となるUNCLOS65条の議論をいくつか読んでみた。 さて、あれだけ騒いでいた件だが今のところ日本を訴える動きは聞こえてこない。シー…

『南極条約体制と国際法』池島大策著

池島大策教授の博士論文である。 前回のインド太平洋研究会、オフラインセミナーで南極における中国の進出について触れたが、その背景を抑えておきたいと思った。 中国がクレイマントでもないのに、なぜ我が物顔であれほど急速に大規模に南極に進出できるの…

「ザ・フェデラリスト」の解説を読む  

左からジェームズ・マディソン、アレクサンダー・ハミルトン、ジョン・ジェイ、 米国憲法制定に向けた重要な議論である。古典であるが新聞に85回、1年間に渡って掲載されたオピニオンだ。執筆者はハミルトン、ジェイ、マディソンの3名。当時執筆者は名前が伏…

セクシー大臣でわかった、ゆすりたかりの小島嶼国の存在

トランプ大統領のパリ協定離脱スピーチを2、3回聞き、ピーナッツ(端金)の部分が気になってスピーチ原稿を探し確認し、これは島嶼国の外交官かもしれん、とウェブサーチで探し当てると言う、調査分析活動を行なったのは世界広し、と言えども私だけであろ…

シュタインの王室論(宿題リスト)

福沢諭吉の『帝室論』とシュタインの『王権論』は同じではないか、と江崎さんの本を読んで思って、関係資料を手元に集めたが、2週間以上の体調不良で読書、勉強計画がすっかり遅れてしまい、一度資料を図書館に返すこととした。 後で読むために、資料のタイ…