やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

災い転じて福と為すーイジメ転じてヒラリー動かす

 クック諸島で開催されたPIF総会にPIF史上初めて米国国務長官が出席しただけではなく、米国の太平洋へのエンゲージメントがより明確に、具体的に示された。

 その中でも我々が注目すべきは海洋安全保障関連事項である。

 2012年8月31日に発表されたU.S. Engagement in the Pacificの中に下記の支援案がある事が気になった。

"In addition, the U.S. Coast Guard, which maintains readiness to conduct search and rescue operations across 19,600,000 square kilometers in the Pacific, is working with U.S. Pacific Command to explore the possibility of developing enhanced maritime domain awareness training to the Freely Associated States."

 法執行分野におけるミクロネシア3カ国への海洋訓練、とある。どこかで聞いたような内容。日本財団笹川平和財団が今後進めようとしている内容と重なる。

 「これどういう背景で、どういう内容なんでしょうか?」

 米国連邦政府各省カウンターパートに聞いてみた。

 「これを動かしているのは実は私たちです。あなたの熱弁に動かされました。」

 笹川良一名誉会長ではないが、世の中何が幸いするかわからん。

 前回の米国出張では大変な思いをした。日本当局の下衆のみなさんがわざわざ米国連邦政府に「早川は重要な業務をするポジションになく、笹川会長の親戚か、羽生会長とは特別な仲にある。相手にするな。」と連絡してくれていたのである。

 人の活躍は、疎ましく妬ましい。下衆の皆さんの気持ちはわからんでもないが、業務ができない。 親戚ではない笹川会長からは「さらなる活躍を期待する。」というお葉書をいただいたばかりだし、それほど特別な関係でもない羽生会長からは「この事業の意義を理解できるのは君だけだ。」と煽てられているし、黙って退散する訳にはいない。

 思い切って、洗い浚い話す事とした。

 このミクロネシア海上保安事業は自分が立ち上げただけでなく、その前段階のミクロネシア地域協力の枠組み作りから関与してきたこと。

 さらには戦後の日本の安全保障体制の歪み(肝心の米国が認識していない)を説明。なぜ笹川良一名誉会長が自ら巣鴨に入って戦犯を救う必要があったのか(片岡鉄哉著 "The Price of a Constitution" 邦題「さらば吉田茂」を推薦)。

 ミクロネシア自由連合協定とはなにか。そんな事、国務省内務省に入省しても誰も教えてくれないから、日本人の私が米国政府職員に教えるしかないのだ。それに日米同盟の新たな方向の可能性。

 法執行と軍事執行の日本における意味など、滔々と2、30分は熱弁してきたのである。

 災い転じて福と為す、じゃないが、まさか イジメ転じてヒラリー動かす事になろうとは。