やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

モディ首相、習国家主席のフィジー入り

<モディ首相、習国家主席のフィジー入り>

ブリスベンで開催されているG20を終えたインドのモディ首相と中国の習国家主席は今週相次いでフィジー入りをする。

インド首相のフィジー入りは1981年のガンジー訪問以来。

下記のコメントでは両国のフィジー入りは海洋覇権を狙う中国への牽制、とある。そうであれば、フィジーの人口の半分を占め、経済も握っているインドは優勢であろう。

"Indian PM's Fiji trip aimed at countering China says expert"

http://www.radionz.co.nz/international/programmes/datelinepacific/audio/20156830/indian-pm's-fiji-trip-aimed-at-countering-china-says-expert

<フィジー vs 豪州NZの問題>

さて、現在フィジーが抱える問題が豪州、NZとの関係である。

軍事政権はけしからん、と話し合いも拒否し、PIFからフィジーを追い出したのは豪州である。

政府高官の入国禁止という制裁までしていた。豪州は9月のフィジー総選挙で民主国家となったという理由で急に接近。そしてPIFへのメンバーシップも回復と提示したが、今度はフィジーが豪州、NZが牛耳っているPIFに戻る気はない、と突っぱねた。来年早々オーストラリアで地域枠組みを巡って協議が行われる事になった。日本は首を突っ込まない方が良さそうだ。

PIFは初代首相カミセセ•マラ閣下が、1947年にできたSouth Pacific Commission (現太平洋共同体)が旧宗主国主導で島嶼国の声が反映されない、との意識から島主導の組織として立ち上げたものだ。当時豪州、NZを入れるかどうか、苦渋の決断だったようだ。結果として豪州、NZが90%以上の予算も管理も主導する形となってしまった。

90年代初頭からPIFの動きを見ている。PIFの在り方に関しては、島嶼国がイニシアチブと取りきれなかった、不甲斐なかった、という見方もできないわけではない。

他方、このように旧宗主国が前面に立って牛耳っているのは太平洋だけである。アフリカ、カリブ、アジアの地域組織で旧宗主国がメンバーになっているところはない。豪州NZのリーダーシップの取り方が不味かったという見方もできるだろう。ミクロネシアのサブ地域枠組みが出来た背景もここにある。

<フィジーを支援するBRICS諸国>

さて、PIFを追い出されて地域での場を失ったフィジーはヘコタレていなかった。新たな地域組織を立ち上げたのである。当時のフィジーの状況に多くの島嶼国が共感し、支援参加があった。それだけではない。島嶼国の国際舞台での票のパワーをBRICSも目をつけた。以前より関係はあったが、これらBRICSとの関係が一機に強化される結果となったのである。よって今回のインド、中国トップのフィジー入りもその流れである。

加えて、2011年にフィジー非同盟諸国に加盟している。

<日フィジー関係>

さて、日本とフィジーの関係は?

日本は1970年フィジー独立と共に国交を樹立。当時は五島昇氏など経済人が活躍されていたと思う。1988年、笹川平和財団が主催した「太平洋島嶼国会議」にはカミセセ•マラ首相を招聘。その後北京にもお連れしているはずである。

バイニマラマ政権を支えるのが在日大使の経験のあるラツ・イノケ外務大臣である。情報大臣の経歴もあるイノケ大臣は積極的に情報発信をしており、世界を飛び回っているご様子が確認できる。しかし、訪問先は中国、韓国、アラブ諸国が多く、日本が一切出て来ないのが気がかりでもある。