やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

気になるニュース(1)世銀の嘘つき!

パラオの海洋管理関係で気になるニュースが3件あった。

まず一つ目。

思わず世銀の嘘つき!と叫んだニュースである。

「また」そして性懲りもなく「まだ」世銀が太平洋島嶼国に漁業に力を入れれば儲かりまっせー!と吹聴しているのだ。

Pacific Countries Could Earn Much More From Tuna: World Bank

Report estimates $344 million annually, 15,000 jobs by 2040

http://pidp.eastwestcenter.org/pireport/2016/May/05-12-03.htm

マグロ産業で得られる収益は年間$US344 million。

2040年までに15,000 の雇用が増える、との世銀の「いつもの」提案。

世銀が新たに出した報告書には5つの政策提言がある。

1.さらなる地域協力と統合

2.効率的漁業と漁獲制限

3.漁船への柔軟なアクセス権

4.技術と労働への投資

5.沿岸漁業支援

当方から色々反論はあるが、基本的な点は島嶼国が漁業産業を興すには、水、電気と言った基本的インフラに加え、法整備が必要である、ということだ。

これは例えば最近のパラオの水不足問題でわかった50%登る配水漏れ。

インフラがない、という他に、現在あるインフラの管理運営ができていないのである!

法の件では、これも現在パラオで繰り広げられている法務大臣と司法長官、検事のイザコザや、一昨年のミクロネシア連邦の司法長官による日本カツオ漁船拿捕の件を観てもわかる通り、マトモに機能していないのである。

だいたい、漁船一つ、漁業会社一つを動かすのにどれだけの法律が関係しているのであろうか?

漁業をする権利義務に関連し、労働管理、漁船の管理、売買の管理、まだまだあるように思う。

はっきり言って太平洋島嶼国は間$US344 millionを稼ぐための法律がない、あってもそれを実行管理するキャパシティがないのである。

それじゃあ、先進国といっしょにやりましょう、という案もある。

水産庁関係者によると、日本企業との合弁会社を現地に作っても、その利益が税金として国民に配分される事はほぼない、という。そう、企業への税金が低いはずなのだ。タックスヘブンで生きている国でもある。

当方の知る某島嶼国の漁業会社社長は、島の人間が働かないのでフィリピン人を雇わざるを得ないとこぼしていた。例え雇用が増えても、それが島嶼国の人々のためになるのか?

そして日本の水産庁やOFCFが今まで散々ODAを供出してきた島嶼国の地元漁業産業支援の結末を世銀はきちんと評価作業しているのであろうか?