宮崎学著
南風社、1996年
「ゲイシャ」と「ヤクザ」。外国人が興味を示す日本文化だが、説明できない。
数ヶ月前もNZのグリーン党に勤める隣のルーシーから呼ばれ、日本の漁業とヤクザの関係について聞かれた。勿論わからない。服装や行動様式に若干共通点があるかもしれないが、どうであろうか?
そもそも「ヤクザ」とは何なのか?
人間社会の差別や区別はなくならないであろうが、その仕組みを知る事は重要だ。
松岡正剛氏は、
「われわれはヤクザを知らなすぎる。それはよくない。もっと知るべきである。」
「アメリカにはマフィアや暗殺団やアウトロー集団の研究書は、それぞれ50冊をくだらないという。それもたいていは分厚い本格的な研究書で、文学的にも社会学的にもすぐれたものが多い。」と言う。
それでネットで探していたら宮崎学氏の自叙伝『突破者』を見つけた。
京都出身のヤクザで、早稲田で学生運動をしていた方である。
『近代ヤクザ肯定論』『談合文化論』『万年東一』など日本の裏社会を描き続けている。
同著で2カ所気になった箇所があった。
(本文より引用)
そもそも京都は古い町だけに、階級ないし階級秩序が今もって厳然として存在している。天皇家と縁戚関係にある公家衆が、表面には顔を出さないが絶大な発言力を有していたりする。この公家衆を取り巻くようにして、本願寺などの坊主衆、茶道・華道の家元衆、西陣の織元である室町衆が上層階層を形成している。これらの各衆は血縁や寺と檀家の関係などによって緊密なつながりをもっている。
観光誌には決して書いていない内容だ。
エっ!と驚いた、もう一カ所。
宮崎学は事業に失敗し、元愚連隊の万年東一の集金係になる。恐喝まがいの行動。
(本文より引用)
笹川良一のところにも二度ほど集金に行ったことがある。中略
「万年の金回りはどうなんだ?」と訊く。
「ああいう人だから、相変わらず苦しいですよ」
「相変わらずか...」
「困っている兄弟がいたら、それを助けるのが兄貴の役割でしょうが」
「わかった、わかった」
そう言って故笹川良一名誉会長は宮崎氏に大金を渡したそうだ。
一割ほどが万東に。残りは宮崎氏の懐に入ったようである。
知れば知るほどわからなくなる「ゲイシャ」や「ヤクザ」の存在。
2005年には英語の「TOPPA MONO」も翻訳出版されたという。
海洋安全保障とは全く関係ないけれど、海賊理解には役立つかもしれない。
こちらの分野も引き続き勉強したい。
(文責:早川理恵子)