ピエ ブックス発行 2009年
そこに平積みで置いてあった。
あまりにも美しい本だったので、値段も気にせず購入してしまった。
中に、京都市立芸術大学の佐野敬彦名誉教授が書かれた「日本人の色彩感覚と伝統配色」と題した、短いが、興味深い解説がある。
ー前略ー
日本の「かたい色彩」は飛鳥・奈良時代に五行説にもとづく中国の配色が入ってきて、青丹よし奈良の都が作られたからである。
ー中略ー
平安時代に入って、色彩感覚は日本化する。それは京都の風土に由来する。鴨川をはじめ河川の多い京都では、霧や靄など水蒸気を含んだ空気が強い色彩をやわらげ、デリケートなものにする。大阪や江戸も水の都であった。また、日本では四季の変化に富んでいて、春夏秋冬と微妙に色彩が変化して行き、微細なものへの感性をたかめ、花鳥風月、草木昆虫のやわらかな色彩に心をよせた。
ー以下略ー
奈良と京都の違いは「霧と靄」か。
そう言われれば色彩が違う。
そう言われれば奈良が日本の古里、という気がしない。
日本と言えば、京都である。
イタリアの色彩感覚も水の都ベニスに由来するのだろうか?
そうであれば、乾燥地帯の色彩は明確で、固いのであろうか?
色の文化にも、海外のものを積極的に取り入れそれを日本化する、という日本伝統的な、なんというのだろうか、「受容→修正(編集)→固有化」していく文化があった。
次は京都の「霧と靄」が奏でる月夜の話を書きたい。