やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『日本の配色』

『日本の配色』

ピエ ブックス発行 2009年

上野の東京国立博物館の地下に売店がある。

そこに平積みで置いてあった。

あまりにも美しい本だったので、値段も気にせず購入してしまった。

中に、京都市立芸術大学の佐野敬彦名誉教授が書かれた「日本人の色彩感覚と伝統配色」と題した、短いが、興味深い解説がある。

 ー前略ー

日本の「かたい色彩」は飛鳥・奈良時代五行説にもとづく中国の配色が入ってきて、青丹よし奈良の都が作られたからである。

 ー中略ー

平安時代に入って、色彩感覚は日本化する。それは京都の風土に由来する。鴨川をはじめ河川の多い京都では、霧や靄など水蒸気を含んだ空気が強い色彩をやわらげ、デリケートなものにする。大阪や江戸も水の都であった。また、日本では四季の変化に富んでいて、春夏秋冬と微妙に色彩が変化して行き、微細なものへの感性をたかめ、花鳥風月、草木昆虫のやわらかな色彩に心をよせた。

 ー以下略ー

奈良と京都の違いは「霧と靄」か。

そう言われれば色彩が違う。

そう言われれば奈良が日本の古里、という気がしない。

日本と言えば、京都である。

イタリアの色彩感覚も水の都ベニスに由来するのだろうか?

そうであれば、乾燥地帯の色彩は明確で、固いのであろうか?

色の文化にも、海外のものを積極的に取り入れそれを日本化する、という日本伝統的な、なんというのだろうか、「受容→修正(編集)→固有化」していく文化があった。

次は京都の「霧と靄」が奏でる月夜の話を書きたい。