やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

偶夜偶冊

「文明の生態史観はいま」梅棹忠男著

今日誰かが梅棹忠男の「文明の生態史観」を紹介していて、急に手元にあった「文明の生態史観はいま」を思い出し再読した。 なぜ日本が太平洋なのか、に答えてくれる梅棹節である。対談形式なのでさっさと読める。 対談相手は川勝平太さん。 梅棹さんから ち…

緒方貞子著『満州事変』読書メモ

知らない分野の専門書を読むのは冒険だ。 緒方貞子氏の訃報のニュースと共に生前のインタビューがウェブに出てきていくつか拝見した。その中で「最後は勘です。」と緒方さんが言っており、ハッとした。私と同じだ。あらゆる情報を集め、あらゆる議論を終えた…

ハンナ・アレントー永井陽之助ー阿部斉

ロックダウン中のニュージーランドに入国し、隔離生活11日目。 読書計画があったが、永井論文に出会って見事に崩壊した。 国連人権理事会のパネルに中国が選ばれたとのニュースに接し、国連に「人権」が入る事を書いていた草間秀三郎氏の論文を思い出して…

内藤陽介著『アウシュヴィッツの手紙』読書メモ

ロックダウンのニュージーランドに入国して2週間、もしくは4週間の隔離生活を目の前に選んだ本は内藤陽介著『アウシュビッツの手紙』 「はじめに」にある郵便学とは何かを読んだだけでも多くを学んだ。郵便学は立派な学問、学術研究である。そのメソドロジ…

読書メモー『イスラム教の理論』飯山陽著

飯山陽博士の『イスラム教の理論』を読み終えた。 イスラム教の右も左もわからない当方にとって大変読みやすく助かった。 イスラム教の右も左もわからない私がなぜイスラムを知りたくなったのか?4つ理由がある。 一つは長年付き合ってる太平洋島嶼国とほぼ…

無鄰菴貸切読書の一日

京都に山縣有朋が造園家・小川治兵衛に作らせた日本庭園がある。山縣が別荘にした家屋もあり、1903年4月21日、山縣有朋、伊藤博文、桂太郎、小村寿太郎が日露開戦を決定した洋館もある。 明治の歴史と東山を借景にした美しい庭。 この日本家屋の2階を丸一日…

『国家の崩壊』ロバート・クーパー(2009、日本経済新聞社)

EHカーの『ナショナリズの発展』を再度図書館に借りに行ったら隣にあった本である。10年ほど前に一度読んだ。著者は英国外交官でピアニストの内田光子さんのパートナーなんだよ、と知人が紹介してくれたのだった。内容は覚えていない。 序文の次に「日本語版…

『日本占領と「敗戦革命」の危機』江崎道朗著ー6章から10章「昭和天皇の反撃」

江崎先生の新刊『日本占領と「敗戦革命」の危機』一章ずつ読んでメモを書いてきた。残りの6章から10章、旅先の舞鶴で読んだ。北海道行きのフェリーは夜中発なのだ。時間はたっぷりあった。 読み進めるうちに、ここ舞鶴でこの本を読んでいる奇遇に驚いた。 …

待賢門院璋子の生涯―椒庭秘抄

京都岡崎にある無鄰菴で日本史研究家の方と蛍を見る機会があった。 平安時代がご専門だという。そこで生半可な知識をよせばいいのに披露した。 私「西行が侍をやめて詩人、僧侶になったのは待賢門院璋子に恋したからですね。この近くに璋子さんの御願時円勝…

『日本占領と「敗戦革命」の危機』江崎道朗著ー第1章ルーズヴェルト民主党政権下での対日「敗戦革命」計画

江崎先生の新刊『日本占領と「敗戦革命」の危機』第1章。 全部読んでから感想、なんて書けないので一章ずつ。しかし私のような素人にもわかりやすく、節も短いので読みやす。それに江崎先生のコミンテルンシリーズはわからないなりに読んできたので、面白く…

『日本占領と「敗戦革命」の危機』江崎道朗著ー序章

江崎先生の新刊だ。500ページの大著。ネタバレにならない程度にメモして行きます。 発売3日で増刷だそうです。 はじめに、と序章で既に50ページ。 序章 ー 「敗戦で平和になった」という誤解 ー と題し戦後の日本の危機が描かれている。笹川良一さんが惚れた…

読書メモ『暗黒大陸 中国の真実』

中国をめぐる反日の情報は中国に派遣された米国人宣教師が発信地である、という話を晩年日米関係の修復に命をかけた新渡戸稲造が書いていた。同じことを米国の外交官が1933年に書いていて日本語の本になっていることをFBFから教えてもらった。 ラルフ・タウ…

「マルクス・エンゲルス」

youtu.be 「マルクス・エンゲルス」観てきました。 一番印象に残ったのが「人類はみな兄弟」。あれ?これって笹川良一さんではないか?良一さんは共産主義が「人類はみな兄弟」をスローガンにしてるの知っていて、共産主義封じ込めのために、わざと、即ち共…

『和辻哲郎と昭和の悲劇』小堀桂一郎著2017年

近現代史を知識人の精神の変容に視点を置いてかかれた書籍である。 何故、私がこの本を読む事になったのか? 3つの理由がある。 1.近現代史への関心 ー 日本と太平洋の関係を知るには第一次世界大戦が欠かせないし(実は天佑丸の航海などもっと前から関係…

「日本は誰と戦ったのか」ー コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ 江崎道朗著(2)

まさか太平洋島嶼国からゾルゲに繋がるとは思わなかった。 正直、ソ連、ロシアの事は関心も知識ない。関心があるのはチャイコフスキーやハチャトリアンの音楽くらい。 江崎道朗著「日本は誰と戦ったのか」ー コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ で、…

「日本は誰と戦ったのか」ー コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ 江崎道朗著(1)

江崎道朗氏の本を出すスピードがすごい。 スピードが上がれば内容は薄くなると思うにだが、どんどん濃くなっていく感じだ。 自分用のメモとして、3回に分けて読書感想を書いておきたい。 「日本は誰と戦ったのか」ー コミンテルンの秘密工作を追及するアメ…

「日本人が知らない最先端の「世界史」」 福井義高著

近現代史を学ぶ上で必読書、ではないだろうか。 人気のようで延長できず返却期限が来たので、超特急で読んだ。本当はこれも線を引きながら付箋をつけながらじっくり読みたい本である。 そして何よりも歴史を専門としない私などにもわかりやすいように書いて…

『プロパガンダ教本』エドワード・バーネイズ著

『プロパガンダ教本』エドワード・バーネイズ著。中田安彦訳。 成甲書房。(2010年) 前から気になっていた本である。 なーんだ、という感想と共に、アメリカはすごい、とも思った。 まずはこの本、訳者前書きと後書きを先に読むべき。 広告屋のバーネイズが、…

「インテリジェンスの20世紀 情報史から見た国際政治」中西輝政・小谷賢著

これも『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(江崎道朗著、PHP, 2017)か、関連の江崎氏のコメントで取り上げられていた書籍である。 『インテリジェンスの20世紀 情報史から見た国際政治』(中西輝政・小谷賢著、2007年、千倉書房)。 雑誌Will11月号の、中西…

祖母が受けた大正自由教育

wikiから 手塚岸衛先生 『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(江崎道朗著、PHP, 2017)に大正の自由教育の事が出てくる。 今の自分を形成している重要な要素がこの大正自由教育である。反応せずにはいられない。 私の祖母は、自由教育の第一人者、手塚岸衛先…

『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』江崎道朗著

私が近現代史を全く知らない事を反省したのは、ミクロネシアと日本の関係を理解するには第一次世界大戦前後ははずせない、と今更のように思い返した事と、2015年の天皇陛下のお言葉を知ったからである。 天皇陛下のご感想(新年に当たり) 「満州事変に始ま…

『時間の政治学』永井陽之助著

太平洋島嶼国を仕事にすることになって、体系的に学びたいと1997年に青学にいらした渡辺昭夫先生の門を叩いたところ、ボーナスが。 国際政治学者、永井陽之助先生のゼミに参加する事ができたのである。 そして永井先生の小国論を初めて知って、それは宝箱を…

『ハワイに渡った海賊達』(2007年、堀雅昭著、弦書房)

「ハワイの漁業開祖は瀬戸の海賊!」 と2つのブログをあげたが、『ハワイに渡った海賊達』の返却日が過ぎていたので、慌てて後半分を読み終えた。 筆者の堀雅昭さんは学者ではなく、山口大学理学部を卒業後、一度製薬会社研究の職につかれたようだが、辞め…

『ヤルタとポツダムと私』長尾龍一著

『カール・シュミットの死』という長尾龍一教授の本を手に取ったところ、表題のテーマは沢山ある小論やエッセイの一つで、長尾教授と満州の関係を知る『ヤルタとポツダムと私』エッセイも収録されていた。 後藤新平が開発した満州の最後にいた、日本人の一人…

渡邉昭夫編著『21世紀を創るー大平正芳の政治的遺産を継いで』PHP研究所, 2016

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-83131-2 年賀に渡辺昭夫先生から「白鳥の歌」のリストをいただいた。 渡辺先生が一作ごとにswan’s songのつもりで書かれた作品の一つが『21世紀を創るー大平正芳の政治的遺産を継いで』(PHP研究所…

LAと片岡義男

今年、始めてLAを訪ねた。古い友人の住む西海岸。 マリブビーチやサンタバーバラなど有名な美しい海岸の町も訪ねた。 ちょうどトランプ政権の移民問題が重なりカリフォルニアが違法移民の州である事を背景に感じながら。 そしてスターウォーズのレイア姫を演…

『日本の立ち位置がわかる国際情勢のレッスン』谷口智彦著

以前このブログに書いたチャゴス諸島の海洋保護区の事が知りたくて、谷口 智彦氏が書かれた「北京が欲しがる「真珠の首飾り」と「龍のトンボ」A String of Pearls; Dragon’s Dragonfly」が収録されている、『日本の立ち位置がわかる国際情勢のレッスン』を購…

『京都の一級品ー東山巡礼ー』竹山道雄(昭和40年新潮社)

竹山道雄の『昭和の精神史』を探していた時に見つけた本。 京都と奈良を案内した本である。 気持ちの余裕がある時に読もうと図書館で借りたのだが、余裕なんかいつまで経ってもできずに返却日が来たので一度返す事にした。もう本は買わないことしている。(…

『国家神道とは何だったのか』 葦津珍彦著

日文研が主催した反日、反安倍集会、とでも呼びたいあの経験がなければ、オークランド大学のマーク・マリン教授の発表、政治的プロパガンダ発言を聞かなければ「国家神道」について読む機会はなかったであろう。 人生何が幸いするかわからない。 早速調べて…

読みたい本リスト(自分用のメモ)

自分用のメモです。 一冊の本を読むと、参考図書として数冊読みたくなる本が出て来る。FBにメモしておいてもどこに書いたかわからなくなるので、自分用のメモとしてここにリストアップしておきたい。 国際海峡 坂元茂樹著 条約法の理論と実際 坂元茂樹 新体…