やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

アーミテージとナイに伝えたいこと

 あのアーミテージが、日米合同上陸作戦訓練をマーシャル諸島やパラオでやろうと、言っているとのこと。

 早速、「文芸春秋」2011年2月号を購入。

 

 「あの」としたのは、2006年キャンベラを訪ねたアーミテージは「南太平洋なんかアメリカは知らないし、知る気もない。オーストラリアに任せるよ。」と豪語していたからである。

 それを証明するように、冷戦後は、米国と自由連合を締結するミクロネシア3国でさえ、その海洋安全保障を豪州に任せていたのである。

 

 過去のブログで紹介した通り、グアムの軍事基盤強化を進める米国は、自由連合協定を結ぶ、即ち軍事的アクセスが可能なミクロネシア3国の港湾、空港等のインフラ整備を急ピッチで進めている。ミクロネシアの国民のため、というより米軍が使用するためである。

  グアム基地開発はグアムだけでなく、マリアナ諸島始めミクロネシア地域全体の経済、社会に大きな期待と不安を抱かせている。

 

 それにしても「日米合同上陸作戦訓練」なんて、島の人の存在や感情を全く無視した発言だ。

 日米合同でまずやるべきは、ペリリュー島やマッキンタラワ等の不発弾処理と遺骨収集である。誰も反対しないはずだ。

 

 文芸春秋2月号には「中国とこれから正義の話をしよう」という大型企画が組まれており、アーミテージ発言はその中の一つ。他に三笠宮崇仁親王の「日中不戦の誓い」や坂東玉三郎の「私には米国より中国が似合う」という日中関係の重要性を説いた文章も入っており、バランスの取れた内容で面白い。

 特に崇仁親王の日中の比較、関係の観察や指摘は興味深い。

「日本の政治は、昼間、役所の机の上の公文書の活字から生まれ、中国の政治は、夜間、私邸の机の上の麻雀の牌から生まれる。」

 軍部が「危険文書」に指定。焼却処分され半世紀行方不明であった文書だそうだ。

  二千年の日中関係。敵か味方か、好きか嫌いか等のレベルでは語れない。アメリカに、アーミテージやナイにとやかく言わるレベルではない、と思うようになった。