やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

日本の水産行政

どうまとめてよいかわからないので、まだメモです。

日本の遠洋漁業が日米の摩擦を招き、200カイリ制定のきっかけになったこと。即ち漁業資源が海洋管理につながる。

日本の海洋外交の中でも水産分野が突出していること。(環境、安全保障は?)

PACOMもRANも海洋安全保障イコール違法操業取り締まり、という方向に収斂されていること。

水産省設置を提案した戦後の政治家(この人叔父さん)

下記の箇所が(下線は私)なんか重要なのではないか、と素人の直感。

「しかしながら、同じく報告書第二章において指摘されておりますごとく、日本漁業は過去において国際関係を無視し、ために幾多の問題を生ぜしめたことによりまして、遺憾ながら日本漁業に対する世界の眼は確かに猜疑的であり、同情も薄いのでありまして、これを緩和しない限り、日本漁業の国際復帰はおそらく不可能であるのみならず、講和條約に際して、むしろ封じ手を打たれぬとも限らないことをおそれるものであります。」

第006回国会 本会議 第15号 昭和二十四年十一月二十四日(木曜日)より

○小高熹郎君 私は水産省設置への意見を開陳いたします。

 本年四月上旬より五月にかけまして、約四週間にわたり、米国陸軍省並びに国務省よりの推薦と同時に、総司令部マツカーサー元帥の招聘に応じ、米国漁業使節団として、水産業界を代表する一流人物ともいうべきエドワード・アレン、フレデリツク・バンディー、ドーナルド・ローカーの三氏が来朝いたされ、各地の漁業状態をつぶさに調査し、わが国水産業に対する十分なる検討と、あわせて将来対する警告とを與えられましたことは、日本水産業界にとりまして大きな收獲であり、右三氏に対しまして衷心より敬意をささげるものであります。

 そもそも総合令部の対日漁業政策につきましては、従来種々の機会におきまして、公式にあるいは非公式に、諸種の発表がなされておるのでありますが、しかもなお、その政策の中心が那辺に存ずるかは、その点総司令部といたしましても、これを端的に表明し、あるいは宣伝することを避けていられたように見受けられるのでありまして、従つて、わが国一般の水産人も、当然十分な認識が得られなかつたように思われたのであります。しかるに、このたびの漁業使節団の報告によりまして、その点がきわめて明瞭に語られる機会を得たのであります。

 すなわち、報告書第二章「占領政策の目標」の中にうたわれている通り、日本水産業の復興は、ポツダム宣言より見て当然であり、食糧問題解決のためにもまた緊要である、この意味において、総司令部が、健全なる民主主義的機構に基く最大限度の増産を目ざす重要産業の一つとして水産業の振興を促進しつつあるということは、けだし当然のことと言うべきである、という趣旨を明らかにされておるのでもあります。もちろん総司令部といたしましては、日本産業の復興についてきわめて真劍であり、特に漁業部におきましては、一日も早く日本の水産業を世界の舞台へ復帰せしめようとして誠心誠意考えておられるのでありまして、先般漁区拡張を許されました一事について見ましても、その好意は十分くみとることができると思うのであります。

 しかしながら、同じく報告書第二章において指摘されておりますごとく、日本漁業は過去において国際関係を無視し、ために幾多の問題を生ぜしめたことによりまして、遺憾ながら日本漁業に対する世界の眼は確かに猜疑的であり、同情も薄いのでありまして、これを緩和しない限り、日本漁業の国際復帰はおそらく不可能であるのみならず、講和條約に際して、むしろ封じ手を打たれぬとも限らないことをおそれるものであります。

 しからば、それを緩和するにはどうすればよろしいのか。そこに、使節団の、いわゆる日本の水産業を資源保護政策に立脚した近代的企業たらしめることが、最大緊急事となつて来るのであります。しかしながら、ここに一考を要しますことは、いかに近代的企業化を叫び、新体制の確立を念願するといえども、現実の問題といたしまして、行政組織の完備せざる限り、單なる机上の一プランとして終らざるを得ないことを、深く憂慮するものであります。ここにおきまして、私は顧みてわが国水産行政の現状を思うとき、農林省の一外局にすぎざる現水産庁の機構をもつてしては、とうてい日本漁業をして国際場裡に活躍するの段階に至らしむることは望み得ないと信ずるのであります。すなわち、現在における水産庁は、当然同庁に所属すべきであると思われる重要事項が、他省または他局に隷属しておりますがゆえに、水産業者はもとより、官庁部内においてすら、はなはだしく不便とされておる状態でありまして、今これらの複雑煩瑣にわたる行政面につきまして、一応具体的検討を試みてみたいと思うのであります。

 まず第一に、漁船の造修及び資材の割当計画に関しましては運輸省海運総局所管のため、とかく漁業の実態から遊離し、徹底敏速を欠く結果となつております。また一方船舶検査については、同じ運輸省とはいえ、海上保安庁の所管に属し、しかもこの検査は主として船舶の安全性に対する検査ということで、はたして漁業に適するやいなやは第二義的の感があるのでありまして、これらはよろしく一本にとりまとめ、資材の割当計画は、経済安定本部において一般船舶と分離して行い、また配給事務あるいは遺留検査は水産庁において行うことが適正妥当であると思考されるのであります。

 第二に、漁網製造工場の管理は、繊維工業部門のゆえに通商産業省に属するのでありますが、そのほとんどが漁網專門工場であり、漁業家とは密接なる関係にある点よりいたしまして、これまた需要官庁たる水産庁の管轄に移し、漁業技術の進展とともに、資材面の向上をもはかるべきであろうと思うのであります。

 第三に、船員の労働関係におきましては、船員法の適用を受ける三十トン以上の乗組員については運輸省の管轄であり、なお船員保険は厚生省、海技免状は海上保安庁であり、さらに一般的には労働省が監督する等、その所管はきわめて多岐にわたり、しかも十五万船員のために船員法が考慮されておるのにもかかわらず、六十万漁業労働者のためには何らの用意もなされていないというこの事実は、要するに漁業の実態、漁業労働の特殊性を認識しない証左であると断ぜざるを得ないのであります。

 第四といたしましては、水産輸出品の検査は貿易庁において行うに対し、カン詰については食糧管理局の所管でありまして、これまた実情に即した水産庁に移管し、生産状態に即応する加工計画を樹立せしむべきであります。

 第五に、冷蔵業は主として製氷冷凍事業に附帯して営まれ、保蔵貨物の約七〇%が水産物であるにもかかわらず、倉庫業の適用を受けるという形式的な理由をもつて運輸省の所管に属するということは、水産物の集荷配給もしくは統制上、きわめて不合理であると思われるのであります。

 第六に、金融面におきましては、その種類に応じ、それぞれ、農林中央金庫を初め食糧庁、通商産業省運輸省、あるいは貿易庁等に分割取扱いを受けており、この点、業者にとつてはまことに不便この上もないことでありまして、これらはよろしく一元化せしめ、むしろ水産庁内に、水産金融経済の実態に即応する金融課ともいうべき部門を設置すべきであると思うのであります。

 以上、現在における水産行政機構の煩雑さと不合理性とを指摘いたした次第でありますが、かかる現状を見るにつけても、ひとしお痛切に感ぜられますことは、この水産国たる日本において、真に水産を代表すべき独立機関が、何ゆえに設けられないのであろうかということであります。はたせるかな、米国漁業使節団は、その報告書中、第四章第三節におきまして、水産省の設立をはつきりと勧告されておるのであります。いわく、「中央政府の漁業行政は、農林省の一局から庁へ昇格された。しかし、日本に対する漁業の重要性を考えるとき、日本に水産省のないのは意外である。国際問題を取扱うには、内閣において位置を占めることが最も有利であろう。」と述べ、さらに「本使節団は、緊密に接触した水産庁の人々には非常に好感を持つたが、同時に水産庁立法権が明らかに制限されていることが印象づけられた。もし、それが省であるならば、これらの人々は、全国的並びに府県別両面の漁業活動を調整する点で、はるかに有力になるであろう。」と述べられておられるのであります。

 私は先般、水産常任委員の一人として、業業法案継続審議のため全国各地に出張いたしましたが、その際、各地の輿論がことごとく水産省の独立を熱望しておりました実情にかんがみ、この際政府はすみやかに水産省を設置し、水産行政面の合理化をはかり、米国漁業使節団の好意ある勧告にこたうべきであると信じ、この点政府に対し強く要望いたしまして、私の討議を終わりたいと思います。

http://kokkai.sugawarataku.net/giin/hhr00532.html