やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

日本とPNG - エネルギー安全保障と人間の安全保障

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液化天然ガスを日本に運ぶSpirit of Hela Helaはこの天然ガスが採掘されるHela州が由来と思われる
<オニール首相来日> 来月7月に安倍総理が訪問を予定しているパプアニューギニア。 日本のメディアも流石に本腰を入れて追っているであろう、と思っていたが、現在来日中のオニール首相の記事が見当たらない。当方が見逃しているだけかもしれないが、現地からのニュースがあったので簡単にメモだけしておく。 5月25日液化天然ガスを積んだ第1船 ‘Spirit of Hela’ (伊藤忠商事株式会社と株式会社商船三井が保有)ポートモレスビーを出発。6月2日、その船を迎えるべくオニール首相が来日している。オニール首相は現地でもその船に乗船し、今また日本の到着したその船を見に来たのである。6月4日には東京電力富津発電所を訪れた。 <天然ガス開発とPNGの経済的独立> それほどまでに日本との天然ガスの開発はパプアニューギニアにとって大事業なのであろう。 1975年の独立以来、経済的独立の兆しが、始めて見えてきた、ということではないであろうか? しかも独立を支援したのが日本であり、笹川良一氏であったったのと同様に、この天然ガスも日本の支援である。 <豪州が迎える難局> パプアニューギニアこそ、豪州(旧英国)がドイツを追いだし、多くの犠牲を払って日本の侵略から守り獲得した念願の地であったのだ。しかし、その豪州のパプアニューギニア政策は難局を迎えている。戦後、豪州による長年のパプアニューギニア支援(ポスト植民地支配の見方も?)の結果がブーゲンビルの内戦であり、マヌス島の難民問題である。国連開発指数では1975年の77位から今年156位に墜落している。 豪州政府は最大のODA(年間500億円前後)をパプアニューギニアに拠出して来た。 <日本のエネルギー安全保障とPNGの人間の安全保障> 世界を見渡すと鉱山資源のあるところに内戦や虐殺、奴隷などの悲劇がある。日本の消費者が構造的暴力の加害者とならないためにもパプアニューギニアの様子を見ていく事はこれからさらに重要と思われる。 そしてこのエネルギー問題。水産行政に並んで複雑怪奇、ハイポリティックスのようだ。わからないながらも、この天然ガス開発の動きが、パプアニューギニアに留まらずメラネシア全体の、そして太平洋全体の地域枠組みを揺る動かしているようなので、引き続き注視していきたい。