やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パナマペーパーと太平洋島嶼国(2)

<メキシコの麻薬王、ロシア最大の税金不正行為に手を貸すキーウィ>

太平洋の楽園の島に蔓延るタックスヘブン。

悪いのはサモアでもニウエでもないんです。税金逃れをしたい、英国、豪州、NZのお金持ち達。

タックスヘブンの資料を見ていると意外とニュージーランド人(キーウィ)が出て来るのだ。

今回もパナマペーパーと太平洋島嶼国のキーワードで探して見つけたのが、ニュージーランド人のビジネスマンGeoffrey Taylor (下記写真)。

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下記のシドニーモーニングへラルドの記事によると、パナマサモア等にある会社の269の株主が豪州のゴールドコーストにあるたった4つの会社に関連しそれがGeoffrey Taylorの息子の家族によって運営されている。Geoffrey Taylor ー メキシコの麻薬王、ロシア最大の税金不正行為に、合法的に手を貸した男。

Panama Papers: ATO investigating more than 800 Australian clients of Mossack Fonseca

April 4, 2016、Neil Chenoweth

http://www.smh.com.au/business/banking-and-finance/panama-papers-ato-investigating-more-than-800-australian-clients-of-mossack-fonseca-20160403-gnxgu8.html

<事実は小説よりも奇なり。キーウィはメキシコの麻薬王より上手?>

パナマペーパーの問題が単なる租税逃れでない事は、このブログの読者はご存知と思うが、下記のGerard Ryle氏の記事は改めてその犯罪の大きさを、小国が主権の名の下に展開する世界的犯罪を教えてくれる。

2009年12月11日ソビエト空軍機が北朝鮮からイランに運送された際、途中バンコックに給油のため着陸。石油掘削機の部品を運送しているとの申請だったが、警察が見つけたのが30トンに登る "explosives, rocket-propelled grenades and components for surface-to-air missiles"だった。

この3ヶ月後、メキシコの麻薬王が史上最大のマネーロンダリングをしていた事を米国司法が明かした。そしてロシアの税金不正行為。

これらの事件の背景にはペーパーカンパニー(Shell company)に関与するGeoffrey Taylorとその家族がいたのである!事実は小説よりも奇なり。

"Inside the shell: drugs, arms and tax scams"

May 15, 2011

Gerard Ryle - deputy editor of The Canberra Times.

http://www.smh.com.au/national/inside-the-shell-drugs-arms-and-tax-scams-20110514-1enkz.html

震源は西オーストラリアのハットリバー公国>

Geoffrey Taylorとは何者か?上記のGerard Ryle氏の記事はまだ続く。

教授、公爵、外交官、等々カラフルなタイトルを持つGeoffrey Taylor。

米国のタックスヘブン、デラウエア州に自ら設立した大学から博士号を取得している。

Geoffrey Taylorのタックスヘブンに関する知識と経験は、バヌアツで培われたものである。(ああ、バヌアツ!と私は叫ばずにはいられない!)

Geoffreyの妻 Priscila Lustre Taylorは、「貴社の信用を高めるために英国の階級をもった人物を理事にしませんか?」と手紙を出している。

英国の貴族様、Lord of the Manor of StubbingtonこそGeoffrey Taylorであった。英国貴族階級、お金で買えるそうだ。

それだけではない!バヌアツ時代のGeoffrey Taylorに信用を与えたのは人口30人の西オーストラリアにあるハットリバー公国であった。Geoffrey Taylorはハットリバー公国の爵位で外交的ポジションを確立したのである。ハットリバー公国の宗主にして小麦粉農家のLeonard Casley氏は、現在Geoffrey Taylorのあらゆるポジションを剥奪している。(でも、もう手遅れだよね。イヤ、Casley氏も仲間だったりして。。)

パナマペーパーの問題点>

租税回避は、別のブログで書いたが、元々は英国の租税管理と旧植民地独立のための正当な手段であった。しかし、その性格から世界のあらゆる犯罪の温床を生み出す結果となっている。

税金が逃げる、というだけのレベルではない。タックスヘブン制度を利用した国際犯罪は太平洋島嶼国を観ていると、吐き気がするほど、山程出て来るのだ。

悪いのはサモアでもニウエでもなかったんです。でも今は島嶼国のリーダー達がその仕組みを、旨味を充分知り尽くしている、と言えよう。

次回は「民族の自決」「独立」「自立」という美名の下のタックスヘブン制度について書きたいと思います。海洋保護にもこの話がつながってきます。