やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

メガ海洋保護区批判ーPierre Leenhardt

メガ海洋保護区に批判的学術論3本目は下記の「メガ海洋保護区は保護のため?地政学のため?」(意訳)というタイトルの記事である。2013年にOcean & Coastal Managementという雑誌に掲載。執筆者はPierre Leenhardt始め5名で、みなさん南フランスの地中海に面するUniversity of Perpignanに所属(当時)。

Leenhardt, P., et al., The rise of large-scale marine protected areas: Conservation or geopolitics?, Ocean & Coastal Management (2013), http://dx.doi.org/10.1016/j.ocecoaman.2013.08.013

メガ海洋保護区が2004年から2012年の間に10も出来ているが、科学的裏付けも、管理方法も明確でない「張子の虎」Paper Parkと批判。メガ海洋保護区の多くが太平洋に形成されていることも指摘している。

興味深いのはメガ海洋保護区制定が国家主権の確保につながっている、との指摘である。

即ち、EEZを保護区に制定する事で(実際になんの保護も管理もしていなくても)その権利と義務を示せる、というのだ。沿岸国の影響は、principle of adjecntry もしくは coastal privilage という。この沿岸国の影響はEEZを越え公海にまでも及でいる。其の例が presential sea thoery を活用したチリ、ブラジルの例であるという。(これはいくつか論文が出ているので後で読みたい)

さらにこの論文で興味深いのは海洋保護区が先住民の権利につながっている事を議論している点だ。

例に出て来るのは、ハワイやニュージーランドの先住民の話である。ニュージーランドでは先住民マオリに漁業権が認められており、海洋保護区が彼らの伝統的権利に結びつけられて議論される。ハワイのメガ海洋保護区管理には科学的知識とハワイ先住民の伝統的知識がいっしょに盛り込まれている。

先住民の伝統的知識との関連の議論では、公海の魚、マグロ、鯨などが、象徴的、トーテム的存在として語られており、遠洋や公海の管理保護についても先住民の権利が浮き彫りになってきている。

パラオの例がまさにこれであろう。BULという伝統的な海洋管理がメガ海洋保護区制定に利用されていた。BULは本来沿岸管理の概念で現在のEEZにまでは及んでいない。伝統的価値観をメガ海洋保護区に利用しようとすることに対しパラオ国内から批判的な意見が出ていたのを何度か目にした記憶がある。

もう一点気になったのは、フランスのメガ海洋保護区の動きである。フランスの70%のEEZが太平洋にあり、海洋保護区制定に積極的だ。背景には2006年にNatural Marine Park法が制定され、海洋保護区局も同時に設置。100,000㎢に満たないが、8つの大きな海洋保護区が制定された、という。フランスは現在太平洋の仏領に海洋保護区を積極的に制定している。