やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(1)

同志社大学、坂元茂樹教授からご教示いただいた学術書である。

タカクてムズカしい!専門過ぎて図書館になかったので7人分の伊藤公とお別れしました。 

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年

 同書にある「第3部海洋生物多様性と海洋保護区」についてわからないなりに何回にまとめてみたい。

 

  海洋保護区とは何か?田中先生は下記のようにまとめている。

 

「海洋保護区(Marine Protected Areas: 以下、MPAという)」は、海洋の特定の区域において設定され、そこにおける人間の活動をさまざまに規制しようとするものである。MPAが設定される理由、ないしは、設定する必要があると主張されている理由は,海域によって異なるが、海洋の生物資源、生物多様性、生態系あるいは海洋環境それ自体を保護するという目的が、MPA設定の基礎に共通にある。(同書、247頁) 

 この後田中論文はMPAの多様性、米国と豪州、そしてIUCNの例を紹介し、MPAの定義が多様でその数さえ確認するのは難しい事が指摘されいる。

 そしてMPAが国の領域外に設定される世界的な動き(BBNJの事か)と国際法の意義が検討される。

 昨日のIUCNの哲学を思い出す。即ち何の為の保護か?という事だ。IUCNは保護しなければならない状態は歓迎ではない、即ち人間と自然が共存する状態を望んでいるのではないか?

 何の為の保護か、保護の必要性(科学的根拠)そして、IUCNが最初に提案しブルントランド委員会に引き継がれた(金子「国際自然保護連合とワシントン条約 : 条約の運用に関するIUCN声明文の紹介」2014)「持続的開発」という概念はないように見える。

 

以前ブログでアマルティア・センの「持続可能な開発」に関する議論も思い出した。

yashinominews.hatenablog.com