やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

英国外交使節再開設の意義・意味

先週、ロンドンで開催された英連邦会議で発表された9カ国の英国外交使節開設に関して、Cleo Paskal女史のコメントが出た。

一つは豪州ローウィ研究所から。

Britain’s new Pacific presence

24 April 2018

https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/are-uk-s-new-diplomatic-posts-game-changer

もうひつはサンデーガーディアンから。

India can learn from UK’s low cost, high impact geopolitics

April 21, 2018

https://www.sundayguardianlive.com/opinion/india-can-learn-uks-low-cost-high-impact-geopolitics

2つの記事の要点をまとめたい。

パスカル先生手厳しい。

まずは豪州ニュージーランドの対太平洋島嶼国支援は自国経済に利するだけで、島嶼国の利益にならない。それどころか国内の安全保障の問題を引き起こしている。そのためそこに中国が入り込む。

バヌアツの中国の軍港計画は否定されたがデュアルユーズ ー 軍民共用の可能性があるし、それはサモア、トンガも同様だ。ここでパスカル先生はトリプルユーズ ー 即ち中国の軍民+犯罪の可能性もあると手厳しい。中国は国内の犯罪まで輸出している。(その通りだよ。)

それでは太平洋の裏にある英国は何ができるのか? 一つは intelligence and strategic analysis ー インテリジェンスと戦略的分析。そしてバイの支援。しかも近視的でない、長期の安定した支援。

今までEUとして行っていたからね。バイで行うこことで英国にとっても十数国の票が得られるわけだ。そしてチャールズ皇太子は環境派だ。(これは止めてほしい)

即ち英国の関与は、みんなの利益になる。中国を抜かして。。。

次はガーディアンの記事。

今回の9つの英国外交使節開設の動きは、EU離脱後の初めての英国の世界的における地位を示したことになる。

9カ国はアフリカ、カリビアン、オセアニア、に位置する小国ばかりだが、地政学的に重要だ。それに英連邦メンバー国で共通の価値観がある。(言語とか)

この内3カ国(Lesotho, Swaziland and Tonga)は王室があり英王室との関係も深い。

カリブのAntigua and Barbudaには中国を含め4つしか外交使節がなかった。(Brazil, Cuba, Venezuela and China)

冷戦終結後、英国は小国への関与を薄めた。そこに中国が入ってきたわけである。小国の票は安く手に入るし皮肉なことに経済的利益は大きいことを中国は知っている。

そして現在カナダ、インドは太平洋島嶼国の外交情報をオーストラリア、ニュージーランドに頼っているが、今後は英国に頼るようになるであろう。

「環境派」チャールズ皇太子以外はパスカル先生に賛成だ。

オーストラリア、ニュージーランドは太平洋島嶼国のことよく知っているし、よくやっていると思うのだが、この2カ国自体が世界の中でそれほど力(情報、経済、軍事)を持っているわけではない。

英国の力を私はまだわからないが、あの歌が蘇る。

"Rule, Britannia! rule the waves: Britons never will be slaves."