やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

30億円の基金を任されて(3)

笹川平和財団の仕事は自分でゼロから作り上げたので非常に楽しかった。

しかし財団の組織的な不正・腐敗にはあらゆる形で苦しめられた。

経理の山田という男性が、よく業務中に油を売りに来た。

「誰それは毒団子を食べた。誰それは毒団子を食べた。お前も食べろ。」

毒団子の意味は最初わからなかったが、不正・腐敗につながるお金なのだろう。経理にいればわかるのかもしれない。「自分一人で良い子ぶってるんじゃない。」そんな風に聞こえて気が狂いそうだったのを覚えている。無視するしかなかった。

総務部長はもっと明確に不正を私に伝えた。これも業務時間中にわざわざ私の席まで来て話された事だ。

「幹部が米国で行った不正の証拠となる書類全てのコピーを持っている。これを君に全部渡すからメディアに公表してほしい。自分は男で養う家族がいる。君は女で結婚すれば食って行けるじゃないか。」

財団幹部の不正、と総務部長の思考回路。同じくらいに気が狂いそうになる情報であった。勿論無視した。

普通こういう情報があれば組織の中で誰かしらに報告できるのだろうが、どこまで不正と腐敗が浸透しているのか、私にはわからなかったのだ。島嶼基金は自分一人で運営するある意味「聖域」だったので、最低限しか関わる必要はなかった。

国交相審議官だった羽生次郎前笹川平和財団会長からよく言われたのは「早川さんは協調性がない」だった。協調するわけないじゃないか。こんな不正・腐敗の輩たちと。

その羽生さんが「あの笹川良一像は数千万円払ったんだよ。」と聞いていもいないのに教えてくれたことがある。

「その数千万円はどこから出たのですか?」

羽生さんは顔色を変えて、急に黙ってしまった。

誰かが個人的に出したのであろうか?財団の予算でそんな費用が出るはずがない。