やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

<エスパー国防長官パラオ入り真相4>大統領からの手紙

f:id:yashinominews:20200911082252j:plain

エスパー国防長官のパラオ入りは知る人ぞ知る情報だったが、その準備がどのレベルでいつからされていたのか?

一つの参考資料がエスパーの数時間滞在中にレメンゲサウ大統領から渡された手紙である。相当練って、法律家のアドバイスを受けながら書いたものであろう。その内容がBBCのニュースになっており、これを読めと某国当局から連絡をもらった。

米国同様、パラオも大統領の権限が大きい。もし国交を台湾から中国に変えるのであれば、それは大統領の判断、決断になる。その大統領からの手紙である。しかもエスパーに手渡された、という。

ここにレメンゲサウ大統領は米国の軍事プレゼンスを要請したのだ。さらに米国沿岸警備隊による海洋監視の要請。レ大統領は手紙の中で、現在の米国との自由連合協定を応用し、米軍の定期的(「恒久的」ではない)な存在(regular US military presence)が必要、協定にある米国の防衛施設利用の権利はフルに利用されてこなかった、とまで述べている。

冷戦時代はあったのだ。というよりパラオの独立は1994年なので、冷戦終結後の独立である。

この要請書が書かれた背景を想像すれば、相当なやり取りが米パラオのトップ間で、それも極秘に行われたのであろうことが想像できる。

ここでのキーパーソンは今年2月に任命された米国のJohn Hennessey-Niland大使であろう。

f:id:yashinominews:20200916060010j:plain

下記の米国政府のウェブには2014年から2017年までハワイのキャンプ・スミスで米海兵隊太平洋軍の外交政策顧問(POLAD)の経歴もある。実は太平洋島嶼国の政治はかなりハイポリティクスなのだ。彼が宣言している写真の右の人物が現国務次官補(東アジア・太平洋担当)デイヴィッド・スティルウェル。元空軍である。すなわち日本の外務省にあたる米国務省は、少なくともインド太平洋、もしくは西太平洋に関しては軍が影響力を持っている、ということだ。これが、私が日本も防衛省のインド太平洋への関与を強めよ、提案する根拠の一つである。

Ambassador John Hennessey-Niland | U.S. Embassy in the Republic of Palau

 

問題は米国の軍事的プレゼンスを要請したレメンゲサウ政権は来年初頭に任期が終了することだ。11月に大統領選挙がある。中共への鞍替えを明言している現副大統領兼法務大臣のオイロー氏が立候補している。その対抗馬がスランゲル・ジュニア氏である。