やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

密約ではないミクロネシアにおける基地拡張

密約ではないミクロネシアにおける基地拡張

 グアムの基地拡張に伴って空港、港湾の整備がグアムだけでなく、全ミクロネシア地域で進められている。こんなことは先刻承知の話なのかもしれないが、自分には目から鱗であった。沖縄の基地問題は立ち位置を変えてみる必要がある。

 当該地域に対する日本のODA基金の支援も、米国の動きを見ながら戦略を練る必要があるだろう。なにせ日本のODAと比べても1、2桁違う。

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第13回ミクロネシア首長サミットが6月23~25日、サイパンで開催された。

Joint Guam Program office, Executive Director, John Jackson氏と米国国防省からGary Kuwabara (Office of Economic Adjustment, Western Regional Director)が招かれ、基地拡張の状況と地元への影響等、発表。

 Jackson氏はアジアの安全保障を米国が担っていく上で、米領でありまた自由連合協定締結国があるミクロネシアは戦略的に重要であることを強調。

 グアムだけでは訓練の場所が足りないため、海兵隊200人が訓練できる場所としてテニアンが既に計画されている。また北マリアナ諸島のPagan島(48㎢)の調査も進んでいる。

 グアムの基地拡張は同島のインフラ、道路、港湾が改善されるだけではない。ミクロネシア全ての港湾を改修する計画があり既に調査が進んでいる。ミクロネシアの人々のため、というより米軍が使用する可能性があるからだ。

 本件をFSMのイティマイ運輸通信大臣に確認してみた。米国によるインフラ整備支援は自由連合協定に当初から入っているが、強化され始めたのは9.11以降。同協定には米軍が必要とする際はFSM政府の許可を得た上でこれらのインフラが使用できる、とも書かれている。「ノーとは言えませんよね。」と聞くと「外交問題になるでしょう。」との返事であった。密約ではなく公約だ。

 FAA-連邦航空局は2000―2009年、約10億ドル($1B)の予算を得てミクロネシア地域の空港改修を実施してきた。現在連邦議会ヒアリングではMicroensian Airport Eligibilityが2012年まで延期される可能性が協議されている。

 ここでも強調されたのが5月に発表された米国家安全保障戦略にもあった、Civil-military coordination, whole government approachだ。

 日系クワバラ氏の発表では同氏がコロラドの僻地出身であることから始まった。この導入は意義深い。基地が民間に与えるさまざまな経済的利益についての説明であった。

 両氏の発表に続いて。グアムのカマチョ知事から「基地拡長に伴う多くのプロミスは多くのチャレンジである。」また「事情は日々変わるのでそれに対応する持続的努力が必要」と政治家っぽいコメント。

 CNMIのフィティアル知事から沖縄の基地が海外に出る可能性がまだあるのか?との問いに「ない」と明確な回答がJGPOからあった。Marine Aviation Logisticsの3要素は恒常的な共同訓練が必要で常に同じ場所にある必要があり、普天間海兵隊だけが出るということはあり得ない、との説明あった。

 続いてコンチネンタルミクロネシアのチャールズ・ダンカン社長からの発表があった。基地拡大に伴う人口の増加と労働者の搬送によって航空機の利用者は2014年には現在の8倍のなることが予想される。日本からパラオ、グアム、ロタ島、ポナペ等への直行便を含め、域内および域内から米国本土、フィリピン等をつなぐ線の増便も決定。さらにディスカウントシートが増設される、とのこと。

 グアムの基地拡張はミクロネシアの人々の足にも大きな変化をもたらすことになる。

(文責:早川理恵子)