やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミクロネシアの3大統領サミットvs9首長サミット

<ミクロネシアの3大統領サミットvs9首長サミット>

 

 現在ミクロネシアの地域協力を促進する機関としてミクロネシア3カ国大統領サミット(Micronesia Chief Executive Summit: MCES)と9首長サミット(Micronesia Presidential Summit: MPS)がある。前者は年2回、後者は年1回開催されている。

 MCESはMPSの補助的集まりではない。MPSがミクロネシアの3つの独立国から成るのに対し、MCESは米領の北マリアナとグアム、そしてミクロネシア連邦の4州の知事が参加する集まりである。

 この2つの違いは大まかに言えば、後者は州と領土が含まれているので国レベルの決定はできないが(例えばニウエ条約やナウル条約)、米領グアム、サイパンが参加しているので資金と人材があり各種事業を前に進めることができる。

 2001年、パラオのナカムラ大統領のイニシアチブで始まった首長会議は紆余曲折を経て、現在の形に落ち着いた。

 

 今回個人的に興味を持ったMCESのテーマソングはミクロネシア連邦の国歌であった。もともとこの9つの政治単位は一つの国家として独立するシナリオがあった。その際に作られた国歌なので、現在のFSMの国歌を借りてきた、という話でない。逆に本来歌われる人々の元に戻ってきた、という話である。

 

 このミクロネシアの地域協力に笹川太平洋島嶼国基金の第2次ガイドラインが一役かっていることは繰り返し述べさせていただいている。同ガイドラインは二代目基金運営委員長渡辺昭夫先生が中心となって策定した。

 

 第2次ガイドラインにはミクロネシア重視とはあるが地域協力を促進するとは書かなかった。私も渡辺先生も、ミクロネシア3国、グアム、北マリアナが協力関係を構築することが有効であると思っても、各島の歴史的社会的背景から外部者が口を出すことではない、という暗黙の理解があった、と思う。だからガイドラインにある「域内の調和」というのはミクロネシア重視と言いつつもポリネシア、メラネシア地域への配慮も忘れませんよ、という「太平洋域内」の意味で書いた。

 

 このことは少々長くなるが下記のラポートの主張が説明してくれるので百瀬宏著『小国』(p.266)にあった文を引用しておく。

 

ラポートらは、「極小国家」の大部分が、国家の機能と言う観点からして合理性を欠いており、低開発状態に導くさまざまなハンディキャップを持っていることを認めている。だが、ラポートらは、だからと言ってこれら「極小国家」同士の統合や連邦を外側から強いるのは得策ではない、と述べている。かつての国民国家すらがヨーロッパ共同体への結集による繁栄を図っている時代に、「極小国」が結合することは理論的に利益なはずであるが、ヨーロッパの「極小国」が長い時間をかけてより大きな単位に結びついて行ったのとは異なり、大部分の「極小国」は、そもそも無関係であった植民国家に支配され変形されたすえにようやく解放された地域であって、そこに生まれた自己主張がいかに「非現実的に、あるいは馬鹿げて」見えようと、「極小国」は「遅滞と試練と錯誤」をおかしながら結合の道を見いだしていく以外に方途はなく、「開明な国際世論」が過剰な注文をすることは「公正でも現実的でもない」

 

(文責:早川理恵子)