やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

津波被害の片鱗

緊急医療をしている知り合いのお医者さんからのメールです。

救急指導医が400人、というのは多いのか少ないのか。

少なくとも今回の被害には少ないのでしょう。

現場で支援されている方々の安全を祈念します。

固有名詞はイニシャルにさせていただきました。

早川

 = = =

関係各位

お友達の皆様

 皆様には、ご健勝のことと存じ上げます。

3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」で被災された皆さまにお見舞い申し上げます。

 所属している救急医学から災害要員を航空関連の施設に派遣し、帰還した医師よりの口頭での報告を受け、以下、津波の現状を勝手に(私的)分析しました。 

一般に災害(自然災害、人災など種類によりその比は違うが)では、被害者が100名の場合、10名が救助を要する様な負傷者、1名が死亡と言う比率を救急医は出動時に頭に描く。 ところが、今回の確率密度は、生存者と死亡者は、ALL or NONEで、シャープに分かれている。 生存者:死亡者が50%:50%という比率とでも言う感じである。

 

1.津波の特徴

インドネシア沖の津波

砂と海水であったため津波にのまれても比較的生存者が散見された。

一方、今回の東北沖では、材木やコンクリートを巻き込んでおり、局所への加重圧が極めて高く(10から30m程度の滝壺に転落した様な、大きな加速度を受けた損傷)、生存が皆無に近い。これは日本家屋を伴なう津波の大きな特徴なのかもしれない。

2.偶発的低体温症

仮に海水が引いて生存していても、当日の夜の気温は氷点下近くであり、数時間で偶発的低体温症に陥っていると考える。偶発的低体温症を救命することは、PDD(Post Disaster Day) DAY1の早朝に限られ(気温が上がる前に処置しなければ生還できない)、ICUクラスの設備と医師10名を要し、災害地での救助は事実上不可能である。

以上、若手の派遣医師からの話を基に私的に推測した内容である。

東北地方太平洋沖地震で被災された皆さまにお見舞い上げます。

T大学救命救急医学

日本救急医学会救急指導医(突然ですが、本当です 日本に400名ぐらいしか居ません)

KN 拝

追伸:福島原子力発電所の事故は、3マール島の事件どころではなく、チェルノブイリの10倍くらいの放射線の拡散量と推定されます。 老兵、もそろそろ出番を覚悟しております。