やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

第2回日・フィリピン海洋協議の開催

搭乗予定の飛行機がエンジントラブルで機体を変更する必要からオークランド空港で足止め。

興味深いニュースを見つけた。

第2回日・フィリピン海洋協議の開催 外務省のプレスリリース

日本側参加者が気になる。

”日本側から,金杉憲治外務省南部アジア部参事官のほか,外務省,内閣官房総合海洋政策本部事務局,防衛省及び海上保安庁の関係者” (上記プレスリリースから)

内閣官房と海保が入っている。当たり前だけどよかった。

一回目の協議は2011年9月に開催されている。こちらも内閣官房と海保が入っている。

”特別な友情の絆で結ばれた隣国間の「戦略的パートナーシップ」の包括的推進に関する日・フィリピン共同声明”

海洋関係の部分を下記に抜粋する。

(海洋分野における協力)

 両首脳は、日本国及びフィリピン共和国海上交通路を共有する海洋国家であり、海洋分野における二国間協力を強化することの必要性を改めて確認した。両首脳は、ソマリア沖における海賊が海上の安全保障及び海洋航行の安全に対する重大な脅威であるとの認識を共有した。アキノ大統領は、ソマリア沖を定期運航している船に乗船しているフィリピン人船員にも裨益するとして、ソマリア沖に派遣された日本国の自衛隊及び同乗の海上保安官による護衛活動に謝意を表明した。また、両首脳は、アジアの海賊対策においてアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)が果たしてきた重要な役割を歓迎した。

 両首脳は、2011年9月9日に開催された第1回日・フィリピン海洋協議を歓迎し、相互の同意に基づいたフィリピン沿岸警備隊(PCG)の訓練を目的とした日本国海上保安庁巡視船のフィリピン共和国への派遣やフィリピン沿岸警備隊の能力向上支援などを通じて両国の海上保安機関間の協力及び連携を強化していくことで一致した。また、両首脳は、日本国海上幕僚長及びフィリピン共和国海軍司令官の相互訪問の実施、海上自衛隊艦隊のフィリピン共和国への寄港、日本国海上自衛隊フィリピン共和国海軍幕僚協議の実施など、両国の防衛当局間の交流及び協力を推進していくことで一致した。

海上の安全保障)

 アキノ大統領は、紛争の対処及び解決並びに協力の促進のためのルールに基づく体制の必要性を強調するとともに、「南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)」及び南シナ海をめぐる海事紛争の平和的解決に対するコミットメントを確認した。両首脳は、DOCの履行のためのガイドラインが採択されたことを歓迎し、確立された国際法規に合致する形で法的拘束力のある行動規範(COC)が早期に策定されることに希望を表明した。

 両首脳は、世界とアジア太平洋とを結ぶ南シナ海は極めて重要であり、この海域における平和及び安定は国際社会の共通の関心事項であることを確認した。また、両首脳は、海上交通路を共有する国家の指導者として、航行の自由、円滑な商業活動並びに国連海洋法条約及び紛争の平和的解決を始めとする確立された国際法規の遵守が両国及び地域全体の利益にかなうことを確認するとともに、これらの同じ利益が南シナ海においても促進され、守られるべきであるとの認識を共有した。

抜粋終わりー

書こう書こうと思っていたのだが、年末に外務省からこのブログを見て問い合わせがあった。上記の件に関連する。巡視艇供与をODAでできないか、「戦略的ODA」政策の一環で検討しているという。

面談前に、寺島常務、羽生会長に留意すべき点を伺ったところ、ご両人ともこのような動きはご存じないという。巡視艇供与、海洋安全保障の国際協力と言えば日本財団海上保安庁国交省である。ヒアリングに来た方にも伺ったが、日本財団、海保、国交省とは協議していない、という。驚愕の事実。

「ウソだろ」と思わずつぶやいた。

過去40年、マラッカシンガポール海上安全保障分野で国際協力を推進したには日本ではほぼ日本財団だけなのである。私は4年前に日本財団の海野常務からいただいたパワーポイント資料を今でも説明材料として使用している。日本財団が拠出した金額は約130億円。日本政府は10億円程度。

巡視艇供与の、海洋安全保障分野での国際協力の実績と経験があるのは日本財団海上保安庁なのだ。外務省は何をしているのか!これだと戦略なき「戦略的ODA」だ。

ヒアリングに来た方に、「とにかく日本財団海上保安庁と協議する事が必要です。」と強調した。

フィリピンは日本財団笹川平和財団海上保安事業を進めているミクロネシアと海域を共有している。フィリピンもしくは近隣諸国の違法操業、人身売買、麻薬密輸等、領海紛争以外にも多くの、共通課題が山積みだ。