やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

日本ーバヌアツー中国を結ぶ仮想通貨犯罪(4)パスポート販売

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Vanuatu Immigration: Moving to Vanuatu with VRP MENA

イメージ写真を探していたら見つけたバヌアツのパスポート、市民権売買のサイト。レバノンにある!

 

 太平洋島嶼国の特徴的な収入源としてsovereignty business - 主権ビジネス、がある。特徴的なのがパスポート販売だ。他にインターネットのドメイン名や北朝鮮の瀬取船にも加担した「便宜置籍船」船の国籍、旗を貸すビジネスなどもある。

 パスポート販売を大々的に、しかもスキャンダラスに始めたのはトンガ王国である。1970年、長らく英国の保護領であったトンガは英連邦に留まりながらも独立した。

 2分弱のビデオがリンクされている下記のニュースが一番わかりやすいように思う。トンガがパスポート販売を始めたのが80年代。やっぱり国家運営をやって行けなくなったのと怪しい人物が世界中から集まった。名誉総領事だった笹川良一氏もその一人かもしれない。(船舶振興会も笹川平和財団も誰もトンガのことを知らないし、振興会の国際部長だった船越さんという方から紹介された人は怪しい活動をしていると、これは民博の須藤教授から教えていただいたのだった。)

 パスポート一冊400万円位でフィリピンのマルコス夫妻を含む7千人に販売したという。しかも王様のビジネスとして、だ。さらに王様はBank of Ameria (米国、というのが肝心)に投資し、そのお金は「消えた」という。

 もう一度書こう。「消えた」 どこに?そりゃあケイマン島かバハマか。。

 さらに、最近になっても外交パスポート中国の麻薬販売人に売っているとも。

www.stuff.co.nz

 トンガに比べらたバヌアツなんて可愛いもの?

 バヌアツデイリーポストの最近の記事を3つ、まとめてみよう。

 

 2019年7月2日の記事。伝統的首長の声としてパスポート販売は国家アイデンティティを売るもので、政府が国家予算確保をしようとしている立場はわかるが、中止しよう、と。(普通の感覚だよね)

Reconsider Sale of Passport: Malvatumauri | News | dailypost.vu

 

 2019年6月20日、事件が発覚する1週間前の記事。2017年に立ち上がったパスポート販売ビジネスは中国人を中心に4000冊が売れた。経済政策議員委員会は規制を強め、バヌアツに投資をしてくれる人に発行すべきであり、海外での販売ではなく国内ですべきだ、と。(香港に首相と関係のあるエージェントがあると、現地で耳にしました。)

4,000 Passports Sold | News | dailypost.vu

 

 そしてこれは今年4月29日にでたダン編集長の特集。2019年1月だけでVT1.3 billion (13億円だと思うが自信がない)の収益をパスポート販売で得ており、これは予想よりはるかに大きい収益である。また中国の国籍法では2重国籍は禁止されているが罰則がないのだそうだ。さすが中国!国際法だけでなく国内法も平気で紙くず扱いだ。

 ただし中国からバヌアツの旅行者は年間4千人弱で、パスポートを購入した中国人が行くのはヨーロッパである。現在バヌアツ政府が抱える債務は危険レベルで2020年移行に返済が始まる。(中国の債務の罠か?)

dailypost.vu

 ここでバヌアツの基本情報を書いておこう。1980年に独立したバヌアツは113の言語と82の島からなる。「後発開発途上国」という途上国の中でも社会経済開発が遅れていた。そのとによって様々な特恵もあったが、今度晴れて「後発」が外れることに。他の開発指標でバヌアツは世界で一番幸せ国にも選ばれたことがある。

 そんなバヌアツのパスポートビジネスが今回の中国人犯罪者を招いてしまったのも事実だ。

 

 国名、バヌアツは バヌア=土地 ツ=私たちの 

 バヌアツに関する詳細は早川理恵子博士の博論、5章がオススメです。ロシアから550回、米国から484回ダウンロードされています。

https://ourarchive.otago.ac.nz/handle/10523/7139