『京都 影の権力者たち』読売新聞京都総局
講談社 1994年
本との出会いは、人のそれと同じように様々である。
この本との出会いは不思議な巡り合わせだった。
昨年暮れに京都の錦を歩いていたら、脇道の喫茶店の前に本が山高く積まれていたのを見つけ横に逸れた。「ご自由に御持ち帰りください。店主」とあった。
その中から2冊、いただいて行くことに。その一冊が『京都 影の権力者たち』である。
京都はよそ者に冷たい、京都人は口と腹が違う、と読んだり聞いたりしていた。しかも「腹はどす黒い、でっせ。」と他所から来た京都在住の方々は一様に口を揃える。観光地「古都」とのイメージとは相当かけ離れた風景だが、何やら思い当たる事も無きにしも非ず。
この本はそんなオモテからは見えない京都の一面を教えてくれる。
公家さん、茶人、花街関係者、僧侶、室町の商人を対象に書いているのだが、相手が相手だけに筆が鈍っているようにも思う。書けない事実も多々あるのだろうな、と想像しつつ読むのも面白い。
京都ではこれらの影の権力者たちを書く事はタブーなのだそうだ。そのタブーにあえて挑んだ本である。
遊女を愛し、悪党をも組織した天皇の歴史は京都に滞在すると至るところで感じる。この本を読むと現在も文化、経済、宗教、政治、遊美の世界も巻き込んだ巨大利権集団を組織しているようにも見える。皇室の私有財産についても、私は何も知らない。
地球の裏側では清教徒革命で殺され、弾圧され、復活した英国の国王(娘のご先祖様でもある。)の存在がある。これとの比較も面白いかもしれない。