豪州、ローウィ研究所からニューカレドニアの独立問題を扱ったレポートが5月8日に出た。ニューカレドニアで開催される学会参加があるので読もうと思って印刷しておいたが一昨日やっと読めた。
こちらはサマリー
こちらに全文があります。
筆者のデニス・フィッシャー女史。豪州の元外交官だ。フランス語使い。大使も数カ国経験している。昨年末ケンブリッジ大学で開催された学会で声をかけてもらい、ランチを一緒にしたのだ。
私が会議中に「自決権、植民、そういう言葉を再定義、もしくは議論すべきでは?」と質問したからだ。学会なのに、単なる活動場所だった。愕然とした。
ランチタイムの時にデニスさんから「あなた面白い事言うわね。お昼一緒にしない?」と誘っていただいたのである。
ニューカレドニアの隣の豪州でさえその状況を把握していなく、彼女はオーストラリア国立大学にも席をおいて調査・研究を進めてる。
さて、肝心のレポートだ。
30年の平和協定、ヌーメア協定が終了し、4年間の独立を問う住民投票が行われる。将来のガバナンスがどうなるのか、そして豪州の国益とどう関係するか、をlocal とregionalの視点で分析しようとする画期的な内容だ。
このレポートが出た5月8日の4日後、5月12日にも地域の選挙があった。独立派がかろうじてマジョリティ(28対26)を維持したとのこと。背景には経済の悪化、安全保障の脆弱性、格差の拡大、ニッケル工場の問題、と課題山積みのようだ。(って30年間なにしてたの?)
以下、フィッシャー女史のレポートから気になる部分を拾ってみた。()は私のつぶやきです。
・ニューカレドニアの独立お動きは当然隣の仏領ポリネシアにも影響を与える。そして中国の影響も見逃せない。
・国民投票プロセスで重要なのが、豊富な資源の分配である。
・SPC - 太平洋共同体事務局がヌーメアに残ったのは、1971年に設立された太平洋諸島フォーラムがニューカレドニアの独立を支持したからである。そしてバヌアツにあるメラネシア諸国のサブリジョナル組織、Melanesian Spearhead Group. (しかしPIF もMSGも組織的問題を常に抱えている。特に後者は。)
・1988年6月に署名された協定を巡って、カナク(先住民)の指導者チバウが独立派から暗殺されている。
・カナクは天然資源の51%を要求ているが、フランスは34%しか与えていない。他方中国、韓国が開発する鉱山は51%を与えている。
・国民投票プロセスでの大きな失敗は青年問題である。地方のカナクは厳しいフランス式教育についていけずドロップアウトが多い。カナクの人材が全く育っていない。
・前回の国民投票は独立反対派56.7%、独立派43.3%であった。カナクの青年人口がどんどん増えるので、今後2年間の投票に影響を与える。
・人口構成 カナク39%、ヨーロッパ人27%、ワリス8%、タヒチ2%、バヌアツ1%
・フランスの立場として安保理事会メンバーであり、EUの指導者であり、そして世界第二位のEEZを保有する国家としてgloabl possessionの価値を維持したい、
・防衛協力では米豪NZ仏のクアドの枠組みと、FRANZ - 仏豪NZの枠組みがありニューカレドニアは太平洋軍事拠点であると同時に科学研究の拠点でもある。(ニューカレドニアを海洋科学研究所の拠点にすれば良いのだ。日米仏で。あ、豪州とニュージーランドも忘れずに。)
・地域の動きにできなるのがバヌアツ、仏領ポリネシアの独立派リーダーたちのネットワークである。
・パプアニューギニアのブーゲンビル島の独立の動きにもリンクしている。
・西パプアを巡ってMSGのパプアニューギニアとフィジーはインドネシア寄り、すなわち独立支持しない立場。
・これらの動きに日本は注意深い。(そりゃあ、過去の経緯とフランスや豪州の貪欲さを見てきたもん。これら2つの国の格差を見よ!モリソン、アーダーン首相の給料は安倍総理より高いぞ!)
・ニューカレドニアと仏領ポリネシアはPIFの正式メンバーになったものの、フランスからの地域援助金は年間80億円に留まっている。豪州は1300億円(豪州の援助金はほとんどオーストラリア人の人件費とか箱物費でタイド、だったはず)
・フィシャー女史の結論は30年の協定が終わって今非常に不安定になっている。
・その要素は近隣のメラネシア諸国の動きと連動
・もちろん、中国の影響もある。
・国連は独立に前向きに影響を与えている。(赤い国連!)
・ニューカレドニアの動きそしてそれに関連するメラネシア諸国、中国の動きを豪州の国益と関連させ見ていく必要がある。(メラネシアの不安定を招いているのは豪州の下手な外交、支援のせいである。努力はされているのだが。)
このレポート、かなり情報と分析がリッチである。まとめきれない。そしてデニスさん、さすが元外交官。豪州の国益を考えた論調だ。
BBCの日本語の記事もありました。