やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「鞍馬の蛇」

  あかねさす 紫の行き 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る

  紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに 我恋ひめやも

「鞍馬の蛇」

 ゴールデンウィーク、世界的なタロイモ研究の権威M博士の家族と鞍馬へ行った。奥様も植物学者で、これが芹、山葵、クレソン、白い花の方が食べらるイチゴで黄色いのは食べられない、と詳しく教えていただいた。男どもと子供達はフリスビーで遊び、女は草摘み。

 ああ、白州正子に書いてあった「狩り」だ、と思った。昔「狩り」とは女は薬草を摘み、男は鹿狩りをすることだったという。鹿も肝を薬にする。

 山葵の葉と茎を摘んでいただき「熱湯に通すと酵素が反応し辛みと香りが増すのよ。」と、現代の草狩りは科学的だ。昔であれば「熱湯に通して邪気払いして食む。」とでも説明されたかもしれない。これも呪術的意味があった。

 珍しいものを見た。草摘みの最中、蛇がモグラを絞め殺しているのを発見。真夏のような暑い日だった。植物学者の奥様は「蛇は暖かい所に出て来るのよ。」とこれも科学的な説明をいただき納得したが、何かの神託ではなかろうか?

  夏日さす 鞍馬山にて 草摘むも 袖振る君なく 蛇が尾を振る (島女)