やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

環インド洋連合7カ国は荒野の7人か? - オーストラリアのインド洋政策 (2)

環インド洋連合7カ国は荒野の7人か? - オーストラリアのインド洋政策 (2)

 

前回のブログに早速コメントを”メール”でいただきました。

大変面白いので私一人で独占するのはもったいなく、掲載させていただきます。

但しご本人の了解をまだ確認していないので、お名前は伏せておきます。

 

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 スミス外相の演説に少しコメントを付け加えておきましょう。

・スミス外相自身がPerth選出で、インド洋はウェスタンオーストラリア州にとって重要な戦略的意味を持つ。

・ことにPerthの海軍基地は、潜水艦の基地でもある。

・環インド洋連合構想など、1994年にEvans外相が始め、政権交代後Downerが全労働党政権はインド洋を軽視してきたとして、当時南アの国際社会復帰とインドの経済テイクオフを契機に、音頭を取ったものの、1998年のインドの核実験でポシャったと思っていたところ、どっこい続けるだけ続けていた。因みに当時環インド洋連合に集まった最初の7カ国はThe Magnificent Seven、つまり荒野の7人と言われていた。私たちは、これを文字って、荒野の7人は3人しか生き残らない、とおちゃらけていた。予想は当然、豪印南ア。冗談はさておき、豪の特徴である、一度こうした絆を立ち上げるとそう簡単には廃止しない癖は、こんなとき効いてくるんですね。日豪経済合同委員会など1963年からまだ毎年続いていますよ。

 

 もう一つ耳寄りな情報。4月のSmithのAustralian Institute of International Affairs SA支部へのペーパーでは、豪の国際政策の方向性として、比較的高い位置にスリランカの民主化や人道支援が出てきます。これは恐らくスリランカから増えているタミル系ボートピープル対策も念頭に入れてのことだと思いますが、「真珠の首飾り」の一角への牽制=印へのサービスのような気もします。インドとスリランカ、お互いクリケットの仲でしょう、もう少し仲良くしなさいよ。といった感じ。

 もう一つ。2月の日豪関係に関するSmith演説では、何と珍しく日本の対南太平洋援助をわざわざ評価しています。日本がより有機的にSPacへの支援に関与できる態勢を模索中とのことです。

 ここんところRuddは内政に忙しく、あれだけ言っていたNPTレビュー会議も鳩山ともどもすっぽかし、外交に関する演説は、4月にANU中国センターと国家安全保障センターを2日連続で立ち上げたときの2本だけです。ここでも、AIIIAでのSmith演説と同様、アジア太平洋共同体を見据えた豪にとって大切な国を、ASEANコアに、米中日韓印NZ豪ロと規定しています。そこでは、南太平洋は外された、というよりも一層豪とあとNZの責任守備範囲、という意識が鮮明です。APCとは一歩置いた南太平洋での協調に、日本もどうぞ参加してください、というのが2月のSmith演説の味噌だと思うんだけどなあ。渡邉先生が昨年のオーストラリア学会20周年記念大会で、マクレーン大使を基調講演に招いた際に、南太平洋めぐる日豪協力の可能性について質問していたし、私たちもちょこちょこ南太平洋とここ数年言ってきたから、ここで私が動かしている笹川財団のような具体的動きがしかも持続的にあると、キャンベラも心強いのでしょう。