やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

マリファナで生き延びる玉砕の島 ― ペリリュー

マリファナで生き延びる玉砕の島 ― ペリリュー

 このブログを始めて、「南の島の楽園」のイメージをガタガタに壊しているようで後ろめたい。観光が主産業の太平洋島嶼国に方々にいつか殺されるのではないか、とビクビクしている。

 久しぶりにペリリューを訪ねた。前回は1999年、故田淵会長と故三塚議員に同行させていただいた。今回は笹川会長とナカムラ元大統領に同行させていただいた。

 ペリリューでマリファナが作られているとか、犯罪関係者が出入りしているとか噂では聞いていた。今回現地で手にした新聞にはペリリューでマリファナが数百株見つかったことが書かれていたので、いよいよ本当であった、と複雑な心境になった。

 小さい島国では、大統領、政治家、警察官であろうと、イヤ、逆に権力を持つ身分の方が、大きな犯罪に手を染めている可能性が否定できず、おいそれと口には出せない雰囲気がある。

 ところが、インターネットのせいか、米国のセキュリティが厳しくなったせいか、このような犯罪もオープンになりつつあるようだ。ナカムラ元大統領から聞いた話も衝撃的だった。

 ペリリューは日本財団が20年ほど前に寄贈した「日本丸」が唯一の定期船であったが、故障でしばらく使えなかった。人口は一時の千人から500人に減り、産業はほとんどない。マリファナが唯一の収入源で摘発してもいたちごっこである。最近の調査では小学生の半分がマリファナを経験していることがわかった。

 日本兵と米兵約2万人が亡くなった玉砕の島は、約1ヶ月戦いで島の南半分が破壊尽くされた。米軍の侵略に備え、島民は全てコロールに移動させ、犠牲者はいない、というが、日米の戦争で島を破壊された島民が犠牲者であることに代わりはない。

 マリファナ以外にペリリューが生き延びる道はないのであろうか?

(文責:早川理恵子)