やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島国の離島問題

島国の離島問題

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ソンソロール州とトビ州の州旗 カワイイ!

有人離島を800余り有する経済大国日本。

そんな日本でさえ費用対効果の視点から、離島の支援はなおざりである。

しかも本土から、より遠方で、より人口や土地が少ない、即ち経済効果が低い離島ほど、支援の手は遠のく。

そんな離島に住んでいるのが悪い、と平気で言う政策研究者も数少なくない。

経済大国の日本でさえこんな状況である。

途上国の太平洋島嶼国の離島は推して知るべし。

首都のある島でさえその経済開発がおぼつかないのに、国家内のユニバーサルサービス、あまねく平等な支援などできる余裕はない。

パラオ出張で、元大統領補佐官のクアルテイ氏と3日間多くのディスカッションをした。その中にパラオの離島問題があった。

米国の自由連合協定の資金150ミリオンドル、約140億円で本島バベルダオブの各村々ととコロールが道路でつながった。90年代半ばの話だ。通称コンパクトロード。

この恩恵に与れなかったのが離島からなる5つの州。

ペリリュー、アンガウル、カヤンゲル、そしてソンソロール、とハトホベイ(通称トビ)。

この5州の中のペリリュー、アンガウル、カヤンゲル州は本島バベルダオブ、もしくはコロールから船で1、2時間程度。よって人口も順に700、300、200と多い。

パラオの総人口は約2万。その内約1万3千が中心地のコロール州に、約3千が空港近くのアイライ州に。即ち残りの約4千人が14の州に分散している。よってペリリューの700人という数字は第3位。

後者のソンソロール、ハトホベイ州はコロールから南西に300キロ、500キロの位置にありインドネシアの方が近い。

人口は100人、40人とウィキにあるが、みんなコロールに来ており実際は10人程度、と聞いた。

通信はSPCが置いて行ったRICSという衛星通信システムをPNCCが運営している。笹川太平洋島嶼基金が支援したHFシステムもまだある。

このインドネシアに近いパラオの領海で365日、密漁が行われている。多分密漁だけではないはずだ。

こんな離島は放っておけ、という政治家もパラオにはいるそうだ。しかし、離島は護らねばならない。なぜか。離島が住みにくくなると、その人口はコロールにやってくる。コロールも土地が少ない。ソンソロール、トビの離島出身者はコロールで固まって住んでいる。

典型的な島国の問題である。

今回ナカムラ元大統領ともお話をする機会をいただいた。

教育と医療が整えば、島に帰っていくはず、とナカムラ大統領は言う。

パラオ、バヌアツ、キリバス

具体的な数字をあげて説明できないが、この3カ国は太平洋島嶼国の中でも「自律性」が高い、と認識している。島担当25年の経験から、である。

共通点があった。 離島を大事にする島国。

バランサーの感覚が優れているリーダーがいる国だ。

パラオのの人口統計等、現地では手に入らなかった。

2005年SPCから出ている資料があったのでリンクしておく。

http://www.spc.int/prism/country/pw/stats/PalauStats/Publication/2005CENSUS.pdf