この春発行されたThe Contemporary Pacific(Volume 23, Number 1, Spring 2011), Micronesia In Reviewのマーシャル編を、多少解説を加えながらまとめました。
マーシャル諸島が自治権を獲得以来30年の歴史上、初めて不信任決議で大統領を辞任に追い込んだ政治的混乱の後に誕生したゼドケア政権。
息つく暇なく、1ヶ月後に迫るコペンハーゲン気候変動会議が待っていた。
トメイン大統領の不信任案投票真っ最中に、太平洋島嶼国の政府地域機関であるSPREP(南太平洋地域環境計画)が主催し、太平洋の14の国と地域を集めた会議が首都マジュロで開催されていた。3日間の会議のテーマは海面上昇、グリーンガス排出、そしてこれらの太平洋島嶼国への影響である。
この会議に中で、唯一参加者の目を覚ますような発言をしたのが南太平洋大学のナン教授である。2100年にはマーシャル諸島、キリバス、ツバル、モルジブなどの環礁からなる国は人が住めなくなるであろう。これに対処するには少なくとも2050年までには全人口が移民できるような計画が必要である、という主張。
コペンハーゲン会議には12人というマーシャル諸島政府にしては大きな代表団を送る事ができた。しかしながらシルク外務大臣が述べた通り、会議は多数の国が参加し、多数の議案が協議され、島嶼国にとっては“困難”な状況であった。結果「非拘束的コペンハーゲン協定」の採択にしか至らなかった事は周知の通りである。
さて、コペンハーゲンの落胆にも拘らずゼドケア政権は少なくとも一つの外交的勝利を上げることができた。
2010年3月22日の台湾馬総統の訪問を受けたことである。台湾総統の訪問はこれで2回目。最初は5年前の陳総統の訪問だ。
馬総統はたった5時間の滞在ではあったが、両国の特別な関係を繰り返し強調すると共にマーシャル諸島で台湾が展開するボランティア眼科支援始め医療支援を強調した。
台湾総統の非常に短い訪問ではあったが、2007年のマーシャル諸島大統領選で中国支持を表明したトメイン前大統領以降懸念されていた問題が払拭された。