やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

違法操業は隠れ蓑

2012年3月30日、パラオで発生した中国の違法操業取り締まり。漁師一名がパラオ警察により射殺された他、違法操業を上空から撮影するため飛び立ったパラオ政府関係者2名とパイロット1名を乗せた飛行機が行方不明となった。

この逮捕劇、パラオでは未だに語り継がれているようである。噂に尾ひれエヒレをつきものだ。慎重にならなければならないが、今回のパラオ出張で、複数の公的機関のトップからこの事件に関する「謎の真相」を聞かされた。

両者とも当方から聞いてもいないのに、堰を切るように話していただいた。よっぽどの事であったのであろう。

この手の情報は裏が取れないし、勿論情報源は明かせないので、あくまでご参考まで。

 

「あれは漁船ではないと思う。小さな漁船にエンジンが3つも付いていた。それに漁船なら安いファイバーで十分なのに、アルミでできていたの。アルミ船は強いのよ。パラオの警備艇にぶつかってきた。それでパラオ警察は発砲した。それに母船は自ら爆破し沈めてしまった。証拠隠しが必要だった訳。それに、捕まった漁師を迎えに来たのは、中国政府のチャーター便だったの。普通だったら漁船の親会社が迎えに来るのよ。」

「違法操業ではないとすると?」

「スパイか麻薬か、、」

 

「捕まった漁師はみんな色が白かったんだ。新聞にパラオ人と並んで載っていたのでよくわかったよ。漁師ならパラオ人に負けない位真っ黒に日焼けしている。しかも違法操業の場所は北部。パラオ北部は、中国の大型投資話も最近あった地域。海底資源の開発が検討されている様子もある。この地域の大陸棚は日本の沖ノ鳥島にもつながっており日本の資源問題にもつながる。今回の違法操業は隠れ蓑で海洋、海底資源調査のスパイミッションではないか、と思う。」

漁船は違法操業だけではなく、ありとあらゆる越境犯罪に関わっている事はよく知られている。犯罪に関わっているのは中国、フィリピン、インドネシアの漁船だそうである。今回の中国の違法操業は国家によるスパイ犯罪の可能性もあるようだ。

 

今年9月57艘の米国海軍船籍がWCPFCの公海取り締まり船に登録された。(沿岸警備艇は19隻)こちらは違法操業取り締まりを隠れ蓑にした、海洋監視であろう。

知らぬは日本ばかりなりなんて事はないと思うが、当方は全くの初耳だったので裏が取れていない情報ではあるものの、掲載しておきたい。