やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

有名無実の海洋保護地区

パラオに関するブログ、なかなか筆が置けません。

一昨年、クリントン長官が発表した「太平洋の世紀」。巷ではほとんど報じられなくなりましたが、太平洋で仕事をしていると米国のプレゼンスをジンワリ、ジックリ感じます。

レメンゲサウ大統領が今月発表した全EEZの商業漁業禁止地区制定計画、アメリカが大きく反応しています。もしかしたら背景にアメリカがいたのかもしれません。

当方はパラオ海域が重要であるとこの事業が始まった時から主張していましたが、今回のパラオ出張で、あのキーティング司令官も同様な事を強調していたと知り、やっぱり一度会って協議しなきゃならん、と勝手な妄想を抱きました。

中国が言う第二列島線。島を言える人はいますか?

グアムーヤップーパラオ  です。

パラオ、ヤップ海域はパプアニューギニアインドネシア、フィリピンに接しテロも含め非常に警備が必要とされているのに、手薄なところです。

このパラオが全EEZを商業漁業禁止地区に制定する、というこは漁業資源保護以上の意味があると官考えています。米国沿岸警備隊も、海軍もNOAAもハワイ大学も大きく反応しました。私は普段こういう方達と情報交換をしています。

それで海洋監視に関して協議したいので会いたい、と連絡をいただき来週お会いする事になりました。「テクニカルな事、私わかりませんが」と言ったのですが、説明するから時間を調整しろ、と強気です。

PACOMが強化されつつあるハワイは、ビリオン単位の予算が動いているようです。大学、ビジネス、政府とあらゆるステークホルダーが一丸となって太平洋の海洋監視技術の可能性を検討しているらしい。

NOAAの知人からはこれを読んでおけ、と送っていただいた雑誌サイエンスの記事が非常に面白かったので簡単にまとめます。たった2頁なので英語が苦でない方はどうぞ。

Giant Marine Reserves Pose Vast Challenges

Science MArch 5, 2013

Science-2013-Pala-640-1-1 のコピー .pdf

レメンゲサウ大統領が発表した「メガ商業漁業禁止地区」。なんと元祖はアメリカでした〜。

2006年にブッシュ大統領がハワイの362,000km2を制定。

続いて2010年イギリスがインド洋のチャゴス島に640,000km2を。

そして昨年2012年オーストラリアが989,842km2のコーラルシーをメガ海洋保護区を制定しました。

これが元祖三大メガ海洋保護区で且つ商業漁業禁止区域にもなっている。

その後、キリバスクック諸島ニューカレドニアがメガ海洋保護区を続いて発表。ミクロネシア諸国もシャークサンクチャリーを表明しましたね。

しかし、最初の米英豪の三大メガ海洋保護地区をのぞいて、全て有名無実の海洋保護区なんだそうで。( ̄Д ̄;)

キリバスの大統領は408,000km2のフェニックス海洋保護区を発表し世界中から表彰されましたが、禁漁区はたった3%。表彰した団体は今頃になって驚いているそうです。(後から返せとは言えないものねエ)

トン大統領はお会いした事があります。何か事情があるのだと思いますが、当方もかなり驚きました。

だからパラオの全EEZ商業漁業禁止地区制定は正真正銘の世界初で、しかもその監視体制作りは想像を超えるチャレンジでもあるわけです。まさに日米豪の協力が必要とされている!

ブリティッシュコロンビア大学の研究者によれば、メガ海洋保護区の海洋監視は、小さな保護地区より100倍の経済効果があるそうです。実際に船や飛行機で監視するのではなく、通信を利用したより効果的な監視システムが開発されている、とのこと。

きっとこれを来週NOAAの方から聞かされるんでしょう。米国国家機密に触れない程度でこのブログでもご紹介したいと思います。(・ω・o)