やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

<エスパー国防長官パラオ入り真相5>悪法海洋保護法と大統領選

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多分これで、<エスパー国防長官パラオ入り真相>は最後とします。

現実の世界はまだ動いている。私は民間シックスアイズとしてタダ働きで引き続きインド太平洋構想を動かしています。

今回のエスパー国防長官パラオ訪問。その発言はニュース等々で隈なく拾ってきた。そして彼が触れなかった事を確認することができた。それは現政権、レメンゲサウ大統領が世界に名を馳せた「パラオ国立海洋保護法」である。これはパラオのEEZほぼ全域を商業漁業禁止地区にし沖縄の漁船を追い出す政策だ。台湾や中国の漁船も本来出ていかなければならないが法治国家でないパラオ、中国、台湾は痛くも痒くもない。「世にも珍しい」法治国家日本の漁業だけが損をする法案である。

そもそもその効果は海洋保護、水産保護と一切関係がなく、真の目的は信託基金で先細るパラオ国民の年金対策なのだ。

さすがに米国もこれを理解したのであろう。ナヴァロの発言を見ればわかる。世界最大のEEZを保有する米国はオバマ政権で世界最大の海洋保護区、即ち水産業衰退政策をとってきたが、それを180度転換させたのだ。

そう、今回のエスパー防衛長官のパラオ訪問。レメンゲサウもこの海洋保護区に一言も触れなかった。

 

<2020パラオ大統領選の争点>

今この「悪法」海洋保護区が大統領選の争点になっている。何が起こっているのか?

遠洋漁業をしたことがないパラオ漁民。今までは外国船がマグロを市場に供給してきたが、パラオ国内水産業はそれができず、沿岸の魚を今までより多く取ることとなり資源が枯渇し、生態系が破壊されているのだ!(当たり前だろう!)

よってこの法案をどうするかが4名の候補者の立場を鮮明にしている。

中間選挙の結果が出たが、それが語っているかもしれない。ダントツリードのスランゲルジュニアは廃案の方針である。中間選挙で第3位についたトリビオン候補も絵に描いた餅、と廃案を明確にしている。

 

<安倍政権の汚点アワオーシャン>

この悪法を支援しようとしたのが安倍政権だ。私は安倍政権のインド太平洋構想を支援して来たが平成30年5月に発表された第二期海洋基本計画を見て目が点になり、急いでコメントを出した経緯がある。パラオは、というか腐敗したレメンゲサウ政権は海洋保護法案をさらに飾りあげるため、「アワオーシャン」というオバマ政権時代の米国愚策会議を主催することとした。それをなんと安倍政権が支援するというのだ。安倍総理のパラオ訪問は辞任でなくなったが、よかったと思っている。せっかくのインド太平洋構想の業績がこれで崩壊したであろう。この法案、愚策というだけではなく背後に中共が控えているのだ。

 

<統一戦線が支援する海洋保護区>

気候変動や、海洋保護などの環境保護を中共が支援している動きは世界が認識していると思う(少なくともインド太平洋司令軍、ペンタゴンは)。このパラオ海洋保護法とパラオ大統領選を書いた記事がある。筆者はパラオ在住のフィリピン記者カレオン女史で私もよく知っている。水産業や海洋問題は専門ではなく(というか専門があるのだろうか)、レメンゲサウ大統領寄りの情報操作をしているジャーナリストだ。このことは若干横道に逸れるが書いておこう。

2016年のパラオ大統領選。私のところにはアノニマスの情報が次から次へと寄せられた。しかし、メディアには一切出ないのだ。そこでこの記者に聞いてみたところ以下のようなやり取りがあった。

私「レメンゲサウ大統領が台湾の違法操業見逃したそうじゃない?」

カレオン「いったい誰から聞いたの?」

私「みんなが言っているけど」

カレオン「いい?私が書かなければニュースにならないのよ。誰が言ってるのか教えて!」

つまり彼女は知っていたのだがレメンゲサウから金をもらっていたので記事にしなかったのだ、とパラオの人から聞きました。

そういうジャーナリストが書いている海洋保護区の記事。実は内容よりもその掲載先である。”China Dialogue Trust” 検索すると明らかにUnited Front, 統一戦線のようなのだ。

すなわちパラオの海洋保護の動きの背景には中共がいるということだ。それを安倍政権は支援しようとしていたわけだ。

Palau’s huge marine sanctuary at centre of election debate