やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

胡蝶の夢 ー 若きビリオネラーの悩み(その3)

縁のないと思っていたビリオネラー。

ひょんな事から、というか太平洋の海洋安全保障事業がきっかけで知り合う事となった。

本当のお金持ちはケチである。未だに一銭もくれどころか、笑顔を送るよ、とかふざけた事ばかり言う。

しかし、すごい勢いで仕事をする。土日も構わずメールや電話、スカイプで連絡がある。

こちらはボランティアなんだけど行きがかり上、対応する。

あちらとは時差がある。一度先方が早朝の時間にメールを出したらすぐに返事が来てしまった。

「今そちらはまだ6時じゃないですか?もう仕事しているんですか?」

「犬の散歩の最中だよ。」

ビリオネラーは散歩しながら仕事をするのだ。

ビリオネラーも寒いジョークを飛ばす普通のおじさんだ。しかし

「今NGOに一億円の小切手を切るから5分待ってて。」

とか言われるとやっぱり世界が違う〜と思う。

評議会は?理事会は?

個人のお金なのでそんなの必要ないのだ。それでも事後評価くらいした方がいいんじゃないか、と思うのだが。。

失礼を顧みず「節税対策ですか?」と聞いてしまった。

「資産の半分は世の中に寄付する事を発表したとたん、新聞に税金対策だ、と批判記事を書かれたよ。売名行為とかいろいろ言われるのはもう慣れたけどね。」

「お友達」となった今は、なんだかだんだん気の毒になってしまった。

お金を稼ぐ事、お金持ちになる事自体悪い事ではない。

しかし隣の芝生から始まって、他人の幸せや成功を喜ぶ人は少ないどころか批判する人の方が多い。そして収益を上げている企業や高所得者にさらなる税金をかけようとする政府。

『マネーロンダリング』以来ファンになった橘玲さんが「税をめぐる道徳と正義について」という記事を書かれている。スタジオジブリの『熱風』5月号に掲載されたもので、下記のウェッブで読める。

http://www.tachibana-akira.com/2013/06/5915

マネロン、オフショア、と言えば太平洋の島々だ。小国の国家運営に貴重な収入源でもあり政府が主導して運営している。

業務にしっかり関係している内容。

最近急にこのオフショア叩きがグローバルレベルで強化されつつつある。

税金対策でオフショアに逃げるお金。税金ではなく自ら社会活動に投入するお金。

どちらも、リバタリアンアイン・ランドの世界かな〜?ここら辺はよくわかりません。

ビリオネラー、年間所得税を300とか400億円払うと政府の使い方が気になるようである。

私なんか、外務省の松尾さんが国費を使って競争馬や愛人の豪邸を購入したと聞いても、ケシカランとは思うけど、自分の払った税金はどうせその1円にも満たないだろうから、それほど気にならない。

きっと高額の税金を払っている人達は、汚職や無駄な公共事業、いつまでたっても解決しない少数民族問題等々を見ていて歯がゆい思いをしているのかもしれない。

政府に任せるよりは自分の金を自分で使って、自分で解決したい、と思うのかもしれない。

「私ビリオネラーじゃなくてよかったです。」とわけもわからない事を思わず言ってしまった。