<違法操業の犯人は太平洋島嶼国?
最初にこの事に気づいたのは、水産庁前次長宮原正典氏の下記に引用した講演のコメントである。
「まぐろを巡る国際問題」から引用。
http://fsf.fra.affrc.go.jp/open/kiro/pdf/kouenmiyahara.pdf
「ところで、IUU、IUU と良くいいますが、一体何かというと、要は、台湾の隠蓑だったので す。台湾は非常に漁獲勢力を拡大した為に、各水域で漁獲割り当て、漁獲制限をかけられるよ うになります。そうしますと、漁獲割り当ての中だけでは非常に操業し辛い、要は財布の中の お金が足りないため、財布の外でやる操業が欲しいという事でやり出したのが、便宜置籍船に よる操業です。当初、FOC 漁業と言っていました。FOC、FOC と言うと非常に中南米諸国が抵 抗するので、IUU という言葉が 1999 年か 2000 年に出て来たのです。元々は、台湾の裏、所得 隠し用の漁業だったのです。あくまでも 2000 年の段階の推定値ですが、新しく造ったのが 120 隻ぐらい、日本で中古船となり被代船となって外に流失した船が 130 隻ぐらいありました。こ れに色んな対策をやったので、100 隻になり、さらに 25 隻ぐらいまで減ったと言われているの ですが、今年の会議では台湾政府もまだ 40~60 隻あると言っています。結局は、中々減らな かったんですね。減らなかった理由は、誤魔化す手段があったからだという事です。それが、後々出て来るロンダリングという話です。」
そしてこの件を裏付けるような表を "A short history of industrial fishing in the Pacific Islands" (Robert Gillet,2007)に見つけた。2002, 2003年に急にバヌアツの遠洋漁業船が増加している異常に多いのである。多分台湾漁船ではないだろうか?
<米国の環境団体が無視する漁業資源管理>
PEWなど、米国の環境団体はなぜこの件を取り上げないのであろうか?
この件だけではない。
先般決まった地域漁業資源管理組織によるマグロ漁獲量の半減や、小笠原諸島の珊瑚礁の問題を投げかけても反応しないのだ。
彼らが反応するのはビリオネラーの件やドローン等の最新テク、そしてサメ保護。
これら漁業資源管理に殆ど関係ない。
ここで、ピンと来たのが、環境団体の真の目的である。彼ら、本気で漁業資源を守る気なんてないのでは?
PEWでIUUを担当しているのが元USCGとか英国海軍とか。最近わかったのだが彼ら魚の事を知らない。
<ヒーロー作りと資金調達システム>
それでは彼らの真の目的は何か?
彼らの資金はどこからくるのか?ミリオネラー、ビリオネラーのお金持ちの税金対策である。
だからお金のある日本の珊瑚なんてどうでもいい。
「小笠原の珊瑚が危険にさらされている!」とキャンペーンを貼っても米国民は、ビリオネラーは関心を持たない。
もう一点はこうした環境団体に島嶼国の人々はコロッと騙される、というか担がれる事だ。
現地でPEWの悪い評判を以前から聞いていたが、なるほどと思う事が多々あった。
島の人を祭り上げて、世界をワッといわせるキャンペーンを貼って、サッといなくなるのだそうだ。
サメ保護区がいい例。
小国のリーダーが広大な海を、鯨を、イルカを守ろうと立ち上がる姿を支援するビリオネラーは世論の指示を得やすいのではないだろうか?少なくともニュースになる。
具体例を示そう。パラオのレメンゲサウ大統領がいくら違法操業廃絶を国連で叫んでも世界は無視するが、これを豪州の鉄鋼王が支援する、という話になると世界が注目するニュースになるのだ。
レッシグによれば米国では0.005%のお金のある国民が政治家を一義的に選ぶ。
例えば、科学的根拠のない巨大海洋保護区を大統領が勝手に宣言した。この政治的動きに反応したのが、悲しいかな、デカプリオ。自分の財団からオバマ大統領の宣言を支持すべく拠出することに。本件、環境団体というより政治団体のPEWが背後にいる。
ピケティによれば米国の所得格差は研究結果より実際は激しく、お金持ちがTax Havenを目指す可能性も指摘している。
例えば、太平洋の島嶼国にできた「海洋保護区基金」は合法的でしかも一見人道的な格好の税金逃れシステムかもしれない。
何よりも、米国の環境団体がこれで食っていけるのである。