やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

小島嶼国、バヌアツを破壊するのはサイクロンではなくチャイナマネーだった。

昨年3月、仙台で第3回国連防災世界会議が開催され、まさにその時バヌアツに大型サイクロンが接近。会議に参加していたバヌアツ大統領が涙を流して世界に支援を頼んでいた映像を覚えている人も多いのではないだろうか。

 

大型サイクロン「パム」は南北に延びるバヌアツの島々を嘗める様に襲い、木々を根こそぎ倒し、その被害の大きさに人々は驚いたが、同時に死者は数人で、その復興の早さは目を見張るばかり。

 

しかし、大型サイクロンにも負けないバヌアツを破壊したのは、チャイナマネーであった。

 

昨年5月、東京での会議に招聘したバヌアツの国土大臣、ラルフ•レゲンバヌ議員を待っていたのは政権転覆であった。

 

キルマン外相始め多くの味方が寝返ったのである。

新政権はチャイナマネーに近い政権。すったもんだの末、閣僚14名が汚職の罪で牢屋行きとなった。

チャイナマネーとは、手っ取り早く言えば、中国の汚職で手に入れた莫大な富を海外に逃したい人々のお金である。

老朽化するバヌアツの国際空港。世銀の支援をキャンセルして、このチャイナマネーでの建設話が復活していたのだ。

 

しかし、もう時は既に遅し。

バヌアツ空港の滑走路は安全が確認できず、ニュージーランド航空、カンタス、バージンと主要な航空会社は現在飛行を見合わせている。現在飛んでいるのはバヌアツ航空だけであろう。

観光が主要産業のバヌアツを破壊するのに、チャイナマネーほど効果的なものはない。

 

ニュージーランド航空、ポートビラ線を一時運休 滑走路の安全性懸念で

2016/01/26 Fly Teamニュース

http://flyteam.jp/news/article/59128

 

 

インドネシアでも同様な話があるようだ。

国の規模からすればインドネシアは持ちこたえるかもしれないが、バヌアツのような人口25万人で離島を多く抱える国、即ち飛行機の交通手段が重要で、しかも首都の空港が麻痺すれば、その影響は想像に難くない。

今週から選挙で大勝利した新たな議員の組閣が始まる。

 

「受注した中国の書類ずさん過ぎ… 事業契約も調印できず 「中国語だけでは評価しようもない…」」

2016.2.1 産経ニュース

http://www.sankei.com/world/news/160130/wor1601300046-n1.html

 

 

<追記>

ガーディアンがこの件に関してよくまとまったニュースを出している。

チャイナマネーの件は触れていないが。。

Major airlines suspend Vanuatu flights over airport runway concerns

http://www.theguardian.com/world/2016/jan/29/major-airlines-suspend-vanuatu-flights-over-airport-runway-concerns