やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

バヌアツの政治

5月25−26日に東京で開催された「島と海ネット」総会に参加していただいたバヌアツのレゲンバヌ国土大臣を待っていたのは、政権転覆だった。

目まぐるしく替る政変劇をどの時点まとめるか、迷っていたが、先週開催されたメラネシア•スピアヘッド•グループ(以下MSG)総会での西パプア、インドネシア問題が一つの区切り、と見て良いであろう。

まずは、今は前政権となったナツマン首相が、キルマン外相を6月初旬の更迭。

理由は、ナツマン政権が支持する西パプアのMSG加盟問題や政権への裏切りという理由。

Vanuatu reaffirms support West Papuan membership of MSG

http://www.radioaustralia.net.au/international/radio/program/pacific-beat/vanuatu-reaffirms-support-west-papuan-membership-of-msg/1457194

その後すぐに内閣不信任案が提出され、可決されてしまう。

理由はサイクロン被害対策にナツマン政権が適切な対応をしなかったから、というがこれにはレゲンバヌ議員が反論している。キルマン外相始め新政権のマジョリティが香港の移民、空港建設会社(マネロンではないか、と想像している)から賄賂を受け取りその裁判を回避するのが目的だ、ということだ。

Regenvanu rejects aid relief in Vanuatu was slow

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/276044/regenvanu-rejects-aid-relief-in-vanuatu-was-slow

そして、ナツマン首相から更迭されたのキルマン外相が新首相となった。

レゲンバヌ大臣は野党に。

まだまだ〜。

キルマン政権誕生後24時間もしない間に、野党となった前政権から内閣不信任案が提出された。

これを阻止するため、また上記の賄賂に関する裁判を無効にするため、キルマン政権は議長を交代させ、同不信任案は一度却下された。

が、これを不服とした野党が裁判所に訴え、結局同案は今週議会で採決される事となった。

"Vanuatu opposition leader to challenge no confidence decision in court"

http://www.radioaustralia.net.au/international/radio/program/pacific-beat/vanuatu-opposition-leader-to-challenge-no-confidence-decision-in-court/1459886

"Vanuatu court allows no-confidence motion to be tabled in parliament"

http://www.radioaustralia.net.au/international/radio/program/pacific-beat/vanuatu-court-allows-noconfidence-motion-to-be-tabled-in-parliament/1462478

そして先週末、ソロモン諸島で開催されたMSG総会で、オブザーバーだったインドネシアがアソシエイトメンバーに。そしてUnited Liberation Movement for West Papuaがオブザーバーとなったのである。

西パプア問題ー 以前わからないなりにブログに書かせていただいた。

西パプア問題-

http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/498

これがわからないと、メラネシア問題やMSGが中心となっているPIFの組織問題は理解できないのだ。

PIF事務局長選と西パプア問題

http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/993

簡単に話すと、今でもインドネシア警察、軍による殺害が続く西パプア問題を一貫して支援してきたのがMSGなのである。特に社会主義政府としてスタートしたバヌアツがその中心である。

今回のインドネシアのポジション昇格は、西パプアにとって吉か凶か?

報道ではインドネシア代表は、インドネシア内の5つのメラネシア地区から選ばれた代表とある。

ここら辺はまだ情報が錯綜しており、解説が出て来たら順次またまとめたい。

兎も角も ー 島と海ネット会議に参加いただいたレゲンバヌ大臣を待っていたのは、ロシアも、香港も、インドネシアも巻き込んだ、ちょっとやそこらでは理解不可能な、複雑怪奇なバヌアツ政治。そして何よりレゲンバヌ大臣が心血を注いで来た土地制度改革を覆す、政変劇だった事は間違いない。

日本では、バヌアツやメラネシアの政治も、また西パプア問題も殆ど知られていなのではないだろうか?まずこれを研究している学者もいないし、ジャーナリストも知らない。

辛うじて人権団体が把握しているようだが、冷徹な国際政治を観察する客観性に疑問が残る。

西パプアがインドネシアにとって重要な理由の一つに第二次世界大戦時に日本軍が開拓したビアク島がある。この飛行場を現在インドネシアとロシアが共同軍事基地として利用しているという。赤道近くで衛星打ち上げには格好の場所らしい。