やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

トランプ政権とミクロネシアの移民問題

トランプ政権の対ミクロネシア3カ国への対策。即ち自由連合協定を締結する3カ国がどうなるのか、気になっている。

その中でも移民の問題だ。

現在両国はある程度の条件をクリアしていれば自由に行き来できる。visa-free アクセス。

条件とはパスポートの期間や犯罪歴がない事等。

問題は、ここ数年増加するミクロネシアからの人々が路上生活をしたり、医療、教育への負担が見過ごせない程増額している事で、しばしばニュースになっていた。

下記の2月13日のラジオNZの記事ではまさにこの公共福祉予算を頼りにするミクロネシア3カ国からの移民がトランプ政権の移民対策の影響を受けるのでは?と指摘している。

Trump order could affect free associates

6:33 pm on 13 February 2017

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/324422/trump-order-could-affect-free-associates

もう一つの問題が、出産観光。Birth tourism.

下記のマリアナバラエティの記事には国家安全保障省が、国務長官マリアナ諸島知事と協議しつつ報告書をまとめる、とある。マリアナ諸島の出産観光。勿論メインは中国大陸からだ。これも数年前からニュースになっている。「米国」のマリアナ諸島で出産すれば米国市民なのだ。

Trump draft order targets aliens who are ‘public charges’

13 Feb 2017

http://www.mvariety.com/regional-news/92939-trump-draft-order-targets-aliens-who-are-public-charges

'Birth tourism' in Saipan causing headaches for USA

Zach Coleman, USA TODAY Sept. 9, 2013

http://www.usatoday.com/story/news/world/2013/09/09/chinese-tourist-births-cnmi/2784797/

最近、ミクロネシアからの移民の犯罪者を強制送還させニュースになったのがグアム。

このミクロネシア地域からの移民をグアムで受け入れる費用が、2004年時点では33ミリオンUSDだったのが2016年には142ミリオンUSDにと約5倍に跳ね上がっている。

その中でも教育、福祉の負担が大きい。2016年には7,792人のパブリックスクールの生徒がミクロネシア3カ国出身。全体の26%を占め、費用は62ミリオンUSD。

OUR VIEW: Feds must increase funding for compact-impact costs

Pacific Daily News

http://www.guampdn.com/story/opinion/editorials/2017/02/22/feds-must-increase-funding-compact-impact-costs/98237894/

GovGuam Estimates Cost Of Regional Migrants At Over $1 Billion From 2004-2016

http://www.pireport.org/articles/2017/02/21/govguam-estimates-cost-regional-migrants-over-1-billion-2004-2016

ワシントンD.C.ミクロネシア3カ国の大使館は国家安全保障省と協議を重ねているようで、在米のミクロネシアの人々に下記のような情報を提供している。即ち、米国での滞在は合法だが犯罪歴があれば送還される可能性はあるし、パスポートの更新もしっかりやっときなさい。

私はこの犯罪者の強制送還が気になっている。島嶼国の法執行能力には限界があるのだ。現時点でも取り締まりは十分出来ていないのに、米国からさらに送られたらどうなるか?

実は、9.11以降の島嶼国で問題になった件なのだ。強制送還が急に増え、島嶼国社会が不安定になった時期がある。

この20年+の米国の対ミクロネシア支援を見て来たが、このような状況を作ったのは米国自身ではないだろうか?連戦終結後、ミクロネシア地域への関心を失った米国は一機に支援を引来上げた。特に教育と医療である。ここに輪をかけたように自由連合協定下の援助金の打ち切りの話と、課題の多い基金設置の話だ。

次のブログに書くが、だからミクロネシア諸国(及びその他の島嶼国)は麻薬、ギャンブル、マネロンという危ないビジネスに手を出すのである。