やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

速報 パラオ大統領選結果

 アメリカの大統領選と同日、太平洋の小さな島パラオでも大統領選があった。

 その正式結果が発表された。現職のトリビオン大統領を1,853票差で抑え、前大統領のトミー・レメンゲザウ氏が復帰することになった。

 なぜ、アメリカに比べ正式発表が遅れたのか。太平洋島嶼国の人口構成を学ぶよい機会であるから簡単に説明しよう。

 国土の狭い島嶼国の人口問題は深刻である。人口問題が全て、と言ってもいいくらい。キリスト教が入る前はここに書く事も悍ましい方法で人口調整がされていたが、現在は日本の人口構成と反対のピラミッド型。青年層が圧倒的に多い。このあふれる人口をどうするのか、が島嶼国の課題。

 米国の自由連合協定を締結するミクロネシアの場合グアム、マリアナ、ハワイ、そして米国本土へと流れて行く。ミクロネシア連邦では3人に一人が移民している。

 よって、海外在住者の投票の数が重要になってくる。不在者投票の開票が今週の火曜か、水曜日だったのだ。先週11月6日の選挙結果の非公式な数字を掲載しておく。この時の票差は1294票。その後レメンゲザウ氏が獲得した不在者投票数1457票。

11月6日の結果(非公式の数字)

レメンゲザウ氏 4,683票

ジョンソン氏(現職) 3,389票

 さて、レメンゲザウ氏の復帰は日本財団笹川平和財団が進めるミクロネシア海上保安事業に取って追い風になるであろう。

 2008年に開始した同事業。ミクロネシア3カ国の地域事業にすべく、3大統領の合意を得てきて欲しい、と羽生会長からの指示が最初にあった。そこで当方が相談したのがパラオのレメンゲザウ大統領(当時)であった。結果同年11月のミクロネシア大統領サミットでつつがなく承認されたのであるが、今だから言えるヒヤヒヤ話を暴露しよう。

 年1回開催されるミクロネシア大統領サミットは3カ国持ち回り。その年はミクロネシア連邦であった。主催国が議長になる。ミクロネシア連邦のモリ政権は誕生したばかり。今でこそ日本外務省は協力的だが、当時は「民間団体が余計な事をしやがって」と言っていた。ミクロネシア連邦政府閣僚の中にも反対意見があるとの情報を得ていたので、モリ議長で本件が取り上げられるかどうか確証が持てなかったのだ。今思い出しても胃がキリキリしてくる。

 ところがまさに神が味方したとしか思えない状況となった。この大統領サミットを最後に引退するパラオのレメンゲザウ大統領に議長を譲ろう、という合意が3カ国でされたのである。

 議長が議案を決める。もちろん笹川平和財団ミクロネシア海上保安事業は重要議案の一つとなり、全員の強い支持を得て可決された。

 今回のレメンゲザウ大統領の復帰は「神様の思し召し」「予定説」である事を願って止まない。

参考 日本財団ブログマガジン

ミクロネシアのコーストガード支援へ 3国の要請受け笹川平和財団、日本財団 [2008年11月26日(Wed)]