やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

英国外交使節再開設の意義・意味(2)

Cleo Pakal女史の諸手を上げて歓迎する論調と比べ、こちらの二人の女性博士の論調は若干慎重である。

Dr Tess Newton-Cain と Dr Anna Powlesの、英国外交使節再開設に関する記事である。

A Pivotal Moment? The UK Signals Re-engagement with the Pacific

22/4/2018

http://www.incline.org.nz/home/a-pivotal-moment-the-uk-signals-re-engagement-with-the-pacific

英国が太平洋に戻る理由を、英国政府は3つ上げている。地域の繁栄と安全保障、そして環境保護

ジョンソン外相は、英国が安全保障面を支援するのは、英国が "a champion of the rules-based international order." であるからだ、と。すなわち中国の進出を睨んでの政策である。

ここで筆者は、安全保障って誰がパートナーになるの?と自問自答している。

オーストラリアよね。でも英国は日本とのアジア太平洋の海洋安全保障協力関係があるわよ。仏領とは 2010 Lancaster House Treaties(英仏防衛協力) がある。

ここら辺は英vs豪NZの微妙な外交関係、感情を知らないと理解できないかもしれない。

豪NZは英国が太平洋に出てくる事に賛成のようだが、若干の警戒感もある。この記事で "megaphone diplomacy" はお断り、と書いているように英国のオーバープレゼンスを否定しているのだ。豪NZは英国の植民地であり、第一次世界大戦では英国にひどい目に会わされた記憶がある。これが ANZACにもつながる。しかも豪州は英国に恨みを持つアイルランド人が多い。

第一次世界大戦で、豪海軍が使い物にならないのを見てチャーチル日英同盟を活用し日本に赤道以北の太平洋を譲り渡した記憶も豪州NZに蘇るかもしれない。

SPCを脱会した英国に、また戻るわよね、とこの記事は書いている。そして太平洋には”The somewhat misty-eyed view of the impacts of British colonialism” 「英国植民の影響を懐かしむ様子」がある、とも書いている。これって豪州NZへの批判ではないか。。

英国の太平洋再進出、一番注意してフォローすべきは中国よりも豪州、ニュージーランドかもしれない、とこの記事を読んでいて考えてしまった。