やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

台湾の阿Q博士への回答(7)

阿保博士「阿Q博士は自分から聞いておいて帰ってしまった。失礼な人だ。。」
阿Q博士「悪口が聞こえたので戻ってきました。」
阿保博士「悪口はすぐ届くんですね。カーの自決権。もう一点お伝えしたい。まあ読んでいただければいいんですが。このブログ結構人気で続きを期待されている方もいるので図に乗っています。」
阿Q博士「確かに図に乗って。。おっといけない。口が滑ってツイ本心を。」
阿保博士「カーの『平和の条件』はPart I Some fundamental issuesとPart II Some Outlines of Policyから構成され、自決権に関してはChapter3 The Cricis of Self-Determinationがあります。この3章は下記に構成になっている。
自決主義と民族別
自決主義の限界
自決主義と軍事力
自決主義と経済力
自決主義の将来
前回は最初の3節をお話したのですが、実は「自決主義と経済力」が一番重要だと思います。これ今中国が小国にしかけていることじゃあないか、と。」
阿Q博士「へー、それは面白そうですね。」
 
阿保博士「軍事力と経済力を分けて考えちゃいけないって、1919年の経験で世界は理解していたはずなんですよ。
カーはケインズの「平和の経済的帰結」を引いて来て、1919年のピースメイカーが見落とした金融・経済が最重要問題で将来(つまり今ですね)の問題は政治領土的問題ではなく金融・経済であり、国境・主権ではなく食料・石炭(今は石油?)・輸送の中に潜んでいると指摘し、さらにピースメイカーの目の前にある飢餓と崩壊に悩む欧州の基本的経済問題に4大国が対応できなかったことが問題であると。」
阿Q博士「自決権とどのような関係が。。」
阿保博士「民族の自決権が経済上の機会を制限する要因になってしまっていると、また強国が新しい経済的武器を相互に、また小国に対し使用した事も指摘しています。民族自決を経済的相互依存の中で再解釈するのが緊急課題であると。。」
阿Q博士「「これって今中国がパラオに行っている事ではないでしょうか?経済的武器の使用。」
 
阿保博士「カッセーゼ博士の"Self-determination of peoples : a legal reappraisal"も一度ざっと飛ばし読みしただけなんですが、彼も自決権自体を否定はしていない立場で、それはカーと同じだと私は理解しています。しかしその自決権の在り方に誤解がある。最後にカーは自決権の将来を提案しています。」
阿Q博士「それはどのように。。」
阿Q博士「民族と国民は一致しなければならない、という19世紀的仮説を廃棄せよ、と。そしてより広い経済と軍事的枠のなかで始めて小さな民族の自決権、即ち自分たちの事は自分で決めたいとい要求は叶えられるだろう、と。2つ目に権利は義務の枠組みの中でのみ行使されるべきだと。しかし人間がこのように考えるには大きな革命が必要である、とも。」
 
阿Q博士「自決権の問題、奥が深いんですねえ。なんとなくわかってきました。」
阿保博士「1960年の国連決議1514第、植民地独立付与宣言をカーはどう受け止めたのでしょう。カーの主張と反対の動きだったと思うのですが。。」
阿Q博士「それではこれで本当に最後にさせていただきます。さようなら。」
阿保博士「まった!自由連合が残っている。阿Q博士の最初の質問をもらって、この人は自由連合がわかっていないとすぐ見抜きました。フフフ。」