やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

台湾の阿Q博士への回答(6)

阿保博士「お待たせしました。EHCarrの「平和の条件」読み直しました。やはり彼も自決権は屁のようだ、と。」
阿Q博士「え、別に待ってませんが。それにカーが自決権を屁だなんて本当に言ってるんですか?」
阿保博士「さすがに屁とは言ってませんが自決権の原則自体がもともと曖昧であることを1919年にピースメイカーだけでなく、それを批判した批評家ですら気づいていない、と書いてありました。」
阿Q博士「後で確認します。どの本を参照されましたか?」
阿保博士「信用しないなんてヒドイ!昭和29年発行、高橋甫訳、健民社の本です。81頁。ちなみに原文の英文も平行で読んでますが49頁。」
阿Q博士「他にはどんな事がかいてあったんですか?」
阿保博士「あれ?さっき関心ないような事言ってたじゃない。本当は関心があるんだ。素直になった方がいいですよ。後はですね、小国は自決権を得る事で独立権を得られなくなったという一見矛盾する議論です。でもこれわかります。カーはヨーロッパ協約を引いて来て,小国は欧州全体の問題に発言権がないから戦争も中立でいられた、とあります。よって1919年以降小国は強国と永久的連合をもとめることによってのみ存続する、と。」
阿Q博士「自由連合の背景ですかね。」
阿保博士「カーを読み直しながら、なんでこの本がもっと広く読まれないのだろうと不思議に思い、自分がこの本を知ったきっかけを思い出しました。百瀬宏著『小国』の中で紹介されていたのです。百瀬氏は多分小国支持の立場でカーの議論には批判的なように思えます。今はどう思っていらっしゃるのだろう?小国研究者ってそんなにいないんですよ。『小国』の中に安保理事会の5大国一致の原則について書かれてました。これがかろうじてカーが主張した国際秩序を維持しているのかもしれない。斉藤鎮男著『国際連合序説』に詳細があるようです。これは読んでみたい。」
阿Q博士「阿保博士本当にありがとうございました。大変勉強になりました。」
阿保博士「え、まだカーの自決権の話し終わってないんですけど。アントニオ・カッセーゼ博士の自決権の議論もお話したいし。。」
阿Q博士「もう十分でございます。貴重なお時間を取らせて申し訳ありませんでした。さようなら。」