やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

笹川良一とトンガ王国

トンガサットと中国の債務の罠を書いたら笹川良一氏とトンガの関係を聞かれた。

私の知る範囲で書いておこう。

1988年の太平洋島嶼国会議の翌年30億円の基金が設置され、私が担当したのは1991年から。最初の担当者だった斎田さんという方が既に夜逃げのようにいなくなっていて、書類が机の上にあるだけであった。

 

私が「なぜこの基金を作ったのですか?」

と聞いたところ基金運営に関与した運輸省天下りの入山さん(故人)から

「そんなのお前が考えるんだよ。目的からすべて考えてくれ。自由奔放にやってくれたまえ」と言われたのである。

当時ご存命だった笹川良一氏はトンガ名誉領事であった。この名誉領事の役割を巡って当時の振興会、今の日本財団の国際部の船越さんという方と財団の方は宮本という男が責任のなすり合いのような事をしていた。

太平洋島嶼国案件なのだから島嶼国基金がやれ。

いや島嶼国基金はトンガだけのためでなく島嶼国全体を対象としているから振興会で。

可哀想なのはトンガ皇太子ツポウ5世である。トンガ外務省から明日皇太子が到着するのでお出迎えを、とのファックスが来ていたのだ。

結局私が迎えに行く事に。しかしこれでトンガ皇太子から直接太平洋島嶼国の事をレクチャーして貰える機会ができたのは幸運であった。ツポウ5世はIT Geek( ITオタク)と噂される程通信に関心があったのだ。

財団の方は、誰もなぜ笹川良一氏がトンガと関わるようになったのか教えてくれない。トンガ研究の日本学者の間では黒い噂が流れていて名誉領事だった笹川良一氏をかついだ「トンガ友好協会」(正式名は忘れた)のようなものがあり、子ども大使事業などを行って不正を働いている、と聞かされていた。

もしかし本当かもしれない、と思った瞬間があった。

振興会の船越さんからこの協会関係者との食事会に参加するように言われて参加したところ、「早川さんは純粋すぎる」と言われたのだ。つまり純粋ではないこと、不純な事をやろうとしていたの?

その後一切声はかからなかった。

 

トンガサットの事を調べていたらCIAのレポートをたまたま見つけた。ソ連の手が伸びるトンガを笹川良一氏は守ろうとしていた?? 飛行機を支援しようとした話も、どこかで読んだ。

https://www.cia.gov/library/readingroom/docs/SASAKWA,%20RYOICHI_0002.pdf

 

ツポウ5世は日本びいきでよく来日されていた。その度に私が送迎役を。

一度陽平氏と面談する事があって、笹川陽平が

「貧しい貴国のために支援したい」

と言ってしまい通訳がそのまま訳したのである。

皇太子は出発まで10時間以上あったのだが、飛行機の時間があるから、と言って席を立たれた。笹川陽平は自身が失礼な事を言った認識はない。

私がその言葉にショックを受けた事を皇太子はわかったのだと思う。

「Mr Sasakawa は海外で暮らしたことはないでしょう。」

と私に言われたを覚えている。外交を知らないでしょう、と言う意味だ。

 

2005年頃だったと思うがニュージーランドのオークランドで偶然お会いし

「リエコ、こんなところで何をしている。今晩スシを食べに行こう」

と誘われ、その夜はご親戚か友人の結婚式に参加されていた後でかなり酔っていらしたのだが

色々お話を聞くことができた。

当時まだツポウ4世国王がご健在で、日本の大使には日本留学経験者のマサソ氏をという動きがトンガ外務省の中である事を、日本政府から伺った。 ツポウ5世はその人事に反対していた、とこれはトンガの友人から聞いた。

2006年には国王が亡くなり、ツポウ5世の時代になった。

しかしトンガは同年暴動が起り、中国との関係はいよいよ強まって行った。その背景には、色々と評判が悪かった王室への対策としてニュージーランド政府が裏で糸を引く民主化の動きが高まっていた事もある。

パプアニューギニアもそうなのだが、笹川良一は何を理解し、何をしようとしていたのか?

 

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