やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

トンガ国王、議会の解散命じる 11月までに選挙 ポヒバ首相解任

 

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「トンガ国王、議会の解散命じる 11月までに選挙 ポヒバ首相解任」

2017年08月26日

http://www.afpbb.com/articles/-/3140555?pid=0

 

日本語でも記事になっているが、先週後半はこのニュースでトンガに釘付けになった。

トンガの友人は「トンガの歴史上、最悪の日」と。

 

実は今年4月に行わせていただいた島嶼議連での講演会のために、あまりフォローしていなかったトンガ王国の事を調べ始めたら、首相自ら中国に乗っ取られるとか、中国の殺屋が入っているとか、公の席で述べている事を知って驚愕した。普通、本当でも言わない。

 

今回のトンガ王国の政変は私にとって下記の3点から、あまりにも身近な話である。

 

1.私の30年近い友人が、トンガ国営放送協会の幹部なのだが、首相を批判したという理由で他の幹部と共に更迭されたのだ。これに対する首相への内外からの批判、特にジャーナリスト達からの批判は大きい。別件だが首相自身が違法な開発をトンガの神聖な土地で行っている事が話題になった。

 

2.現副首相も知り合いである。SOPACで長らくIT担当をしていて、ファーストネームで呼び合っていた仲である。今彼は解任された首相の側近として適切なアドバイスができなかった事を糾弾されている様子だ。こちらも気の毒だ。

 

3.上記のAFPの記事には先代の父親とあるが、先代のツポウ5世は兄である。

私は笹川良一氏がトンガ名誉総領事を務めていた関係と日本の皇太子殿下の記念事業としてトンガを訪問した事もあって、ツポウ5世と若干の交流があった。ツポウ5世は大の日本びいきで寛仁親王とはオックスフォードの同級生。日本の皇室ようになりたいと、トンガの民主化を進めようとしていたのである。これは直接ご本人から伺った。

 

 

フレンドリーアイランド、と言われたトンガの様子が変わったのは、2006年の暴動が大きいであろう。民主化の動きは以前よりあったが、まるでフランス革命のようにラディカルな動きに変わったのだ。背景にはニュージーランドの介入があったとチャタムハウスの方から伺った。

 

2006年前に何があったのか?

一つは米国の9.11。米国だけでなく豪州NZの取締も厳しくなり、多くのトンガ人が強制送還された。この影響が社会的に大きいと教育関係者から聞いた記憶がある。多分タックスヘイブンなども規制が強化された煽りを受けたかもしれない。

もう一つは世界的な自由化民営化の中でトンガの社会、経済構造が大きく変わろうとした時期で、ツポウ5世はそれに必死に対応していた、ように私には見えたのだ。

 

確かに、ニュージーランドのメディアがよく批判しようにツポウ5世の行動に問題があったようだし、彼を良く知るトンガの友人達も、皇太子は変わった、と述べていた。しかし国王になられてからは次々とトンガ国内の福祉改革につとめられ、国民の支持を得ていた。2006年から2012年の短い在位であった。

 

私の博論の内容になるが、太平洋島嶼国でいち早く情報通信制度改革を進めたのもツポウ5世である。主権ビジネスと言われるドメイン名、パスポート販売、衛星ビジネスを支えたのもツポウ5世であろう。漁業や通信産業を一手に仕切る皇太子は、王室の企業独占化、とこれも非難の対象になっていた。防衛大臣、外務大臣も兼務していた。

 

中国との関係強化に大きく動いたのもツポウ5世の判断であった。

首都にあるインターナショナルデーとラインホテル、日付変更線ホテルは、コロニアル調とトンガの文化が混じった魅力的なホテルだったが、ある時全くつまらない、しかも中国語だらけの建物に変わっていた。私は失礼に気づかずツポウ5世に「随分変わってしまいましたね」と言ってしまった。その時のお返事が今でも忘れられない。

「この予算でこの期日で改修できるのは中国しかいなかった。」

90年代、バブルがはじけた日本もトンガへの支援が徐々に削減された時期、かもしれない。

 

 

次々と出て来るニュースに耳を傾けているが、問題は民主化の話ではなく、小国運営の限界ではないか、と当方は考えている。

国家の規模とインフラや安全保障の規模は比例しない。日本トンガ協定を締結し積極的にインフラ支援をしてはどうであろうか?アジ銀や世銀ががんばっているものの、競争入札なので中国企業が受注する可能性が高い。

 

 

<関連ニュース>

Tonga parliament dissolved, fresh elections called

http://www.radionz.co.nz/international/programmes/datelinepacific/audio/201856183/tonga-parliament-dissolved-fresh-elections-called

 

King Tupou VI proclaims current govt as Caretaker Government

Saturday, August 26, 2017

http://matangitonga.to/2017/08/26/king-tupou-vi-proclaims-pohiva-govt-caretaker-government

 

 

Fears of violence in Tonga after King Tupou VI dismisses PM Akilisi Pohiva and dissolves Parliament

https://www.tvnz.co.nz/one-news/world/fears-violence-in-tonga-after-king-tupou-vi-dismisses-pm-akilisi-pohiva-and-dissolves-parliament

 

King of Tonga dismisses Prime Minister, as Kiwi SAS troops in country

25 Aug, 2017

http://www.nzherald.co.nz/world/news/article.cfm?c_id=2&objectid=11911355

 

King officially dissolves Parliament, new election in November, Crown law website says

By Kalino Latu - 25/08/20171

http://kanivatonga.nz/2017/08/king-officially-dissolves-parliament-new-election-in-november-crown-law-website-says/

 

King Tupou VI dissolves parliament, commands new election

Friday, August 25

http://matangitonga.to/2017/08/25/king-tupou-vi-dissolves-parliament-commands-new-election

 

トンガ憲法から

King’s relations with Parliament

38. The King may convoke the Legislative Assembly at any time and may dissolve it at his pleasure and command that new representatives of the nobles and people be elected to enter the Assembly. But it shall not be lawful for the Kingdom to remain without a meeting of the Assembly for a longer period than one year. The Assembly shall always meet at Nuku'alofa and at no other place except in time of war. (Law No. I of 1914.)

 

77 General elections

New elections shall be held for all the representatives of the nobles and the people at least once every three years but it shall be lawful for the King at his pleasure to dissolve the Legislative Assembly although three years from the last election may not have expired and to command that new elections be held according to law throughout the Kingdom. (Law 1 of 1914.)