コロナを巡りニュージーランド、オーストラアが厳しい規制を次々と決めて行く様子をみて、その法的根拠はなんであろう?と興味をもち、矢部論文を飛ばし読みで参照した。
国王大権とかヘンリー8世条項とかこの分野完璧素人だが面白い議論であると感じた。
先日産経の論説で、憲法に緊急事態条項を、と主張しており、私は反対と書いたところ、同社の論説副委員長の榊原氏からその理由を聞かれた。矢部論文を読んで、過去に何度か議論されており、その経緯を把握、認識しない事には、今回のコロナの件で持ち上がっただけで、一過性に終わる、と生意気な事を書いてしまった。
なんとなくモヤモヤしてTW で呟いていたら過去の議論のデータをおしえてくださる方いた。難しい議論だからトーシロの私がわかるわけないが、ここにリンクしておいて何度か読む中でまた議論に参加できるかもしれない。
専門家が憲法を議論するが国家運営は専門家がするわけはない。という榊原氏のコメントはその通りだと思う。その国家運営をする方が専門家の議論、分析、意見をどれほど理解し咀嚼し、現実の国家運営に活かせるか。トーシロの国民も諦めないで学ぼう。
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昭和39年 憲法調査会報告書(憲法調査会)
770頁から 第十二節 非常事態 (日本国憲法の前文及び各章の重要問題)
<追記メモ>
非常事態と緊急事態の区別についてー>色々意見があるが非常事態が緊急事態を包含する一層広いものという理解
憲法に非常事態条項をという賛成派は、例えば基本的人権、国民の権利・自由に対する制限に「公共の福祉」を拡大解釈する可能性もあるが、その乱用の危険性を防止するためにも、さらに違憲・独裁的との批判を避けるためにも憲法に規定すべき
賛成派の意見 5名の明文化賛成の意見は「公共の福祉」の解釈による乱用の恐れ、事後に最高裁に判断を委ねることに対する違憲判決を避けることによる権威の喪失
不文を支持する意見
ー政府に自由裁量権を与え権力が乱用される恐れ
ー不文の原理に求める意見
ー必要の原則に求める意見
ー現行憲法も基本的人権が「公共の福祉」に制約されることを認めている
ー改憲は国民の間に対立混乱を招く
ー完全法典対する疑問、憲法秩序外での対応の意義(高柳賢三)
明文化賛成派の規定内容
ー 憲法には必要最小限にし法律に委ねる
ー 権限乱用を避けるために詳細な記述が必要 <ー 多数意見
1非常事態の事項的限定
2地域的限定
3人権制限の明示
4非常時体制の確立
5有効期間の限定
6国会尊重の明記
<総括で関心を持った点>
非常事態が憲法で重要であることは委員会は一致しているが明文か不文かの対立。 不文の場合憲法上の根拠がなく現実政治で対応不可能 成文憲法の解釈上の対立がある。 不文の原理で認められる措置を違憲、違法と見るべきではない。
今回、政府が政令に基づく措置以前に行った行為(ちょっと忘れました)はまさに不文の原則によるものではないか?それを違憲、違法である、という声は出ているのであろうか? 高柳賢三さんの論文が出ているという。この方は東京裁判で重光の弁護人だ。一高卒なので多分新渡戸の生徒だ。
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衆憲資第87号 「緊急事態」に関する資料(平成25年5月衆議院憲法審査会事務局)
矢部 明宏 英連邦諸国(イギリス、ニュージーランド、カナダ)の緊急事態法制 : 大災害時の緊急権行使と緊急事態管理の仕組み 2012-03 外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説 / 国立国会図書館調査及び立法考査局 編
矢部明宏ほか『憲法上の国家緊急権』
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_999552_po_20030104.pdf?contentNo=4
【自民党大会】「改憲4項目」条文素案全文より’
【緊急事態条項】
第73条の2
(第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)
第64条の2
大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
(※国会の章の末尾に特例規定として追加)