やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(自分用読書メモ)その10

国際海洋法の現代的形成』の第3部海洋生物多様性と海洋保護区

第9章 国家管轄権の限界を超える海域における生物多様性保全の拡大 p. 305-335

ゴールデンウィークに読み返した(とても読み込んだとは言えない)田中則夫先生の『国際海洋法の現代的形成』の最後の章。2012年の論文なので田中先生が亡くなられる2年前だ。BBNJの議論の一番重要な論文なのかもしれない。

BBNJの議論がCBDのUCLOSへの侵入である、という意見を参考にこの章を読むと興味深い。

p. 306 まだ未知の部分を多く残しており、一層の調査・研究が必要 ー 深海底の生物多様性

p. 307 「本来、海洋の生物多様性は、法律上区分された海域ごとに異なった特性をもって存在するわけではない。それゆえ、なぜ、国家管轄権の限界を超える海域における生物多様性なのか。こういう素朴な疑問も生じるのであるが…」

p. 308 CBDの全文が紹介されているが、p. 309 「地球環境の保護に対する国際社会全体の課題意識が高揚する中で、生物多様性保全という課題に史上初めて正面から向き合う形で採択された条約である。」

p. 309-310 海洋法の中に生物多様性や遺伝資源という言葉はないが関連する条項をあげている。

p. 314 2004年のCBD締約国会議第7回会合でMPA国家管轄権外の話が出てくる。ここら辺から「CBDのUCLOSへの侵入」が始まるにであろうか?

p. 316 BBNJの議論はUNCLOSを含む国際法に従い、科学的な情報に基づく必要があると、2004〜2007年のUNICPOLOSで繰り返し指摘されている。「CBDのUCLOSへの侵入」の押し返し、ということか?

p. 319 2004年の国連総会では BBNJのアドホックワーキンググループの設置が決定されてしまう。

p. 320-321 海洋の生物多様性に関する科学的で正確な知見が不可欠であるにもかかわらず、それがないことが、議論の進行を難しくしている。ただし保全策が必要だというのが国際社会の共通認識になっている。

p. 328 あどほっくWGの大多数がMPAを含む海域ごと管理方法の重要性を承認している。(大多数って誰?)同時にMPAの設定する科学的基準が重要であるとの指摘も。

p. 331 ISAは深海底の海洋遺伝資源に権限を持つかどうかの議論。

p. 332 国際社会の利益の間の均衡を取るべき。(これは言いがかりではないか。)

p. 333 ISAの事務総長が2011年に出した報告書ではISAが海洋の生物多様性保全の責任を述べている。それはUNCLOS143、145,209条

p. 334 世界の海が国家管轄圏外と内に別れていることを考慮に入れる必要がある。

UNCLOS が生まれた背景に開発イデオロギー、資源イデオロギーがある一方でCBDの誕生の背景がまだ調べていない。国際法の中で環境保護は人間のため。環境のため、というのはマイナーでCBDがこれだった記憶があるが、要確認。

「国際環境法の基本原則」松井芳朗著、東信堂、2010(自分用のメモ) http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/2314